第61話 想像以上の強さ


 『天邪鬼 (眷属)

  名前  アシュラ

  【魔物能力】

  鉄の胃袋

  剛力

  剛化

  戦闘学習     』



 天邪鬼? 前世では言う事を聞かない子供の事をそんな感じに言わんかった?

 そんな鬼が本当に存在したのか。

 知らなかった。


 「グガ?」


 意識を取り戻したアシュラは、自分の体の変化に戸惑っている。

 ぽっこりお腹がへこんで、軽く腹筋が割れてる。

 身長も20cmぐらい伸びて、170cmはあるだろう。


 因みに服はちゃんと着ているぞ?

 迷宮都市に到着するまでは、布切れを巻いただけだったが、それからちゃんと購入している。


 「あの、ぷよぷよお腹が無くなったのは悲しいな。気持ちよかったのに」


 「気持ち良かったのは否定しませんが、やっぱり太っているのは好きになれません。私は良い変化だと思いますね」


 グレースさんはデブが嫌いみたいです。

 俺は太らないと思うけど気を付けよう。

 ごく稀に肉を食べる事はあるけど、ほとんど血しか摂取してないからな。

 太る心配はないだろうけど。


 「で、戦闘学習。これずるくない? 異能じゃないのが不思議なんだけど?」


 「そうですね。私が欲しいくらいです。人間に覚えられないんでしょうか?」


 「どうだろね。どうやって覚えたらいいのやら」


 戦闘学習とは、戦えば戦うほど、戦闘に関する動きが最適化される。また、人が戦ってる所を観察すると、それを学んで自分にフィードバックする事も出来る。

 主人公が持ってそうなチートじゃんね。

 俺の【魔眼】もズルい能力だと思うけど、戦闘に関してはこっちの方がよっぽどズルい。


 「グガギャ!」


 「キュンキュン!」


 そんな羨ましい能力を手にしたアシュラは、妲己に自分の進化した姿を見せびらかしている。

 いつの間にボディービルダーみたいなポージングを覚えたんですかね。


 「ってか、あれだな。俺、能力の数が追いつかれたな」


 妲己には、スタンピードが終わった時に追いつかれてたんだけど。

 これでアシュラにも追いつかれた訳だ。

 進化の回数は多分俺の方が1回多い。

 出会う前に進化してたら話は別だけど。

 でも、【吸血】と【貯血】が合体して、【血液魔法】になったからな。

 なんか損した気分。


 「魔物は人間と違って進化の時にしか能力を覚えないんですかね? ステータスなんて今まで無かったので、人間がどうやって覚えてるかも憶測でしか分かりませんが」


 「いや、人間はもう魔法を除いて、反復練習で確定だと思うぞ。適性の問題で、覚えれるかはそいつ次第だろうけど」


 だってグレースさんは新しいスキルが増えてますし。

 割と早い段階で、教術ってスキルが生えていた。

 俺とアシュラに武術を教えてたからだろう。


 後、剣術のレベルが10になるとスキルが変化して剣豪術ってスキルになっていた。

 剣豪ってスキルなの? 職業的なのじゃないの? とは思いましたね、はい。


 何故か性技ってスキルも生えてたね。

 なんでだろう。原因はさっぱりわからない。

 しかももうレベルが4もある。

 不思議だね。


 「そういえば、魔法書も落ちるんだったな。低確率らしいけど」


 「そうですね。戦略物資にもなりますし。大国がダンジョンを確保しようとする理由の一つでもあります」


 人種はダンジョンでボスが偶にドロップする魔法書を読む事でしか魔法を覚える事が出来ない。

 適性がなかったら読んでも覚える事が出来ず、覚えれてもその魔法書は消滅する。

 かなり不便だなと思うけど、魔物も進化でしか覚えれないからどっこいどっこいか。

 因みに、魔物は魔法書を読んでも意味がない。


 「まぁ、俺達が手に入れても、今の所グレースにしか使い道が無さそうだよな」


 「そうですが、私もレト様の眷属になったので使えるかどうか。半分は魔物らしいので」


 「うーん。ステータス表記は人間だし大丈夫だと思うけどな」


 「まあ、騎士団時代に四属性の魔法書は読んだ事ありますが。土と風の適性は私には無かったみたいです」


 「流石将来を期待されてた団長さんだな。貴重な魔法書を読まして貰えてたんだ」


 ドロップする魔法書は、ほとんど四大属性らしい。

 たたでさえ落ちない魔法書の更にレアドロップで、希少属性がある。

 雷とか氷とか回復とか。

 グレースも見た事はないらしいが。

 適性のある人間もかなり少ないらしい。


 「ま、そういうのはドロップしてから考えるか。明日はアシュラの試運転だな」





 「ゴギャラー!!」


 うむ。脳筋。

 脳筋だけど【戦闘学習】のお陰か、動きがどんどん流麗になっていく。

 綺麗な脳筋。効率脳筋。

 ちょっと訳分かんないですね。


 「ゴギャッ!」


 進化前までは苦戦していた上位種もしっかり倒せてるし、複数相手でもなんとかなっている。

 これも回数を重ねていけば余裕になるのだろう。


 「キュンキューン!」


 妲己もアシュラに負けじと、二つの魔法を駆使して戦えている。

 【超念力】を使えばもっと楽になるだろう。


 「よーし。この階層はもう良いだろう。もう少し階層を上げてギリギリの戦いをしに行こうか。経験値は美味しいけど成長に繋がらない」


 「私も賛成です。アシュラを見て、魔物が一回進化するとかなり強くなる事は分かりましたが、スキルや戦いの練度を上げるには楽な相手ばかりではいけません」


 俺もここまで強くなるとは思ってなかったよね。

 もしかしたら、妲己も俺も本来持ってるポテンシャルをまだまだ活かしきれてないのかもしれない。

 アシュラの進化のお陰で、魔物の進化の重要性は改めて理解出来た。

 俺と妲己も学びつつ進化を目指そう。


 でも、ゴブリンとかオークの上位種は進化してるのにそんなに強く感じないんだよな。

 特殊進化する事が重要なのかな。

 なんで、特殊進化するのか。

 理由は全く分かってないけどね。

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