第63話 対策
コボルトとワーウルフの群れを一掃して影の中へ戻って来た。
「アシュラはあれだな。身体強化の練習に力を入れるべきだな」
「ゴギャ…」
意気消沈のアシュラ。
でも、速さについていけなかったのは身体強化を疎かにしたせいだからな。
ここは頑張ってもらわないと。
「で、妲己はそのままの練習で大丈夫そうだな。手助けもいらなそうだったし」
やばそうだなと思ってフォローしに行ったんだけどね。
妲己は速い敵に対して、どうするのが良いのか実験していただけだった。
雷を纏えばワーウルフより速かったし。
魔法で弾幕を張って、出口を誘導して最後は仕留めていた。
想像以上に賢かったです。
可愛くて強くて賢い。無敵じゃないか。
「キュンキュン」
「ゴギャ? グギャギャ」
尻尾でアシュラをペシペシしながら一緒に練習しようと誘っている。
日に日に妲己の面倒見がよくなっていくな。
「グレースはいいよな? 普通に戦えたし」
「私は、速い敵もあまり苦にしませんので」
シックスセンスのお陰なのか、グレースはかなり先読みして攻撃を当てれている。
最終的にどう動くか分かっていればそこに剣を置いておくだけで相手の方から突っ込んでくる。
ユニークスキルは伊達じゃないね。
「その割には俺と戦った時は後手後手に回ってたよな?」
「あれはレト様の成長速度がおかしかったのです。私の予想を遥かに上回るレベルで戦い方が変わっていきましたからね」
武術なんて知るかと肉体スペックだけで戦ってたからね。
今まで不意打ち紛いな事ばっかりだったからあの時は良い経験になりました。
「速さ対策はとりあえずこれでいいとして、問題はムカデだよな」
因みに俺の速さ対策は妲己達と一緒だ。
身体強化を頑張る。
今の所、ワーウルフの速さにもついていけてるのでこのまま練習を頑張れば自然とレベルアップしていけるだろう。
「思ったのですが、ムカデも速さ対策と同じじゃないですか? 自身の肉体スペックを上げて防御以上の力で殴る。これが一番だと思いますが」
「脳筋プレイか。まあ確かに真理よな。レベルを上げて物理で殴る。シンプルイズベストよ」
身体強化の練度を上げつつ、進化を目指す。
これがやっぱり近道になるのかしらん?
魔法の出力を上げるって考え方もあるけど、結局進化したら上がるしな。
「じゃあ、明日からはより一層狩りに力を入れますかね。この階層で俺は進化を目指します」
「私もどうにかレベルが上がれば良いのですが」
ずっと99で上がってないもんね。
ここがレベルキャップって事は無いと思うんだ。
超越者なんてのが居るぐらいだし。
99〜100に上がる為の経験値がかなり必要って説を推します。
「ゴギャー!」
「キュンキューン!」
36階で狩りを始めて1週間が過ぎた。
アシュラの身体強化もちょっとはマシになり、妲己の補助ありではあるが、なんとか群れ相手でも戦えている。
アシュラが思ったより不器用なんだよね。
魔力操作が苦手だから身体強化を敬遠してたんだろう。
【戦闘学習】の補正込みでも、少ししか成長してない。
根気よく頑張っていくしかないね。
「はあぁぁ!」
グレースは相変わらず。
ずっと狩りをしてるけどレベルは上がっていない。
「スキルレベルは上がってるので構わないのですが。少し焦りますね」
結構経験値は稼いでると思うんだけどな。
まぁ、簡単に超越者になれたらもっとこの世界は超越者で溢れてるか。
レベル100でなれるのは俺達の予想でしかないし。
もしかしたらもっとレベルが必要かもね。
「よっと」
俺は最近、【血液魔法】で指から血を弾丸の様に射出して一撃で仕留めるのにハマっている。
速い敵当てるのは中々コツがいるんだよな。
「これで大体8割ぐらい経験値が溜まったかな。この調子でいけば1ヶ月はかからないぐらいで進化できそう」
ヴァンパイアになってから必要経験値が爆上がりしてるからさ。
進化したての時は中々先が長いと思ってたけど、もう少しだ。
次、進化したらどれだけの経験値を要求されるのか考えたくないけどね。
むしろ、妲己の方が先に進化しそう。
「よーし、次の群れ辺りで今日は終わりにしよう。アシュラに傷が増えてきたしな」
妲己がその都度【回復魔法】を掛けてくれてるけど、傷を負う回数が増えてきた。
集中力がなくなってきたんだろう。
「キュオーン!!」
妲己が咆哮を上げながら、ワーウルフに肉薄する。
相手もなんとか応戦しようとしてるが、雷を纏った妲己の方が断然速い。
ワーウルフの攻撃を紙一重で避けて、尻尾を叩き付ける。
ふらついた所で、【超念力】を使って首を捻じ切り戦闘終了。
直感があろうが物理的に避けれなくするスタイル。
嫌いじゃないね。
「キュ? キュンキュ…ン」
わ! 妲己の方が早そうと思ってたけど、まさか本当に進化するとは!
光に包まれて、気を失った。
「ゴギャ!? ギャフギャフ!」
アシュラが妲己を見て、やべぇやべぇって感じになってあたふたしている。
妲己もアシュラが進化してる時は、そんな感じだったなと暖かい目で見ながら、全員を影の中に回収する。
「進化だよ、進化。焦らなくても大丈夫」
「ふふっ。似たもの同士なのかも知れませんね」
グレースもアシュラの時を思い出したのか笑いながら進化終了を待っている。
あれ?
そういえば、妲己が特殊進化するのは初ではなかろうか。
って事は五尾妖狐ではない?
俺はてっきりそのまま九尾まで進化するものだと思ってたんだが。
えーっ、特殊進化してくれるのは喜ばしい事なんだけど、九尾になって欲しかった気持ちもありましてね…。
なんだか複雑な心境です、はい。
逆にこっからどういう進化するつもりで?
全く想像がつかないんだけど、もふもふの維持だけはお願いしたいです。
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