第353話 カメラ


 「ほーう。なんかウェインにしては時間が掛かったよな。いつもならぽんぽこ発明するのに」


 「レト様の説明の仕方が悪かったんだぞ。『なんか絵を切り取った感じ』とだけ言われても、分かる訳がないんだぞ」


 「それを分かってくれるのが、お前達だったじゃん。まあ、これに関しては仕組みとか一切知らなかったから、教えようも無かったんだけど」


 「レト様に言われた事のせいで変な先入観を持っちゃったから、開発が遅れたんだぞ」


 「人のせいにするのは良くないと思いまーす」


 妲己とリゾート施設で三日程デートをして帰ってきた。その後、またプレイルームに何日か監禁されて、俺は逃げるように城を飛び出して、ウェインの所にやって来た。


 あれが結構前から欲しいって言ってたものの試作品が出来たらしい。まあ、カメラなんだけど。


 俺はカメラの仕組みなんて一切知らない。学校で習ったのかも知れないが、記憶になかった。だから、どういうものかだけを説明して、あとよろしくーと丸投げしてたんだけど。


 俺の説明が良くなかったのか、長い時間が掛かってしまったみたいだ。なんかすみませんね。


 「それで? レト様が求めてるものはこれで合ってるんだぞ?」


 「だぞ」


 一応形はこんな感じって、絵は書いて渡してたから、完成形は前世で見たものと遜色はない。魔力を使うって事以外は。まあ、消費魔力は微々たるものだから、普通に前世と同じ感覚で使えます。


 「でも、これを完成させて良かったんだぞ。実験記録を簡単に保存しておけるのは、時間短縮の面でもありがたいんだぞ」


 「ほな、次はビデオを頼むわー」


 俺は試作品カメラで手当たり次第、周りをパシャパシャしながら、気軽に次の発明を頼む。


 むぅ。妲己とのデートにこれを持って行きたかったぜ。また今度連れて行こう。


 「ビデオ?」


 「こう、なんて言うか、絵が連続で流れるというか。写真は静止画だけど、ビデオはもうありのままを撮り続けるというか、動画というか」


 案の定俺の拙い説明にウェインはジトっとした目を俺に向けてくる。男のジト目なんて嬉しくありませんよ。


 仕方ないじゃん。ビデオも仕組みなんて知らないんだから。前世では当たり前にあったものだけど、いざ、その説明を求められると全然分からない。


 何気なく使ってた家電やら、カメラやら、携帯やらって、よくよく考えたら凄い発明だよねぇ。


 「まあ、言ってる事は分かるんだぞ。でもいつ出来るかは分からないんだぞ」


 「別に急いでないからゆっくりで良いよ。このカメラだけでも出来る事はいっぱいあるから」


 当面はこのカメラで遊ばせてもらいますよ。とりあえず可愛いローレライの写真を撮りまくって、アルバムでも作ろうかな。


 キンブルなんかに渡したら、ひたすら自分のハーレムメンバーの撮影をしてそうだ。


 あ、そうそう。キンブルと言えば、蟲領域から居なくなってたアラクネだけど、城に帰ってきたら、普通に居た。


 どうやら、俺が篭ってる一年の間に、とうとうキンブルが勝利したらしい。あいつ、すげぇよな。着々とハーレムメンバーを増やしてる。俺はもう十人を超えた辺りから、その後、どれだけ数が増えたか知らないんだけど。


 よく干からびないよな。俺なら間違いなく腹上死してるぜ。


 「あ、そうだ。せっかくカメラが出来たんだし、眷属全員集めて集合写真でも撮ろうぜ。なんか記念的な意味も込めて」


 「なんの記念なんだぞ?」


 「それは知らん」

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