第355話 様変わり
「ちっ」
「え? 舌打ち?」
「気のせいでは?」
「いや、『ちっ』って聞こえたし。不敬だぞ?」
半年の休暇が終わったので、蟲領域探索に1年こもってきました。今回も飽きとの戦いになったけど、前回以上に余裕はあった。
暇さえあれば写真をパシャパシャして、時間潰しをしてたからね。まあ、テレサに蟲の魔物の写真をお願いされた事もあるけど。
あ、ワーム系は撮ってない。それだけは欲しいなら自分で頼む。気持ち悪いんだもん。だいぶ前に滅ぼしたと思ったけど、どうやら小さな勢力として復活してるっぽい。しぶといやつめ。
で、今回は写真撮影って暇潰しがあったから、1年耐えれた。帰還の報告をしたら、グレースに舌打ちされちゃったよ。狡い契約書で勝ち誇った顔をしてたけど、それのお陰で俺は意地でもクリアしてやろうって気になりましたね。
「それにしても…1年で国が変わりすぎじゃない?」
「生産部が…いえ、ウェインが絶好調なようですね」
「俺、最初帰ってきた時、自分の国を間違えたかと思ったもん」
この1年で国が様変わりしていた。首都にあるでっかいビルにモニターが付いてるし、そこで日々のニュースなんかを流したり。
カメラは一般普及して、モデルなんて仕事が出来たりしている。車やバイク、自転車も道路をビュンビュン走ってるしさ。
あれだ。なんか地球の東京に来たと勘違いしちゃう感じ。まだあそこまで文明が進んでる訳じゃないけどね。
「モニターがあるって事はテレビもあるのかな?」
「あるにはありますが、一般普及はしてませんね。まだコストや量産体制に問題があるようで、一般市民が買える値段にはなってません。それでも首都のモニターで、ニュースを放送したり、何かの宣伝したりには使えてますので、良い事かと」
「ふーん。生産部は凄いねぇ」
完全に他人事な俺。まさか、俺が不在の間にこれほど進むとは思ってなかった。変わっていく様子をみていたかった気持ちはあるけど、これからもどんどん進化していくんだろうなぁ。
現代でも2000年ぐらいから、20年ぐらいで一気に変わったらしいし、こっちの世界で魔力やらを使ったら、もっと更に進化していくだろう。
問題は文明の進化に国民が付いてこれるのかどうかだけど。ここまで変わると、教育内容とかも、かなり変わるだろうしなぁ。落ち着いたら、学校の方にも顔を出すか。
ってか、電波的なサムシングはどうしたんだろ? そこも魔力で解決? それとも基地局みたいなのがあるのかな? とっても気になります。ちょっとウェインの所に行こうかな。
執務室で書類にハンコを押しながら、そんな事を考えてると、『ジリリリリ』という音が部屋に鳴り響く。
「はい。こちらグレース」
「え!? 電話?」
壁に付いてた受話器を取って、グレースが応対する。まさか電話もあるとは。マジでこの1年で何があったよ。一気に文明が進みすぎじゃない? 流石に携帯じゃなくて、備え付けの電話みたいだけど、それでもすげぇ。
「レト様は向こう1週間、手が空く事はありません。諸々のお話は1週間後にお願いします」
そう言って、グレースがガチャリと受話器を壁に戻す。
「ウェインからでした。レト様が戻ってきたなら、生産工房に顔を出して欲しいと」
「え? それなら今から行ってこようかな。俺もどれだけ進化したか興味があるし」
「いえ、急ぎの用ではないようですので。レト様には先にこちらに付き合って頂きます」
グレースはそう言って、俺の手を引っ張っていく。着いたのはプレイルーム。まあ、分かってたけど。
既にクリスティーナとか、サマー、ミシェル、妲己もお待ちかねだった。
どうやら、俺の真の戦いはこれかららしい。
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