第12話:ホリィ・ローテーション
真っ暗な部屋で淡々と刀を打ち続けるアマツさん。
ただのおっさんだったあの人が今こうして見ると凄い気迫がある。
緊張感がこっちにまでひしひしと伝わってくる。なんて言ってる場合じゃない。
いつ来るかわかんねぇんだ犯人は。作戦のおさらいだな。
俺とミラさんがアマツさんを直接護衛。俺の魔法障壁と、ミラさんの結界。
ミラさんの結界は俺でも再現出来んレベルには高度だ。で、
外からユルリカちゃんが見張って、タチバナが遠距離からスコープで狙うとさ。
...アマツが刀を打ち始めてから数十分。鍛冶場とは別の緊張感がほとばしる。
異様な空気だ。
ユルリカ
(...!?来たかもです!)
ユルリカちゃんからの念話だ。
ユルリカ
(非ニホニア人と見られる緑髪の少女を発見しました!
恐らく私が聞いた少女だと思います。)
タチバナ
(ん〜と...いたいた。俺も見つけたよ。)
ユルリカ
(なんだろう?祈り?をし始めました。)
俺
(祈り?)
タチバナ
(言われてみれば祈ってるようにも見えるな。撃つか?)
タチバナめ、難問えお押し付けやがって。
...その少女が犯人だと決まったわけじゃない。
だが現状一番怪しいのはその娘であるわけで。
もし本当に犯人なら今の内に手を打たなくては。危険因子は早々に摘んでおかねば。
俺
(死なない程度に頼む。無理だったら俺がやる。)
タチバナ
(わかった。)
言われた通り麻酔弾を撃とうとしたタチバナ。だが...
タチバナ
(あの少女(ガキ)こっちを見た!?数百m離れてんだぞ!?)
緑髪の少女
「...裁け」
彼女がそう言うと鍛冶場とタチバナの上に上空が光る。
俺
(躱せ!!!!!!!)
すると東京タワー程の光の柱がタチバナの元と鍛冶場に刺さる。
音もなく屋根を貫き光が襲いかかる。
俺
(...!?よく見ると地面も貫通して地下数百mまで穴が開いてやがる。
どんな威力だよ!マジで!でも制作中の刀は無事っぽいな。流石の硬さか。
こっちは事前に張っていおいた障壁と結界でギリギリ時間を稼いで躱せた。
どうやらアマツさんも無事っぽいな。それと、
タチバナ、お前無事か!?)
タチバナ
(わりぃ、ちょっと掠った。お前の忠告がなきゃ即死だったな。
今の俺じゃあ、歩けそうに無い。)
緑髪の少女
「両者とも生きているのですか?一思いに殺れたと思いましたが。」
ユルリカ
(あれは...!?)
俺らは目を見張った。少女の後ろには3m程の宙に浮いた人(?)がいる。
薄汚れた白い装束を着ていて顔は見えない。
緑髪の少女
「貴方達は?わざわざ殺されに来たのですか?」
俺
「殺されに来る馬鹿がどこにいんだよ。」
緑髪の少女
「私を探して何の意味があるのです?」
俺
「刀が欲しい。」
アマツ
「それだけかよ!」
緑髪の少女
「無理な相談です。魔王様より技術者は抹殺するように命じられております故、
そう易々と刀を打たせるわけには行かないのです。」
俺
「魔王様?」
ホリィ
「申し遅れました。あたしの名前はホリィ、魔王秘書です。」
俺
「魔王秘書ねぇ?こちとら幹部倒してんだわ。」
ホリィ
「おや、テドロ様を殺ったのは貴方達でしたか。
となると、あなたがキリヤマとか言う冒険者ですか?」
俺
「自己紹介の必要は無いみたいだな。」
なんだろう、コイツ、子供が無理して敬語使ってる気味悪さがあるな。
それでいて何故か気品があって...そして何より"悍ましい"。
しかしコイツの魔法、威力が防御力無視過ぎる。
正確にはコイツというよりも、後ろの"何か"、だが。
俺
「後ろのでっかい人形(?)は何なの?それが魔法を出してるのか?」
ホリィ
「これはアタシが使役している最上位悪魔、"太陽の悪魔"です。
日中は光を蓄積し、いつでも光線が放てます。」
俺
「説明してくれないと思ってたんだが...ご丁寧にどうも。」
太陽の悪魔か...聞いたこともねえ何だそりゃ。チ○ンソーマンの強キャラかよ。
しかも日中の光を蓄積って、この世界の昼は長いから相当溜まってんだろうなぁ。
取り敢えず今やることは...
・アマツとタチバナの身の安全の確保
・コイツの実力測定
こんなとこか・・・。にしても人が足りん。
視力105倍にして見てみたが、タチバナは左の太ももの大部分が削られてる。
アイツ、歩けそうに無いどころじゃねぇじゃんか。
ミラさんになんとかしてもらうか?
俺
「ミラさん、アマツさんを逃しつつタチバナのところに行ってやってくれ。
コイツは俺とユルリカちゃんでなんとかする。」
ミラ
「りょです!」
ミラは杖を抱えタチバナの元へ走って行く。
ホリィ
「行かせませんよ。聖者之裁(アルティメット・ノヴァ)」
ホリィがそう言うと頭上に光が現れる。
俺
(また上から降ってくるやつか?いや違う!
シン・ゴ○ラみたいなビームが上から降ってきてる!?
4~6本位だな。こりゃ躱すことはできても建物への被害は尋常じゃないだろうな。)
キリヤマは持ち前の動体視力と判断力で気付く。水魔法だ!と。
俺
「水盾(ウォーター・シールド)!!!!」
キリヤマの水魔法が街全体を包む。(東京ドーム位の水ドーム)
ついでに空間魔法展開したけど逃げ遅れた人はいないっぽい。
俺
「この水魔法には圧力をかけてるから、より光が分散するんだよ。
お前の弱点は水だなぁ!?」
ホリィ
「果たして本当にそうでしょうか?」
俺
「熱っ!?」
ユルリカ
「痛いっ!まっ街が!」
街が燃えてる!?
ホリィ
「どうやらアタシの光線が拡散された熱エネルギーが、
あなたの魔法で街に密閉されてしまってるようですね。」
ホリィは静かに微笑んだ。
ユルリカ「冷波!」
冷気の風を送り、消火と水ドーム内の温度を下げるユルリカ。
俺
「ユルリカちゃんだけに頑張らせるわけには行かないっしょ!
氷盾(アイスシールド)!!」
キリヤマは水盾の中に氷の層を張った。
熱エネルギーを氷の盾によって防いで街の温度はどんどん下がる。
そしてユルリカちゃんの冷波により、街への被害は最小限に済んだ。と思う。
テドロよかよっぽど強いなコイツ。というよりこの悪魔か。
ホリィ
「攻撃を続けます。無慈悲成太陽之裁(ウルティメイト・サン)」
ホリィがそう言うと、
悪魔の周りにバスケットボール位の大きさの太陽(?)の球が4~5個現れた。
てっきりレーザー系の攻撃だけかと思ってたからちょっと拍子抜けだ。
しかしあの球から溢れ出る魔力すげえな。俺ですらビビるレベルだぞ。
ユルリカちゃんは大丈夫か?
キリヤマはユルリカの方をちらっと見た。
ユルリカは冷や汗をかきながらも目線はしっかりホリィを捉え続けていた。
俺
(あの魔力に当てられて怖いだろうに。本当に強い子だな。
ってマズい!チラ見してたら攻撃してきてんじゃねえか!
あの球一個でどの程度の威力か見極めねぇとな。
適応能力で今後この技に対応するためにも!
なるべくユルリカちゃんから離れて障壁でも張るか。)
高速で追いかけてくる熱球を、キリヤマは後ろに逃げて障壁を張る。
すると魔法障壁と球がぶつかり合った瞬間...
ジュワァアァアアァァ...
魔法障壁が溶け出した。
ホリィ
「この魔法の前ではありとあらゆる物が溶けますよ?」
キリヤマ
「まじか...それじゃあ街に被害出させないために、空中戦に移行するしかねえか?
でも恐らくアイツの弱点は近接攻撃だ。
俺が離れると近接攻撃ができるやつが一人もいなくなるぞ...
しかもこの球5つもある...
一つでもユルリカちゃんに向けさせるわけには行かない。
もう全部俺に向けさせて逃げるしか...」
バァン...!!!バババババ!!!!
辺りに銃声が鳴り響く。
タチバナ
「その必要は無ぇぜ!」
ドドドドォォオオォォオオォオ!!!!!!!
そうタチバナが言い放つと、炎の球が爆散した。
タチバナ
「っしゃ!見たか俺のエイム力!」
俺
「お前もう大丈夫なのか!?」
タチバナ
「ミラのおかげでな。」
ミラ
「見ましたかぁ!これが新生パーティの実力ですよぉ!
大層な魔力と契約した悪魔が居ようとその程度ですねぇ!」
俺
「あんま煽んなよ。」
ホリィ
「フフッ、いいでしょう、本気で殺ります。
裁け、聖成神之断罪群(ホーリー・スパークス)!!!!!!」
これは...!
俺らに「裁け...」とか言って奇襲かけたやつの比じゃない量の柱!?
どんだけ魔力あんだよコイツ!生物かマジで!?
しかも発生源が空の上じゃなくて結界内じゃねぇか!!
どうする!?
ユルリカ
「ミラーウェイブ!!」
ユルリカが唱えると、光の柱が曲がり、結界の外へ飛ぶ。
俺
「凄いねユルリカちゃん!」
ユルリカ
「私、光の魔法使いなので!」
俺
「可愛いぃぃぃぃぃ!!!!!!!!いつ思いついたのそんな魔法?」
ユルリカ
「今です!」
俺
「今!?」
俺はいろんな漫画とかから着想を得て技を自己解釈で生み出してるけど、
そういう情報無しでこういう魔法生み出すユルリカちゃんも、
もしかしたら相当ハイセンスな魔法使いなのでは?
ミラ
「虹結界(オーロラ・フィールド)。」
ミラが唱えると、キリヤマのドーム内にオーロラが浮かび上がった。
そのオーロラはありとあらゆる光を曲げ、ホリィの魔法を弱める。
ミラ
「これであなたの光は弱体化されましたよぉ?」
ホリィ
「チッ!こんなはずじゃないのに!」
戦況はキリヤマは一行に傾く。
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