第298話 とうとう


 「結構疲れたな」


 「でも大体の耐久性は分かったの。非常に有意義な時間だったの」


 テレサとムカデ実験を始めてから一週間。

 念入りに実験した結果、大体の事は分かった。


 因みにこの間一回も城に帰ってない。帰った時のグレースが狂戦士になってないか心配です。


 「まさか火より氷に弱いとはな」


 「凍らせると一気に装甲が脆くなるの。これは防具とか作る時は要注意なの」


 ムカデの装甲は寒さにとても弱かった。と言っても、魔法耐性があるせいで凍らせるのも一苦労なんだが、それさえ出来れば軽く殴っただけで装甲が砕ける。


 この軽くってのは超越者…具体的にはレベル200ぐらいの力がいるが。普通の奴には難しいかもしれん。


 「テレサはもう実験は終わったから帰るの。レト様はどうするの?」


 「俺も一旦帰る。ムカデは経験値も悪くないし、倒すのにちょっと時間が掛かるけど、良い練習になるから、蝉のところからここに狩場を変えようかな」


 この一週間でどれくらいの力で攻撃すれば装甲を貫けるかってのもしっかり理解した。


 【音魔法】で内部から破壊するのが一番効率は良い。後は【音魔法】を纏っての肉体スペックでのゴリ押し。


 両方良い練習になるし、ムカデは本当に丁度良い相手なんだよね。これからしっかり通わせてもらいます。


 でもとりあえず今日は帰る。

 何回も休憩を挟んだけど、また一週間戦いっぱなしは疲れる。帰っても疲れるのはほぼ確定してるけど、城の方が落ち着くのは間違いないからね。




 「じゃあすみませんけど、今日から当分お願いします」


 「キュンキュン!」


 「ゴギャギャ!」


 はい、って事でムカデゾーンに狩場を変えてから、半年ちょっとが経ちました。時が過ぎるのは早いですねぇ。


 『クロコゲーター (眷属)

  名前 ボスコ

  【魔物能力】

  水冷魔法

  水流操作

  牙撃

  水魔纏鎧

  氷魔法        』


 『ブラッド・ドラゴン (眷属)

  名前  パトリック

  【魔物能力】

  血液魔法

  竜魔法

  爪牙撃

  魔纏鎧           』


 この半年ちょっとで進化したのはこいつら。ボスコは体長3mぐらいの立派なワニになった。最近は城周りの湖で【水流操作】を使って、擬似津波みたいな事をして遊んでいた。グレースに滅茶苦茶怒られてた。


 パトリックもミニの名前が取れたからなのか、一気にデカさが5mぐらいに。ちびっ子友達のローレライが悲しそうな顔をしてたので、これはいかんとサイズ変更の足環を渡しておいた。


 そして俺以外では初めての【血液魔法】持ち。これだけで一気に強くなったなって思う。この魔法はマジでチートなので。



 で、それはさておきだ。

 今日も蟲領域にお邪魔してるんだけど、同行者に妲己とアシュラがいる。これは俺がお願いしてついて来てもらいました。


 なんでかと言うと、俺の経験値の器が9割5分ぐらい溜まったからだ。進化したら一時的に意識を失うからね。護衛にこの二人を連れて来ました。


 いやぁ。もうすぐ進化ってなると狩りが捗って仕方ない。本当はもっと時間が掛かる予定だったんだけど、もう少しってなると俺もテンションが上がっちゃって。休みを返上して、毎日毎日ムカデ狩りをやってます。


 「キュンキューン!」


 「ゴギャギャー!」


 妲己とアシュラも久々の蟲領域で楽しんでムカデ狩りをしている。そんなに楽しくやるならもっとこっちに来たら良いのにね。


 アシュラは軍人達の所に入り浸りだし、妲己は首都を歩き回るのにハマってる。

 娯楽とかも結構増えてきたからね。色々見て回るのが面白いんだろう。


 「いよっと」


 俺も負けてられぬと積極的に狩っていく。待ちに待った進化が目の前なのだ。どれだけの時間が経ったのやら。



 そしてテンションMAX状態で狩りを続ける事一週間。とうとうその時がやってきた。


 「キュン!」


 「ゴギャ!」


 経験値の器がMAXになって進化の光に包まれる。妲己とアシュラには俺が意識を失ったら、城に連れて帰るようにお願いしてるので、その通りにしてくれるだろう。


 一体次はどんな進化をするのかと心を馳せながら、意識を失った。



 「やほやほー! レト君! やっとここまで来てくれたね! 君がこの位階まで上がってくるのを心待ちにしてたよ!」


 「は?」


 意識を失って次に目が覚めると、そこは何も見えない真っ暗な空間。それなのに目の前の存在をはっきり認識出来る。


 10歳ぐらいの少年がにっこにこで俺の事を見ていた。


 


  


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る