第370話 名前
「まさか天狗様ですか!?」
二ヶ月後。俺は蟲領域での経験値集めを終えて国に戻ってきた。
この二ヶ月、かなり大変だった。俺が魔物を倒して回る間は影の中に居てもらおうと思ってたんだけど、生まれたてで幼いからか、何に対しても好奇心旺盛。勝手に影から出て来てはフラフラとどこかに行こうとする。
能力で【音魔法】は覚えてるものの、この子はまだまだ弱いんだよ。多少声が大きくなる程度しかまだ使えない。そんなのが一応危険地域である蟲領域でフラフラしてたらすぐに殺される。
本当に目が離せなくて苦労した。もう賭けに負けても良いから帰ろうか迷ったくらいだ。
で、二ヶ月間ほとんど狩りが出来ず、なんとか戻って来たって訳。
妲己の時はそんなに苦労した覚えがなかったんだけどなぁ。あれはあの子がちゃんと言う事を聞いてくれたからなのか。俺の育て方が良いと勘違いしてたぜ。
それに妲己と初めて会った場所は弱い魔物地帯だったからなぁ。妲己にも経験値稼ぎをさせてあげられて、すぐに進化出来たのも大きいかもしれん。
この子、俺が見つけなきゃすぐにあの場所で淘汰されてただろうな。
「天狗を知ってるの?」
「勿論です! 私達ハーピーの中では信仰対象になるくらいには!」
「ふーん?」
国に帰って来て、とりあえず手が空いてる眷属達を会議室に集めた。幼天狗をお披露目しようと思ってたから。
ローレライやパトリックは新しい友達かとワクワクしてる。この子達はいつまで経っても子供っぽいね。それが可愛いんだけど。
でも一番反応を見せたのは、キンブルについて来ていたハーレムメンバーの一人である、ハーピーエンプレス。割と初期からハーレム入りしている奴で、実力もそこそこある。
因みに性格はメスガキだ。エンプレスというハーピーの最上位であろう種族になって、少しは落ち着いたけど、それはもう絵に描いたようなメスガキだ。
そいつが幼天狗を見た途端、背筋をピンとして畏まってるんだ。信仰対象ってのは本当なんだろう。
「なんだ、お前は凄いやつだったのか」
「ぴぃ?」
結構な人数に囲まれて見られてるのに気にした様子もなく、用意された水を美味しそうに飲んでる。こうして見ると大物なのかって思えてくるな。
「で、この子の名前なんだけど」
「レト様! しっかりした名前にして下さいよ!」
鼻息荒いハーピーが俺に念を押してくる。やはり俺のネーミングセンスはよろしくないと思われてるんだろう。
反論したいところだけど、直近で付けた名前はロマンだからね。カブトムシとクワガタが合体した男のロマンの塊みたいなやつだったから。
流石に安直すぎたかなと反省はしてる。でもロマンはその名前を気に入ってるみたいだし。なんだかんだいい名前だと思うんだよね。
まあ、この二ヶ月で名前の候補はしっかり考えてある。お世話をしてただけじゃないのだ。
「お前の名前はクラマだ」
「ぴぃ!」
可愛くて渋い名前。色々考えました。お花の名前にしようかな、宝石の名前にしようかなとか。
うんうんと考えて最終的にクラマに。
そう言えば前世に鞍馬天狗とかいたようなって思って。それにほら、クラマってなんか良い感じでしょ?
結局安直な名前だなって? それはそう。やっぱり俺にネーミングセンスはありませんよ。
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