第372話 新しい発見


 人型ロボットのパイロット。キンブル以上の逸材って誰だろうなと思ったら、妲己だった。


 最近はプレイルームでしか人型の姿を見せてない妲己だったけど、珍しく大衆の面前で変化して人型になってらっしゃる。


 珍しい妲己の人型姿に観客達はロボットそっちのけで大盛り上がりだ。


 「妲己がこういうのに興味あるのは意外だな」


 「仕事が欲しかったみたいですよ。最近眷属全員が何かしらの仕事をしてますからね」


 「ふうん?」


 「ローレライも働いてるんですよ。後で褒めてあげてください」


 「それはそれは」


 確かに最近の眷属はみんな忙しそうにしてるなぁって印象はある。でもまさかローレライも働いてるとは。


 いや、まぁ見た目が子供でも実年齢は既に100歳を超えてるからな。いつまでも子供っぽい性格だから、勘違いしちゃうけど、あの子も立派な大人になってないとおかしいのである。


 「妲己は色んなところに顔を出してるものの、どこでも尊敬が先に来て仕事を頼むのは畏れ多いと思われてるみたいですね。それで気兼ねなく頼める眷属達に何か仕事がないかと声を掛けたそうです」


 「立派になっちゃって…」


 小さい頃は一緒に人の生首でサッカーをして遊んだりしてたってのに。成長は早いなぁ。


 それに比べて俺は…。


 「なんか焦ってきた」


 「レト様の今の最優先事項は進化する事でしょう。それが仕事ですよ」


 「まあ、そうなんだけど」


 みんなが頑張って働いてたら、俺だけ半年間の休暇中に国でダラダラ働いてたら、なんか罪悪感ってのが………特に沸いてこないな。


 俺が面白おかしく過ごす為に作った国だし。まあ、環境ぐらいは良くしてやろうとは思うが、後は俺の為に頑張ってくれよーとしか。


 俺なんてそんなもんである。


 「おっ。動いた」


 『妲己様の見事な操縦! 巨人族の数倍は大きい巨体が競技場を縦横無尽に動き回ってるぞー!』


 グレースと話し合ってると、人型ロボットが動き始めた。動きは人と大して変わらない。


 人と変わらない動きが出来るってのは凄い事だろう。まあ、戦えば秒でスクラップに出来るだろうが、何も戦うだけが全てじゃない。


 工事とかで役に立つんじゃなかろうか。それにこの国では戦闘力が低めでも、人間大陸に持ち込めば、それはもう凄い猛威を奮うだろう。


 「でもああいうロボットが動いてるってのはロマンだよなぁ。前世では夢のまた夢だったはずだし」


 いや、やろうと思えば出来るんだっけ? ただコストがえげつない程掛かるとか言ってたような…。ちょっと覚えてないね。


 「妲己以外に操縦出来るんでしょうか? 出来るなら色々な場面で役に立ちますが…」


 「どうだろうな。その辺は今後の課題なんじゃね? シンクロ率がどうこう言ってたし」


 大体なんだよ、シンクロ率って。あのロボットに意思でもあって、パイロットを選り好みしてるのか? 


 ファンタジーな世界ならあり得ないとも言えないのがなぁ。俺のブラッド・チェーンだって、インテリジェンスなんちゃらだし。


 武器が意思を持って動くなら、ロボットに意思があってもおかしくない。


 「あ、そういえば全然関係のない話しなのですが」


 「ん?」


 妲己操縦のロボットが曲芸をしてるのを、なんだかんだ楽しんで見てると、グレースが何かを思い出したかのように言う。


 「人間大陸に船で威圧する前にどこかでリハーサルしたいと仰ってましたよね?」


 「ああ。そんな事言ったな」


 黒船ごっこをしたいけど、格好良く登場したいから失敗したくない。人間大陸には魔大陸に魔王がたくさんいる事は、既に竜王経由で知られてるし、失敗でもしようものならいい笑い物だ。


 だからどこかでリハーサル侵略でもしたいなって思ってたんだ。出来れば俺達の事を知らない奴等がいる場所で。


 それで海軍と『RSG』に別の大陸とかないか探してくれーいとお願いしてた。まあ、過去の本とかにも、人間大陸と魔大陸以外の大陸の情報なんて一切なかったし、期待はしてなかった。


 だけど、グレースがここでそんな話をするって事は…。


 「別の大陸を発見しました。大陸と言うより、島国のような感じではありますが…」


 「ほう」


 これはちょっと楽しくなりそうな予感だぞ。

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