第357話 行事


 「人手人手人手ー。人手が足りーないー」


 魚の歌のリズムに乗せて、会議で人手が足りない事を言う。会議というか、仕事が終わって暇な奴で会議室に集まって駄弁ってるだけなんだけど。


 「妾が悪魔を増やそうかの? レト様からこの前精気をたくさんもらった事じゃし」


 「悪魔かぁ。それもありだな。進化させないと、スキルを覚えないからちょっと手間は掛かるけど、人間が成長するよりかは早いだろうし」


 今会議室にいるのはサマーとローレライ、パトリック、ロマンだ。サマー以外は国政にほとんど参加してないから、実質サマーとお喋りしてるだけだな。ローレライ達はお絵描きしてるし。


 「増やせても100人くらいじゃが、どうするかの?」


 「とりあえず頼む。まあ、焼石に水だろうが」


 居ないよりは良いだろうと、とりあえずサマーに悪魔を増やしてもらう。後はやっぱり誘拐するか、それこそヴェガみたいにキメラを作るかぐらいしか案がない。


 でもなぁ。ヴェガ程のスペックじゃないにしても、キメラを作るにはある程度の数の人間の死体が必要で。


 魔王で人間大陸を蹂躙した時に大量の死体は出来たけど、向こうで俺達の恐怖を演出する為に放置して来たからな。あんまり死体のストックがない。


 そしてストックしてある死体はヴェガのご馳走である。困ったもんだ。


 「後はアギャインに【死霊術】を使ってもらうか…。墓荒らしでもお願いしようかな」


 「悪魔よりアンデッドの方が使い物になるには時間が掛かるんじゃないかの? 単純作業ならなんとかなるかもじゃが」


 「むーん」


 アギャインのスキルで生み出したアンデッドは成長しないけど【死霊術】で使役してるアンデッドは成長する。だから、そっちをお願いするのもありだけど、アンデッドはとにかく知能が低い。


 モノになれば確かに戦力にはなるが、それには結構な時間が掛かる。


 「結論。近道はほとんどないって事だな。地道に国民達に数を増やしてもらおう。後は、今は人間大陸に出張してるテレサ探検隊に孤児を見つけたら攫ってくるようにお願いするか」


 すまんな、ウェイン。後、200〜300年はぐらいは人手不足だ。なんとか頑張ってくれ。その頃にはなんとかなってると思う。


 あ、でも300年も経ったら、この国に初期からいる奴はそろそろ寿命になっちゃうな。超越者になっても、それぐらいが限度だし。


 まあ、なんとかなるか。知らんけど。






 「行事ねぇ」


 「はい。武闘大会等は毎年やっても、挑戦者は大して変わりませんし、何年かに一度でやるのか良いかと。それ以外に国民が何かガス抜き出来るイベントが欲しいなと思いまして」


 「まあ、年に一回か二回ぐらいはハメを外して遊べるイベントがある方が良いか。いつも頑張って働いてくれてるわけだし」


 「ええ。ですので、レト様の前世の知識で何か面白いものがあれば…」


 「ふむふむ」


 現在レト君は珍しく仕事中。会議室に国政を担って日々頑張ってくれている文官諸君と会議中だ。


 多種多様な種族がいて面白い。吸血鬼の文官、小人の文官、巨人の文官、天使の文官、悪魔の文官、ダークエルフの文官、獣人の文官。


 中でも国の宰相的な立ち位置でいる奴は元孤児だったやつだ。サマーとミシェルが学校で教育して、孤児から実質文官のトップに成り上がり。とんだシンデレラストーリーである。


 で、今の議題は国民のガス抜きだ。一時は武闘大会やら進水式やらで、国主導の祭りをやったけど、それを何かしら毎年やりませんかって事だな。


 前世であった有名な行事と言えば、オリンピックとか、ワールドカップとか。スポーツ系の祭典がやっぱり人気だったかな。


 「四年に一回、四つの何かをループさせるか」


 「どういう事ですか?」


 一年目は武闘大会、二年目はオリンピック(仮)、三年目はワールドカップ(仮)、四年目も何かしらのイベントを。これをぐるぐるさせていけば良いんじゃないのって話だ。


 国民達は毎年違う祭典が見れて楽しい。四年に一回なら、なんか丁度良く飽きずに楽しめる祭りになるんじゃないかなって。


 まあ、なんの祭りをするか考えないといえないけど。


 この世界って前世由来のスポーツがやりにくいんだよ。大体の奴が超人的な身体能力をしてるからさ。それに合わせてルールも決めないといけない。


 でも中々迫力のある試合が見れそうで楽しそうではあるよなぁ。

 

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