第299話 ノックス
目の前にいる10歳ぐらいの少年。
にこにこ笑ってて、何も知らない人が見たら、可愛らしい子供にしか見えないだろう。
だが、圧が半端ない。ちょっとでも気を抜いたら押し潰されそうになる。なんだこれ。こんなの竜王に会った時以来なんだけど。あの時より更に圧は強いけど。
「いやー! 結構時間がかかったね! 普通なら早い方なんだけど、レト君ならもっと早くここに来てくれると思ってたんだけどなぁ」
「は、はぁ」
「それに最近のレト君の行動はぬるいよ! もっとはっちゃけてるレト君を見てるのが楽しいのにさ! 魔大陸に来てから全然混沌がないよね!」
「え、いや、あの」
「ドラグ君に釘を刺されてるのは分かるけどさ! レト君にはもっともっと人類を混沌の渦に巻き込んでくれないと! こっちとしても暇になってきちゃって困るんだよね!」
「ちょっとすみません」
少年のお説教? が止まらない。
俺は言われるがままになって、大人しくしとこうと思ったんだけど、この少年が喋る度になんか魂的なサムシングにダメージがあるような気がする。喋る度に覇気というか、そんなのを叩きつけられてる気がするんだよね。
そのせいで中々話が頭に入ってこない。
「あのあなたは一体? 大体の予想はつくんですけど」
「え?」
少年はまだまだ喋り足りないぞと、更に言葉を重ねようとしてたけど、一旦なんとかストップさせる。少し落ち着いたお陰で、この少年が誰なのかは大体分かった。
少年はキョトンとした顔で、首を傾げている。あれ? まだ自己紹介とかそういうのないよね? もしかしてあった?
「あ! 僕の名前か! そうだね! 頭に思い浮かべてごらん? 今なら分かるはずだよ!」
とりあえず言われた通りにしてみる。
竜王に聞かされた言葉や、いつぞやのメッセージにモザイクが掛かってた名前。神様にプロテクトされてたらしいその名前とは…。
「え? ノックス?」
「あはははは! だいせいかーい! 僕の名前はノックスだよ。よろしくね」
「え、俺の名前なんですけど…」
「知ってるよ! 僕が名付けたんだもん!」
いやいやいや。
ちょっと理解が追い付かん。
確かにいつか進化した時に勝手に名前もプレゼントされてましたが。神様とおんなじ名前は流石にどうなのよ。
しかも国の名前をノックス魔帝国にしちゃってるんだが? その辺は大丈夫なのかな? わざわざプロテクトかけてる名前なのに大々的に国の名前にしちゃってるんだが?
「にひひひひ! 名前を付けるなんて初めてだったからさー! 自分の名前とかも出来るのかなと思ったけど上手くいったね! いえい!」
「えっと、ありがとうございます?」
「うむうむ。感謝してくれたまえ」
………深く考えるのはやめよう。そういうのは俺のガラじゃないし。異世界に来てから適当に生きてきたんだ。今更とやかく考えるのも馬鹿らしいぜ。
「それでノックス様? は、上位存在とやらで良いんですか? テムテン様とアイシュ様の子供って竜王には聞きましたけど」
「そうだよ! 今はここに封印されちゃってるけどね! まあ、封印はされててもある程度干渉は出来るんだ! それで面白そうなレト君で遊んでたって訳!」
「なるほど」
どうやら俺はノックス様の遊び道具だったらしい。別に良いんだけど。俺は好き放題やってるだけだし。俺で遊んでくれたお陰で能力選択出来たりしてる訳だからね。遊んでくれてありがとうございますって感じ。
「それでなんで俺はここに?」
「レト君をやっとここに呼べるようになったからね! 顔合わせって感じかな! 僕もずっとレト君や世界を見てるだけじゃ暇だからねぇ。偶に話し相手になってもらおうかなって」
「はぁ。それは別に大丈夫ですけど」
なんで封印されてるのかは知らないけど、確かにこんな真っ暗な空間に一人でいるのは暇だろうな。俺なら三日持たずに発狂する自信がある。世界を覗いたり出来るらしいけど、それでも暇を持て余すだろう。
「それでだよ! レト君! さっきも言ったけど、最近ぬるくなってない? 国でのんびりしてるだけじゃんか!」
「竜王に人間滅ぼすのはダメだって言われてるもんで」
「ドラグ君かー。父さんと母さんに人類の守護を任されてるんだよねー。守護というより監視か。数が減りすぎるとここまで育った世界が勿体無いからねー。それは分かるんだけどちょっと過保護すぎるよ」
竜王ってドラグって名前なんだな。初めて知りました。あいつの事解析出来なかったし。
「俺もまだまだ遊びたいんで竜王に殺されたくないんですよね。だから竜王に勝てるようになるまでは大人しくしてようかと。それでも100年周期で襲うのは許可されましたよ。人類の危機感を煽るのにちょうど良いからって」
「ドラグ君は魔王特攻みたいなところがあるから仕方ないかー。あの子に勝つのは中々難しいよー」
自分も魔王なのに魔王特攻とはこれ如何に? なんか色々便利な異能を持ってるってのは知ってるけど。
「仕方ない。今は100年に1回の娯楽として我慢しようかな。レト君がドラグ君に対抗出来るようになるまで気長に待つとしよう」
「当分先の話かもしれませんけどね」
今回の進化でどれくらい強くなったのやら。あの時見た圧力を思い出すと、この進化でも届いてる気はしないんだよね。これで最終進化だったら一生無理なんだが。
その辺はここから帰ってしっかり確認しよう。
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