第368話 自然発生
「ぐさぐさーっと」
森を適当にぶらつきながら、目に入った蟲を影で刺していく。もう何年も通ってるから、流石に新規の魔物は見掛けなくなってきた。初見の魔物を発見したらテンションが上がるんだけど、最近はそれがなくて面白くない。
お陰でかなり暇である。たまーに森の中で蟲じゃない魔物を見かけた時のテンションの上がりようと言ったらもうね。ゴブリンですら嬉しいから。なんかレアを引けた気がして。ソシャゲのガチャをやってる気分ってこういう感じなのかな。知らんけど。
この森は蟲が支配してるから、魔力溜まりから魔物が自然発生してもすぐに淘汰されてしまう。まあ、俺が見つけてもすぐに殺すから結局一緒なんだけどね。
「あ、くそ。避けられた」
地面から影を伸ばして突き刺そうときたら、とある蟲の魔物に避けられた。こいつ、あんまり見かけないけど厄介なんだよな。
そのくせ経験値は美味しくない。でもウェインが言うには素材が優秀だから、なるべく持って帰ってやりたい。
って事で見かけたら狩るようにはしてるんだけど。
「ぶんぶん飛び回ってからに」
結局影を囮にして血を飛ばして仕留める。
見た目はトンボ。確か地球では目が良いとかなんとか聞いた事はあるけど、俺の影を避けるぐらいの実力ある。
まあ、大気を揺らせば飛べなくなるし、影に頼らなくても仕留められるんだけど、なんかムキになっちゃって。こいつを見かけたらとりあえず影で仕留める努力はしてる。
「それにしても暇だなぁ」
経験値の器は8割ぐらい溜まってる。15年くらい掛けてようやくここまできた。もう少ししたら妲己かアシュラに付き添いも頼む予定。進化が始まったら無防備になるし。
15年。飽き性の俺がよくここまで頑張れたもんだ。グレースとの賭けがなかったら、絶対途中で挫折してたね。
もう正直罰を受けても良いとは思ってるんだけど、負けた時にグレースにドヤ顔されるのは腹立つから、なんとか意地で続けてるって感じだ。
「むっ!」
適度に魔物を誘き寄せる為に魔力を垂れ流して森を歩いてると、黒い渦の様なものが見えた。
これは珍しい。魔力溜まりから魔物が生まれる瞬間だ。俺もこの異世界で結構長く生きてるけど、まだ数えるぐらいしか見てない。
ウェインが一時期、擬似的に再現出来ないかって試してた時はあったけど。その後の進捗は知らない。途中で飽きたかもしれん。
とにかく結構貴重なのだ。
俺は影からビデオカメラを取り出す。せっかくの貴重なシーンだし、映像に収めておきたい。ウェイン君は良い発明をしてくれましたね、ほんとに。
俺はワクワクしながらビデオカメラを構えて、魔物誕生の瞬間を待つ。
そして5分ほど待機してると、黒い渦が収まってきて、そこから出てきたのは。
「白いハーピー? しかも一匹だけ? どういうこった?」
普通、自然発生する魔物ってのは、黒い渦から同系統の魔物がわんさか出てくるんだ。偶にしか発見出来ない事象なのに、一匹だけしか出てこなかったら、魔物なんてこの世から居なくなってるだろう。
まあ、自分で召喚したり、生み出したりする奴もいるから、絶滅まではいかないかもしれんが。
「ぴぃ?」
それが一匹だけ。しかも白い。アルビノってやつか? ローレライと一緒だな。
大きさは普通のハーピーと同じく成人女性と同じくらいだけど、なんか特別な種なんだろうか?
あ、解析すれば良いか。
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