第373話 島国


 「こちらが写真になります」


 「ほうほう」


 海軍連中はバレないように島国の上空から、様子を撮影して来てくれたらしい。


 見覚えのある建築様式が並んだますねぇ。


 「これはアレですよね? レト様が落ち着いたらこんな街を作りたいと言っていた…」


 「和風の街な」


 天守閣のお城があって城下町があって。みんな着物みたいなのを着て、腰には刀を差してる。まさかこんなガチガチの和風の国があったとはな。


 「黒船ごっこ。むしろこっちにやりてぇ」


 「? 練習する為に大陸を探してたはずですが? こっちを本命にするのですか?」


 「その方が『っぽい』んだよな」


 日本の歴史を知ってる身からすると、こっちでペリーごっこする方が楽しそう。歴史の擬似体験が出来るかもしれん。


 「レト様がこちらの方が良いと言うなら調整しますが…」


 「いや、良いよ。こっちは練習で。あくまで本命は人間大陸のほうだ」


 まあ、和風の島国が見つかったとはいえ、やる事は変わらん。人間大陸を攻める前に、こっちでリハーサルだ。


 「それにしても…不思議な髪型をしてますね…。これは頭頂部を剃ってるのでしょうか?」


 「月代ってやつだな。理由は知らん。兜を被った時に蒸れるからとかだったような気はするけど」


 「はぁ…。魔道具に付与すればどうとでもなりそうな問題ですが…」


 確かに。こっちの世界には魔法があるんだし、どうとでもなりそうな問題だな。この国には魔法は浸透してないんだろうか?


 いや、魔物は普通に居るだろうし、そんな事もないか。そういうのがあっても、甘ったれるなとか言って、根性論で排除されてそう。


 俺の個人的な偏見だけど、戦国時代とか江戸時代って根性論が煮詰まりまくった時代だと思ってるからね。


 なんでもかんでも根性でなんとか出来ると思ってそう。


 「うん? これは…」


 「竜人族ですね。こちらの大陸には結構居るみたいです」


 グレースが持ってた沢山の写真をペラペラと見てると、人族ではない種族が。結構偉そうな服を着てるけど、上の方の立場なのかな?


 俺は人間大陸で苦労して見つけたのに、こっちにはこんなに沢山いるのかよ。


 「あん? これは見た事がない種族だ」


 「アシュラをマイルドにした感じですね」


 同じく結構偉そうな服を着ている見た事ない種族が。アシュラほどではないけど、筋骨隆々で頭には角がある。


 「鬼族とか鬼人族とかか? 存在したんだな」


 人間大陸ではついぞ見つけられなかった種族で、この世界には居ないと思ってた。居ても魔物扱いかなと。悪く言えばオーガに似てるしね。


 でもこの島国では結構上の立場にいるっぽい。服でしか判断してないけど。


 「人族、竜人族、鬼人族。写真で分かるのはこの三つか」


 後は強さがどんなもんかだな。流石に俺の国より戦力が上って事はないと思いたい。


 でもなんか弱い所も見たくないというか…。なんだろうね、この気持ちは。


 前世にあんまり良い思い出はないけど、それでも日本っぽい国だし、愛国心的なサムシングがあるのかも。


 「戦力はすぐに把握出来ると思いますよ。どこかしらで戦争というか、小競り合いが頻発して起こってるみたいなので」


 「ふむん?」


 争ってる真っ最中なのか? 俺は勝手に一つの国として考えてたけど、もしかしたら天下統一的なのはまだ為されてない系か?


 ちょっと情報がまだ足りてませんねぇ。


 「空を飛べる『RSG』が監視を続けてるので、また何かあればお伝えします」


 「おけおけ。なら俺はお楽しみの前にラストスパートを頑張るかね」


 さっさと進化してこの島国に遊びに行ってみよう。開国してくださーいつって。鎖国してるのかは知らんけど。

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