第367話 テコ入れ
「おおう…。これは思ったよりひどいな」
「とりあえず商会に案内しますじゃ」
衛生問題を対策するにも、とりあえず現地を見ないとどれだけ酷いのか分からんって事で、ミネリと久々に人間大陸にやって来た。
転移してすぐにツンと鼻を突き刺すような臭い。これでもまだ清潔な部類に入る街らしい。ノックス魔帝国に侵食されてない国はもっと酷いのだとか。
まあ、俺達がこっちで暴れまくって、まだ十数年しか経ってないんだ。現代ならそこそこ復興出来るかもだけど、異世界なら復興が進まなくても仕方ない。『ヴァンピー商会』で支援という名の侵食をしてるから、まだこの程度で済んでるっぽい。
「これは大反省だな…。こんな劣悪な環境で働かせてたとは。そりゃ不満も出るさ」
むしろ十何年もこんな環境で働いてて、ちょっと不満が出るくらいだったのが驚きだ。俺ならボイコットしてるぜ。
「公衆浴場とトイレ、後はゴミ箱の設置。で、こっちの住民の意識改革もしなきゃな」
意図的にこっちの文明レベルを進ませないようにしてたけど、流石にこれは酷い。もう少し大幅にテコ入れしていこうか。
でもなぁ…。手を入れ過ぎると壊すのが勿体なくなってくるんだよ。壊すのが勿体なくなって、結果的にこっちで遊べなくなるのは嫌だ。
「どうしたもんかね」
そんな事を思って三年。
一部の人間大陸の国々は様変わりした。
あれから『ヴァンピー商会』が支援してる国に、公衆浴場、トイレを設置。
人間大陸でも娼館の経営を始めた。徹底的に衛生指導を行なって、今では高級娼館として各地で物凄い売り上げを上げている。
まあ、利用者の三分の一くらいは『RSG』の連中だが。金の使い道がようやく見つかったとばかりに、結構な奴らが通い詰めている。
後、男娼という商売も始めた。『RSG』の面々は男だけじゃない。当然女もいる。男に性欲が溜まるように、当然女にも溜まる。
男娼ってのは、異世界では珍しいらしく、これが大ウケ。貴族や金持ちのマダムがお忍びで通うほどにはウケた。
魔大陸には女性専用風俗ってのは当たり前にあるけどね。俺が現代にいた頃は流行り始めてたし、こういうのは男女関係なく需要があるはずだから。
というより、日本は色んな性癖に対応出来る店が多い。赤ちゃんプレイだの、SMプレイだの、男性同士、女性同士だの。
そういうのを見てきた俺からすると、こっちの世界は非常に礼儀正しい性行為をしてるように見える。
グレースは例外ね。あいつは俺の知識を吸収して昇華して、どこに出しても恥ずかしい変態になっちゃってるから。
まあ、それをオープンにする奴じゃないし、なんだかんだそれに付き合ってる俺も変態だろう。
もう少し加減をしてくれたらなって思うけど。俺はおせっせは嫌いじゃない。むしろ大好きだ。
でもね、何度も言ってるけど、限度ってもんがあるのよ。一定のラインを超えると、どれだけ好きなものでも苦行になる。
なのにグレースは年々手が付けられない猛獣へと進化していく。そろそろ俺の対応力も限界だよ。
まあ、とりあえずテコ入れはこんなもんかな。三年も掛かったけど、『RSG』からの不満も無くなったみたいだし、今はこれで良いでしょう。
後は俺の進化だな。ようやくゴールが見えてきたところだ。
グレースとの賭けもあるし、意地でも乗り切ってやるぜ。
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