国王視点
急ぎ足で謁見の間を後にする息子の背に向かって国王である私は口を開く。
「こんな風にしか力になれなくてすまない」
やり場のない気持ちをどう政務で昇華させようかと考えに耽っていると横に控えていた宰相がおもむろに口を開いた。
「殿下にあれ程までに気にかけてもらえる娘は幸せ者です。本来であれば切り捨てられていても不思議ではないのですから」
「しかし息子は未だ何の手がかりも掴めていない。エイブリー嬢の心ひとつで全てが変わってしまう祝福というのも実に厄介だな」
「本来なら親である私や妻があの子の対応に当たるべきですのに。私達ですらあの子に一切の手出しが出来ない状態です。ですが殿下が傍に行っても祝福が影響を及ぼさないのは、何か意味するものがあるのでしょうか?」
「それは分からない、現在管理局の方でも調査を開始しているから結果を待つしかないだろうな。祝福は人々の生活を豊かにしてくれているが、未だ謎に包まれている部分も多い。アルテナ様は私達に何を伝えたいのだろうか」
事実祝福はこの世界が創造されてから幾度となく人々の力となってきた。
アルテナ様が送って下さった祝福は決して使い方を間違えてはいけない。
私はそっと目を瞑り、アルテナ様へと祈りを捧げる。
(──どうか息子とその婚約者をお救い下さい)
直接手を貸す事の出来ないこの立場がもどかしい。
だからこそ息子の力となってくれそうな者を、あの子の元へと向かわせた。
どうかいい方向へと向かうようにと願いながら。
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