武術と魔法に全てを捧げる

谷村 驟

プロローグ 表 とある男の独白


僕には熱中出来る物事がなかった。



周りの人達は皆、何かしら熱中出来る物事を見つけているのに、自分だけは見つけられなかった。

そのせいなのか、いつの間にか僕の心の中には『自分にも何かしら熱中出来る物事が欲しい』という願望が生まれていた。


最初の頃は「気長に過ごしていれば、いつか勝手に見つかるだろう」なんて吞気に考えていたが、いつまでたっても見つからなかった。

その結果、僕は焦り、死に物狂いで自分の熱中出来る物事を模索し始めた。

読書に始まり、ゲーム、料理、筋トレ、スポーツ、キャンプ、旅行、作画等々.....

数え切れない程の沢山の物事を試した。


だが、どれだけ模索してもこれといったものは見つからなかった。

それでも僕はめげずに模索し続けた。

春から夏へ、夏から秋へ、秋から冬へ、冬から春へ.....そうして季節は巡り、時は流れていった。

『願望』は次第に『義務』へと変わっていき、呪縛となって僕を苦しめた。

そうして僕は、何年も、何年も明かりの見えない暗闇の中を模索し続けた。





そうしている間に、僕の人生は幕を閉じた。

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