第302話 傲慢


 大体の説明が終わったって事で、お待ちかねの能力チェックのお時間だ。

 眷属達も興味津々みたいだし、ゆっくりと確認していこう。


 まずは素直に王になりましたよと。

 これは予想通りだったね。心配してたこれで進化が終わりって訳じゃなさそう。まだ経験値の器に上限がある。


 まあ、王になるまで滅茶苦茶時間かかったし、必要経験値が増えた次の進化は更に遠いだろうけど。ひたすら蟲領域に行けば早まるだろうけど、レト君は飽き性なので。当分ゆっくりしたいと思う所存です。


 で、次は異能。

 【魔眼】がLv8になって魅了を覚えた。

 なんか俺の中で【魔眼】って言ったら、魅了なんだけど、やっと覚えたなって感じ。まだ試してないけど、まあよくあるタイプの魅了だと思ってる。


 で、俺が楽しみにしてた二つ目の異能。

 【傲慢】である。大罪系の異能が出てきたあたりで予想はしてた。俺が大罪系ならこれだろうなって。


 正直滅茶苦茶嬉しい。大罪系って憧れるよね。初めて見たのはアシュラだったかな? 羨ましかったんだよね。【憤怒】やら【怠惰】やら【暴食】が出てきて、こいつらラノベの主人公じゃんって。


 でも【魔眼】も優秀で満足はしてたし、残念だなって思ってたらこれですよ。まさか魂が二つある事が役に立つとは。なんで分裂したのかは知らないけど、さんきゅーですって感じ。


 で、能力についてだが。


 「これ、いや、うーん…」


 「微妙なんですか?」


 「いや、強い。こんなに強い能力があって良いのかってぐらい強い」


 多分だけどね。

 俺の考え方があってるなら、竜王にも負けないはず。破格すぎる能力だから逆に戸惑ってる。


 「天上天下唯我独尊。一回でも勝ったらその後は何回戦っても負けないらしい」


 「? よく分からないのですが…。いえ、言ってる事は分かります。しかし、竜王相手にはその一回が厳しいのでは?」


 「勝ちの定義によるよね」


 まだ試してないから確信は得られてないけど。これ、じゃんけんでも麻雀でもなんでも良いから、とにかく勝てば良いんじゃないの? 俺は都合良くそういう風に解釈してる。負けたらペナルティもないし。


 「試せば良いか。妲己」


 「キュン?」


 未だに恥ずか死ぬ状態だった妲己に検証に手伝ってもらう。妲己に人化してもらい、早速じゃんけん。何故か七回連続で負けたが、八回目でようやく勝利。俺、じゃんけん弱すぎでは?


 「よし。勝った」


 「負けたでありんす」


 で、問題はここからよ。俺の予想が正しければ…。


 「ふはっ! ふはははははは!」


 「あ、あり得ないでありんす…」


 影の中で模擬戦してきました。

 圧勝。圧勝である。今までほとんど手も足も出なかった妲己相手に圧勝。


 俺が進化して身体能力諸々が上がってるとかそんなの関係ない。むしろ、出力が上がりすぎて身体を上手に操作出来なかった。


 それなのに圧勝。

 【傲慢】を発動した途端、妲己は能力に制限が掛かった感じになったっぽい。俺に当たりそうな攻撃は何故か逸れていくし、逆に俺の攻撃は当たりまくる。


 なんか確率操作とか、運命操作の領分になってる気がするけど、それはさておきだ。


 「最初に何かしらで勝つ必要はあるけど、それさえ乗り越えれば、事実上俺は無敵になった訳だ。………ん?」


 今すぐ竜王に喧嘩売ってやろうかなんて調子に乗った事を考えてると、【傲慢】の能力が使えなくなってる事に気付く。


 「げっ…。インターバルとか、クールタイム的なのがある感じ? それはどうなのよ?」


 そりゃ破格の性能を持った能力だとは思うけど…。【傲慢】って一番偉そうな感じの能力なのにさ…。


 「しかし、これはレト様が取得出来て良かったですね。変に人類勢力にこの能力を持たれて、何かの拍子でレト様が負けてしまえば抗う術がなかったという事でしょう?」


 「確かに」


 言われてみるとヤバいな。

 いや、マジで。ほんとに危なかったじゃん。


 それにこの能力がグレースに渡ってたら…。一回でも夜の戦闘で負けてたら、ひたすら負け倒してた事になる。


 俺はその事を想像して思わず身震いしてしまった。早くインターバルかクールタイムか知らないけど終わってくれないかな。早い事グレースに【傲慢】を使っておかないと。そうすれば二度と夜の戦闘で心配する事がなくなる。


 夜の性女帝にこれから怯えなくて済むのだ。ふはははは!! 長きに渡る戦いに終止符を打とうぞ!




 「さっ。気を取り直して残りの能力だ」


 って言っても、後はいつも通り既存の能力が上位になったって感じなんだけどね。

 やっぱり一番嬉しいのは【音支配】になった事。ほぼ最初期から使ってる相棒がようやくって感じですよ。


 「吸血鬼なのに【血液魔法】が上がらなかったのは気に食わないが」


 まだ進化が残ってるからそれまで待てって事かな。確かに【血液魔法】が支配に変わったらヤバいもんなぁ。少しでも相手に血を出させると勝ち確になる。


 今までは抵抗が激しかった相手には、魔力で無理やり押し通してたけど、支配になると魔力消費がなくなる。やりたい放題だよね。


 後は新しく増えた【下級吸血鬼召喚】か。

 これはアギャインのアンデッド生成と似た様な感じでしょ。


 とりあえず試してみるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る