第4話 死闘


 やばいやばいやばいやばい。

 現在大ピンチである。


 あれから、単独ゴブリンを2体倒して順調だったのだが、また単独ゴブリンをみつけて【超音波】をぶっ放したところでゴブリンが3体新たに合流しやがった。


 警戒を怠ったぜー。

 超音波光線をぶっ放しながら、【超音波】で周囲を索敵するのは練習中だがまだ出来ないんだよー!

 バレないだろうと思って攻撃を続けたのがよくなかった。攻撃されていないゴブリンが俺を見つけて、石を投げてくる。


 そんな事されると攻撃を止めて回避せざるを得ない訳で。

 現在4体に石を投げ続けられてる状態でございます。


 くそー! どうしたらいい?

 このままだとジリ貧だぞ。

 更にゴブリンが増えたりしたら終わりである。

 俺は避けながら少しずつ超音波光線を当て続ける。


 20分後。


 「キキキッ!」 (まず一体!)


 「ギャギャ!?」


 ひたすら避けながら一体に光線を当て続けようやく仕留める。ゴブリンは急に仲間が倒れてびっくりしてる様子だ。


 「キキッ!」 (痛いっ!)


 一体倒して油断してしまったか、翼に石がぶつかって落下しそうになる。

 なんとか体勢を立て直し、再び浮上。

 蝙蝠に体力があるのかわからんが、たいぶ疲れてきた。

 だが、後3匹も残っている。頑張らねば!




 「キキッー」 (疲れたー)


 一体目を倒してから1時間ぐらい経っただろうか。ようやく最後の一体も倒してゴブリンの死体の上に着地する。


 「キキッキキー」 (器も結構貯まったなー)


 イレギュラーな事があったものの、結果オーライである。後3.4体でまた進化するのではなかろうか? 器が貯まったら勝手に進化すると思ってるけどするよね?


 俺は【吸血】をゴブリンの死体に使いながら、【超音波】で辺りを警戒する。

 これも練習で同時に使える様に訓練したのだ。マルチタスクとかそっち系の能力手に入らんかね。


 そういえば、ゴブリンはどんな能力を持ってるんだろうか。それっぽい事をされたことないけど。

 流石に俺だけが使えるなんて都合の良い事なんてないだろうし、魔物は持ってると仮定した方がいいだろう。


 そんな事を考えながら、最後の一体に【吸血】を使おうとすると、【超音波】に単独の反応があった。勿体ないけど、ここは隠れるべきかな。さっきの戦いで結構疲れてるし。


 俺は天井に移動し、影になってる所に隠れる。

 ゴブリンは馬鹿っぽいのでこれで大体バレないのだ。


すると、何かの波動みたいな物が俺の体を通り抜けた様な気がした。


 「キキッ?」 (なんだ?)


 俺は何をされたのか分からないまま隠れ続ける。

 するとまた、波動が通り抜け首を傾げる。

 なんか、攻撃されてるのか?特に体に異常は無いと思うんだが。

 そんな事を思っていると目の前に火の玉が現れた。


 「ギキキッ!」 (あっつ!)


 俺は即座に落下し、被害を最小限に抑えたつもりだがよくみたら翼が焦げている。


 「キキキキッ!?」 (何だ今のは!?)


 俺は火の玉が飛んできた方を見ると、見るからに魔法使いですといった風貌のゴブリンがいた。


 魔法? そうか!

 そりゃ、異世界だもんな。魔法がある世界の可能性もあったか。


 って事は最初の波動は探知的な事されてたのか?

 ちょっと不可思議な能力があったせいで、舞い上がって魔法の事なんて頭に無かったな。


 初めて見るゴブリンだけど、普通のゴブリンよりは強いんだろうな。魔法使ってるのなんて初めて見たし。


 俺は、とりあえず【超音波】を使って羽ばたこうとする。

 ………飛べなーい! 飛べない! 飛べない!

 焦げた方の翼が上手く動かない!

 えぇ。移動手段が一歩で10cmぐらいしかない小さい足しかないんだが。


 仮称ゴブリン・マジシャンさんも同族が殺されたからか、かなりお冠のご様子。

 こっちに杖を向けてなにかぶつぶつ言ってるし。

 とりあえず移動! 少しでもいいから移動!


 俺は【超音波】を当てつつも逃げる。数秒後、さっきまでいた場所に火の玉が飛んで来る。

 あっぶねー! あんなの喰らったら丸焦げじゃん! 【超音波】早く効いてくれー!


 俺はそれから逃げ回ると言うより転げ回りつつ、能力を行使し続ける。何分経ったかわからないが、ようやくフラフラし始めたゴブリン・マジシャン。

 俺はチャンスとばかりに飛び付き【吸血】も使う。


 「キキキキッ!」 (うみゃー!)


 脳が蕩ける程の美味。危うく戦ってる事を忘れる所だった。

 それからすぐ、ノーマルゴブリン以上の経験値が器に流れ込み戦闘が終わった事を知った。


 「キキキキッ!」 (余韻に浸りたいけど、さっさと飲み切って離れよう!)


 俺は味わいたい気持ちをグッと堪え、急いでその場を後にした。

 まぁ、飛べないから全然進まないんだけどね。トテトテと歩いてる蝙蝠。

 側から見ると可愛いんじゃないかな。

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