第352話 デート
「おーい! ロマン! こっちもおねがーい!」
「ギギギッ!」
ヘラクレスギラファの名前はロマンになった。一応ロマン生物だからって事で、安直な感じで決めました。
ロマンはどうやら、人から頼られるのが好きみたいで、今は主に工事現場を手伝っている。背中に機材やら材料を載せて、高所に運んだりする時に、よく声を掛けられている。
俺が偶に参加する時より、既に役に立ってる話じゃないですかね。
それはさておきだ。
「やっぱり休暇はこうでなくっちゃ」
俺が蟲領域に篭ってる1年の間に、特に変わった事がないかの報告を受けて、少しだけ書類仕事をした後。
俺は半年の休暇を有意義に使う為に、海の近くに建設されたリゾート施設にやって来ていた。
綺麗な海、砂浜。美味しい血。色々ある娯楽施設。俺が暇潰しをする為に建設を命じた場所だけど、本当に作って良かったね。
「ビーチで日光浴をしながら、キンキンに冷えた血を飲む。これ以上ない贅沢」
吸血鬼なのに日光浴とはこれ如何にって感じだけど、この世界の吸血鬼はほんと、血を飲む人間って感じだけで、弱点らしい弱点がない。
ニンニクだって余裕だし、銀製品とか日常で使ってるし、十字架を見てもなんともない。聖水に関しては、ローションに混ぜて使ってるくらいだ。なんで混ぜてるかは知らんが。
お肌が綺麗になるとか言ってたような気がする。
「意外と利用客が多いんだなぁ」
ベンチに寝転がりながら、海で遊んでる人達を見る。この施設、本格的に俺が使うのは今回が初めてなんだが、意外と人が多い。
皇帝専用のプライベートビーチみたいなのもあるけど、俺は普通に一般客に紛れて休暇を楽しんでいる。多分みんな俺に気付いてるけど、スルーしてくれてありがたい。
「サーフィンか。やった事ないな」
少し遠くでは、波乗りを楽しんでる人達がいる。あれって面白いのかな? なんなら、俺が【音支配】で超弩級の大波を用意してあげても良いけど。
あーでも、細かい調整が出来ないからなぁ。普通にこのビーチとかにも被害が来そう。
「キュンキューン!」
「へぷっ! 妲己、ここで水をブンブンするなよ」
狐姿の妲己が水遊びから戻ってきた。今日は妲己と二人きりでデートなのだ。
その妲己が俺の目の前で高速ブルブルをして、体についた海水を振り払うもんだから、全部俺に直撃。お陰でびしょ濡れである。
「ん? ああ、あれをやるなら体を小さくした方がいいぞ」
妲己がソワソワし始めたので、そっちを見ると、あるのはロングスライダー。普通はプールとかにあるもんだけど、せっかくだから海の近くに作った。
長いスライダーを滑り切った後に、最後は大ジャンプして、海に放り出される仕様だ。
「キュンキュン!」
「一緒に? 別に良いけど」
どうやら二人で滑りたいらしい。まあ、せっかくのデートなのに、ここで俺がダラダラしてるだけじゃ楽しくないもんね。
ほなら、俺もそろそろ本腰入れて遊びますかね。
「水上バイクにバナナボート、ビーチバレーなんかも良いな」
「キュンキュン」
「何? 二人一組でビーチバレーの大会がやってるだと? よーし、それも参加しよう」
思えば妲己と二人っきりって、結構久々だな。最初期の頃は二人でスタンピード起こしたり、楽しくやってたもんだ。
そこからグレースが加わり、アシュラが加わり、ウェイン、テレサが加わり。俺達も中々大所帯になったよなぁ。
気ままに人間を殺し回るつもりだったんだけど、いつの間にか国なんて作っちゃって。なんでこうなったんだろう。
まあ、面白いから良いけどさ。
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