第6話.天使との会話 2

「すいません、凪くんと祐希くん、ですよね?」




「「え?」」


 え? ちょっ……え?


 僕と祐希は扉付近で同じように固まってしまった。


 まぁそれも無理はないと思うんだよね。


 藍沢あいざわみのり。僕らと同じ高校1年生にして、この高崎高校1の美人と呼ばれている人。優しい性格もあり、生徒だけでなく先生からも好かれている生徒だ。このようなことから、誰が呼び出したのか、天使、というあだ名がつけられた。


 こんな大層なあだ名なのに、これに負けてないってのがすごいよね。


 って、そうじゃなくて! そんな人が僕達を呼んだ……よね?


 えぇ……陰キャ検定1級(自称)の僕には返事すらできないだけど……。


「え、えっと、藍沢さんどうかしたか? すまんが凪は陰k……人見知りだから全部俺が答えるけど……」


 僕が困っていると、祐希が合ってるけど失礼なことを言いかけつつ、かわりに答えてくれる


 ……陰キャなのは自分でも認めてるけど、あんま藍沢さんの前で言わないでほしかったなぁ。


 あと、さすが祐希。急に天使に話しかけたれたし、多分初対面なのに、ため口で話せるとかさすが陽キャだね。僕には到底できない行為だよ。


「天使様だ……」「朝からどうしたんだろう?」「それよりなんであいつらなの……?」「まだ祐希は分かるとして、なんで吉村も……?」「いいなぁ……」「え、吉村くんって天使と関わりがあったの?」


 この学校の天使が話しかけてるのが僕と祐希だから、余計に注目を浴びる。


 うぅ……一刻も早くこの場から逃げたい……。


「あ、あの! 放課後じゃ、だ、だめですか?」


 逃げたい一心で、僕は天使に話しかける。多分、この後の僕はこの判断を褒めてくれるだろう。


「? 別に大丈夫ですけど…」


 藍沢さんはよくわかってないような様子だったけど、それでも了承してくれる。この人、もしかして自分が天使って呼ばれてることに気づいてないんじゃないのかな? とも一瞬思ったけど、焦りと混乱のほうが強くてすぐに頭から離れる。


「あぁ、そういうことね。すまないな、こいつ注目されるのに慣れてなくてな」


 祐希は僕のあの1言で察してくれ、合わせてくれる。しかも、注目されるのに慣れていないというオブラートに包むことまでしてくれる。


「あぁ、なるほど。それはこちらこそごめんなさい。自分のことしか考えずに行動してましたね」

「い、いえ! こちらこそごめんなさい!」


「では、放課後に人目のつかない屋上で待ってますね」


 そう言い残して、藍沢さんは集まっている人の間を抜けて、自分の教室に帰っていった。


 ……とりあえず、僕も教室の中に逃げておく。




 ──このあと僕は授業に集中出来なかったが、久しぶりに居眠りもしなかった。










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