第74話.コラボ配信 5

「あ? 何の音だ? お前の方から足音聞こえてねえか?」

「えぇ、してますよ」

「おいおい、このタイミングで親にでも身バレしたのかぁ?」

「親に身バレもなにも、もう言ってますし……。まぁいいでしょう。それでは、挨拶をお願いします!」

「……皆さんどうも! VTuberを引退させるよう強要させられていたみずなです」

「はっ……?」


 配信越しに椅子が倒れる音がする。おそらく、勢いよく立ち上がって倒れたんだろうね。そりゃ、事情を知らなかったら僕でもそうするし。


 だってこの話が本当なら、今隣にいるみずなが別人ってことになるしね。


 それに、実の父親ならこっちのみずなが本物って気づけるだろうね。


「ッ……! お前は誰だ!?」

「はっはー! 聞かれたのならしょうがない。ここで答えるというのが礼儀だろう! 俺はみずなの味方、きゅいあ様だッ!」

「て、てめ……ッ! 変装までしやがって……ッ!」

「おーっと! 頭に血が上りすぎて気づいてないみてーだけどよ、両手はもう拘束済みだぜ?」

「あ……? なんだこれ!?」

「いやぁ、うちにはネッタークイーンなんていう人がいてなぁ? 手首に向かって投げるだけでなんと拘束してくれる優れもの!」

「んなもん犯罪になるだろ?!」

「残念ながら公認していただきましてねぇ? あ、こっちにもぽいっと」


 多分足も拘束したのだろう。


 もちろん最上さんに頼みました。僕らが行くと身バレになっちゃうしね。


「は?! なんで警察公認なんだよ!! ってか、そもそもお前不法侵入になるだろ?!」

「だーかーらー! 警察公認だって! ほら、この閉じきったカーテン開けてみろ。もうパトカーも到着してるぜ? あ、拘束してるから開けれないのか!」

「こいつ……ッ!」


 ここに至った流れを少し整理するか。


 まずはみずな──彩良を保護。そしてそのまま交番へゴー! あざだらけの彩良を見た警察の人はすぐに病院に連れて行ってくれる。


 すると、そこで外部からの暴行によるものだと判明する。あとは簡単なことだね。学校に行ってなくて、家には父親しかいない。令状はすぐだった。


「けどそれがどうしたんだ?! 証拠がないじゃねえか!」

「だから、さっきも言ったじゃないですか。証拠はありすぎて困ってるって。ご主人様たち、これからはちょっと酷い音声が流れるので聞きたくない方は30秒ほど音を消していただけると幸いです」


 そう勧告してから、あのシーン──例のDV疑惑の音声を再生する。


「おい、おいおいおいおいッ! なんなんだよそれは?! どうせどっかから拾ってきたものなんだろう?!」

「それはこのあと行われるであろう家宅捜索時に、盗聴器が見つかりますのでご安心を。盗聴器についても警察の方々に既に説明済みですからね」

「え……な、なら、もう俺は……?!」


 つまり、これで──。


「「チェックメイト、ですだな」」

「くっそおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……………!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る