第64話 仙狐


 『仙狐 (眷属)

  名前  妲己

  【魔物能力】

  超念力

  火炎魔法

  再生魔法

  雷魔法

  幻影魔法     』


 

 「キュルン!」


 キュルンとな? あざとくなりやがって。

 可愛いじゃないか!


 「仙狐? おじさんの知らない狐なんだが」


 狐の仙人的な?

 妖狐から一気に神々しくなったな。


 「大きさはそんなに変わってないな。でも魔力が凄い増えてる。あ、尻尾もちゃんと増えてるじゃん! あれ? 五尾じゃなくて六尾? 特殊進化だから?」


 まぁ、尻尾が増える分には一向に構わんのだが。


 「凄いですね。味方なのに圧があると言いますか。格が違う様に感じます」


 それな。

 俺より強いんじゃないの、これ。

 なんか一つ上のステージに行った感があるよね。

 進化ってすげーや。


 「【幻影魔法】なんて、厨二心を擽る魔法も覚えちゃって。一体どんな魔法なんだ?」


 「キュン? キュン…」


 おお!? 妲己が増えた!!

 ほほー。片方は魔力で作った偽物か。


 「あっつ!!」


 偽物の方が俺に向かって軽く火を放ってきた。

 本物の妲己を見てみると、キュンキュン笑ってやがる。


 「ほえー。偽物の方も魔法が使えるのか。これは凄いな。でもそれ相応に魔力を消費してるな。長時間の運用は難しいか。いや、慣れたらいけるのか? って、いたっ!」


 妲己の周りを見ながら歩いて、撫で回してたら急に雷を纏ってきやがった。

 静電気ぐらいの痛さだったけど。

 こやつ、俺で遊んでやがるな?


 「あれ? こっちが本物になってる? いつの間に?」


 お仕置きしてやろうと、本物の方に向かうと偽物になって、偽物の方が本物に入れ替わっていた。


 「え!? そんな事も出来るの? これちょっと強すぎないでしょうか?」


 残機増えたような感じじゃない?

 死にそうになったら入れ替われば良いんだから。

 魔力消費は大きいけど、保険にはなるよね。


 「凄いですね、妲己。魔物の進化がここまでとは。今後も楽しみです」


 まぁ、そうね。

 俺も進化したら強くなるんだろうけどさ。

 なんか、妲己さんは優遇されてませんかね?

 【超念力】といい、今回の【幻影魔法】といい強すぎると思うんですが?

 【雷魔法】も【回復魔法】も人間には希少属性らしいし?

 【回復魔法】は【再生魔法】になってるけど。


 可愛さか。やはり可愛いは正義なのか。

 神様も妲己の可愛さで優遇したくなるのか。

 それなら仕方ない。

 妲己は可愛い。真理である。

 むしろ、異能を与えないだけ神様は我慢してるのかもしれないな。


 「グギャギャ? グギャ?」


 「キュフフン」


 アシュラが、偽物の方に突っ込んで抱き着こうとした瞬間、実体が無くなった様にすり抜けた。

 なんで? みたいな顔してるのを見て妲己の渾身のドヤ顔が光る。

 実体を無くす事も出来るのね。

 もうなんでもありじゃん。



 「ふむん。とりあえず明日は妲己の試運転だな。肉体スペックも上がってるだろうし。これで俺も進化したらムカデにリベンジ出来そうだ」


 「ですね。私も頑張ります」


 アシュラは進化したばっかりだから、まだまだだろうな。

 グレースもどうだろう。

 レベルが上がってくれれば嬉しいけど。





 「キューーン!!」


 「これは酷い」


 進化ってここまで強くなるもんだっけ?

 何かの節目とかあったりしたのかな?


 いつも使ってる【火炎魔法】のガトリングの威力がバズーカみたいになってる。

 卵サイズの火の玉からバズーカ並みの威力。

 それで弾幕張って連射してくるときたもんだ。


 ただでさえ、威力が上がってるのに【幻影魔法】で今の妲己は2体分で手数が増えてるからな。

 唯の虐殺になってる。


 「レト様。失礼ですが、妲己だけでムカデに勝てるんじゃないでしょうか?」


 そんな事思っても言うんじゃないよ。

 ほんとに失礼だな。

 まぁ明らかに俺より強そうではありますが。

 勝ち方が分からん。

 まず、弾幕で近付けないし【超念力】を防げない。

 【影魔法】で不意打ち気味に傷を付けて、【血液魔法】で血を奪い取るぐらいか。

 これも速攻でやらないと、【再生魔法】で回復されそうだし。

 後は【魔眼】の遠見を使って超遠距離から魔法を撃ち続けるか。

 俺の魔力が持たなそう。

 眷属が主人より強いとはこれいかに。

 威厳的なのがなくなるんではなかろうか。

 …………元からないか。

 

 「【超念力】の威力も上がってるだろうし、勝てるだろうな。これ、冒険者のランク的にどうなるのかね」


 「Aは間違いなく超えてるでしょう。Sは正直、人類討伐不可な魔物にも付けられるので振れ幅が大きいですが」


 Sランク下位的な感じかね。

 今の妲己が超越者とやらに負けるビジョンが見えないんだが。

 【超念力】で終わっちゃうんじゃないの?


 「キュンキュンキューン!」


 あ、終わった。

 【火炎魔法】で終始圧倒してたな。

 妲己はここの階層敵では役不足っぽいね。


 「今日から妲己には全体のフォローをお願いして、俺達が優先的に戦おう。早く追いつかなければ」


 「そうですね。アシュラを見て下さい。珍しくやる気に満ち溢れてますよ」


 ほんとだ。

 いつもはのほほんとしてるくせに、今は目がギラギラしてる。

 姉貴分に負けてらんねぇって感じか。

 進化前でも妲己の方が強かったけど、ここまで大きな差は無かったからな。

 ここでやる気を出してくれるのはありがたい。


 「ラビリントス全部の迷宮を攻略し終わった後の俺達が楽しみだな。大国にも引けを取らないレベルになってるんじゃないの? やりたい放題出来るな」


 「超越者とどれだけ張り合えるかが問題ですね」


 「ここを拠点にしてるS級冒険者達がいるだろ? 最後にそいつらに喧嘩売って確かめようぜ」


 「なるほど。それは良い考えですね。モチベーションにもなります」


 大国に喧嘩売る前に魔王に喧嘩売るけど。

 まぁどっちが先でもいいか。

 くひひひっ。楽しくなってきたぜぃ。



 

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