第7話.天使との会話 3

「ほら凪! 早く行くぞ!」

「いや行くけどさぁ……ほんとになんで僕たちなんだろうなって」

「そんなこと俺に聞かれても知らん! もう諦めてさっさと行くぞ!」


 放課後になり、みんなが階段を下っていく中、僕と祐希は屋上に行くために階段を上がっていた。当然、天使との約束があるからだ。


 授業中もずっと考えてたけど、ほんとに呼ばれた理由がわからない……。だって、そもそも天使と話したこともないんだよ?


 頭の中で自問自答していると、気がついたときには屋上の扉の前についていた。


 そうか、分かったぞ! これは夢なんだな! うん、そうじゃないと辻褄が合わないからな!


「言っておくけど、夢オチじゃないからな?」


 祐希にすぐに否定された……。


 まだ夢の可能性も少しは持ちながら、ゆっくりと屋上へ続く扉を開けると──。


 ──天使がいた。


 藍沢さんのあだ名の天使じゃなくて、言葉通り天使がいた。


 屋上の柵に腕をのせ下を眺める姿は、天使以外のなにものでもないくらい可愛らし……いや、美しかった。


「あら、来てくれなかったらどうしようかと思いましたよ」


 僕らが来たことに気づいた天使、改め藍沢さんは。そう言って微笑んだ。1億点の笑顔すらゆうに超える微笑みだった。


「流石に約束は破らないって。天使との約束なんだから」

「……天使はやめてください。私は天使なんかじゃないですって……」


 僕が答えられないことに気がついたからか、祐希が答えてくれる。


 天使ってあだ名は非公認だったんだね。というか、好き好んで天使って呼ばれたい人なんてそうそういないか。


「それで、俺たちになんか用か? 言っちゃ何だが、俺たちを呼ぶほどのものって、マジで想像できないんだが……」


 僕はまだ喋るのは怖いので、祐希の言葉に同意を示すために頷く。


「えーっと……これから言うことは誰にも言わないでほしいのですけど……」


 藍沢さんは、少し恥じらう姿を見せながら、そう前置きをしてから言った。




「だ、誰推しですか……?」




「「はい!?」」










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