第297話 実験


 「腰が痛い」


 「ズッコンバッコンなの?」


 「はしたない言い方はやめなさい」


 黒い悪魔ゾーンを攻略してから三日。

 一週間ぶっ続けで戦ってた事もあって、ちょびっと休もうと思ったのに、何故か休んだ気がしない。なんでだろうね。ほとんどプレイルームから出なかっただけなのに。


 で、このままだとまずいとなんとか抜け出して、再び蟲領域の攻略に戻ってきた。

 今日はお供にテレサを連れて来ています。ムカデ系魔物の耐久力に興味があるらしい。


 いつぞやの迷宮では、テレサは超越者にもなっていなくて、ムカデを仕留められなかったからな。結構昔の事だけど、それを気にしてるのかもしれん。


 「む? 少数だけど、まだ黒い悪魔が残ってるな」


 「どーんなの」


 ムカデの場所に向かってると、チラホラとGの生き残りが見える。やっぱり何匹か逃してたかと思ってたら、テレサが拳ぐらいの火の玉を辺りに撒き散らした。


 どうやら魔力探知で全ての黒い悪魔にマーキングして、まとめて燃やしたらしい。


 「テレサが来てくれてたらここの攻略も楽だったんだけどな」


 「気持ち悪いのは嫌なの」


 まあ、この辺はテレサも女の子だったって事か。とても子って年齢ではないけど。見た目は中学生ですし。人の拷問とかは平気でやるのにね。Gはそれでもキモい対象らしい。


 それで言ったら俺もか。キモいとグロいはまた別物って事ですな。



 「はい、到着」


 「ん。今度からはここまで転移で来れるの。いつでも耐久実験が出来るの」


 そんなこんなでムカデの縄張りに到着。

 うじゃうじゃと2mぐらいの大きさのムカデがたくさんいる。強さは迷宮で見た奴とは比べ物にならない。


 「石の裏をひっくり返したらこんな感じなんだろうな」


 「ん?」


 「こっちの話」


 前世でデカい石をひっくり返したら、ムカデとか他の虫がいっぱいいたよねって事だ。ここはサイズがすんごいけど。


 あれって子供時代に見てもそこまで嫌悪感がなかったのに、大人になると途端にダメになるのはなんなんだろうな。


 蝉とかも良く捕まえたりしてたのに、大人になると触るのも無理になったり。まあ、どうでも良い事なんだけどね。


 「素材は確保したい。あの甲殻は軍人共の防具とかに気に入られそうだ」


 「繁殖するかどうかの確認が必要なの。繁殖するなら最初は素材確保じゃなくて、実験を優先したいの」


 「なるほど。ちょっと待ってね」


 テレサは早速、紙とペンを持ってムカデのレポートを書き殴っている。魔物図鑑に載せるんだろうな。俺も見せてもらった事があるけど、素晴らしい出来なんですよ。


 魔物の名前とか持ってる能力、進化の系譜とか、解体の仕方、主な生息地とかをイラスト付きで分かりやすく書かれている。進化の系譜は予想のもあったりするんだけどね。


 それはさておき。

 遠見で確認してクイーン種やらマザー種を探す。繁殖するなら残しておけば、素材確保はいつでも出来るからね。先に実験しても問題ないだろう。


 「おっ。いるぞ。エンシェント・クイーン・センチピード。…うわぁ。耐久もりもりだぁ」


 「なら先に実験させてもらうの」


 テレサはまっさらな紙を取り出して、早速魔法を行使する。さっきGに使ったような火の玉をムカデ目掛けて放つ。


 「どーんなの」


 Gをあっさり焼却処分した火の玉。特にかっこいい名前がつけられたる訳でもない、いくらでも連射可能らしい魔法。でもGを簡単に仕留める事が出来るぐらいの威力はあるんだ。


 果たしてムカデにはどうかなと思って見てたんだけど…。


 「おお」


 「興味深いの」


 火の玉の衝撃で吹き飛ばされはしたものの、ダメージを負ってるようには見えない。やはりムカデの耐久力はおかしいよ。


 「蟲は大体火に弱いのが定番なのに、ほぼ無傷か。他の魔法はそれ以上の耐性があるって事かな?」


 「それはこれから実験していくの」


 「長くなりそうだなぁ」


 「レト様にもしっかり付き合ってもらうの。物理ダメージ系はテレサじゃしっかり測定出来ないの」


 「へいへい」


 次はアシュラも連れて来ようかな。

 最近は軍人のところに入り浸ってるみたいだから、来てくれるかは分からないけど。


 「まずは各属性で魔力を均一にして試すの」


 「頑張って下さい」

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