第351話 詐欺
「まだ勝負はついてませんよ」
「いや、1年耐え切ったよ?」
意気揚々と蟲領域から、帝都のお城に凱旋したら、グレースが往生際の悪い事を言い出した。やれやれ、性欲モンスターはこれだから困るぜ。
「ええ。ですが、それは進化するまでですよ? まだほんの最初が終わっただけ。最初の1年を耐え切ったのは、確かに凄いです。今までのレト様なら、半年も経たずに帰ってきたでしょう。成長の兆しが見えて私も嬉しいです。ですが、果たして進化するまで続けられるかどうか…。見物ですね」
「はぁ? そんな約束してないだろ? 一年耐えられるかどうかの勝負だったはずだ」
「契約書はしっかり控えてますよ」
そう言ってグレースはピラっと一枚の紙を見せてくる。確かにこういうのはしっかりしておいた方が良いと、紙に残しておいたんだ。
後で言った、言ってない論争になるのは避けたかったからな。俺はその時、1年ぐらいなら余裕と思ってたし、達成する気満々だったから、実際に達成した。契約書もしっかり読んでサインしたはずだけど?
「ここです。期限は進化するまで。しっかり書いてありますね」
「ちっさ! 文字ちっさ! 虫眼鏡がないと見えないんじゃないの!? 詐欺じゃん、こんなの! 前世でヤクザの事務所に出入りしてた時にこんなの見た事あるぞ!!」
「レト・ノックス。直筆でちゃんとサインは頂いております。言い逃れは出来ませんよ」
俺はわーきゃーと喚いて必死に抵抗するが、グレースは聞く耳を持たない。勝ち誇った表情のドヤ顔をしてやがるのみ。
「不敬! 不敬罪だ! 皇帝相手に詐欺をするなんて不敬であるぞ! ええい! 者ども! グレースをひっ捕えろ!」
「良い勉強になりましたね。実際レト様に外交する機会があるかは分かりませんが、こういう事には気を付けましょう」
俺がひっ捕えろって言ってるのに、周りで見てる連中は何もしない。はいはい、いつものじゃれあいですねって感じで、暖かく見守られてる。
お前達は近衛騎士だろう! 一体どういう教育をされてるんだ! 我、皇帝ぞ? 命令に従わない近衛騎士なんて必要ないじゃないか!
………そういえば。近衛騎士達を教育してるのが、グレースだったか…。俺には最初から味方は居なかったんや…。
謀反とかされたら終わりじゃんね。まあ、眷属含め、国民が全員が束になって俺を殺しに来ても、返り討ちにする自信はあるけど。
【傲慢】さんがあるからね。
「さあ、レト様。落ち込んでるのもその辺にして、プレイルームへ向かいましょう。賭けは続行中ですが、決着がつくまでは今まで通りです。一年分の渇きをしっかり受け止めてもらいますよ」
「腰が爆発する」
あれから三日三晩プレイルームから脱出する事は出来なかった。あいつら、ローテーションで俺を攻め立ててくるんだ。
見方によっては、幸せなハーレムを築いておいて、贅沢言うなって言われるかもしれない。でもね? 何事にも限度ってもんがあるんですよ? どれだけ幸せで気持ち良い事でも、度が過ぎれば、それはもう地獄である。
クスリと一緒さ。
「貴様…。あれだけ蟲領域で可愛がってやったのに、俺のピンチに呑気に遊びまわりやがって…」
城に帰ってきてから、ヘラクレスギラファは、すっかりローレライの乗り物になってる。男のロマンが詰まった昆虫だけど、どうやら女のローレライにブッ刺さった模様。
俺が地獄を見てる間にローレライに手懐けられやがった。俺があの時、蚊から助けてやった恩を忘れたか。
まあ、ローレライは可愛いから。その魅力にやられてしまう気持ちは分からんでもないが。
「あいつの名前、どうしようかね」
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