第二章:激動の一日編

第7話:酸毒の幹部テドロ

魔王軍幹部である(???)はリトナード州へと足を運んでいた。

理由は簡単である。


???

「レア個体の山鮫と上位種の魔獣王族が、

 転生したてのポット出冒険者に倒されたという情報を聞きつけて、

 偵察しにここまで来たが...街に入るのは少々危険だな。

 入り口付近で身を潜めておくか...ん?あの女、俺に気付いているのか!?」


不運にもその女とは実家に帰省しようとしていたユルリカであった。

ユルリカは、???に潜む膨大な魔力を察知し、???を見てしまった。


???

「危険因子は早急に"溶かす"!!!!

酸暴喰(サンイーター)!!!!!!!!!!!!!」


ユルリカは咄嗟に魔法障壁を張った


???

「無駄だぜぇ、女ぁ!俺の毒(酸)は魔法をも溶かす!!!」


ユルリカが死を覚悟したその時ー


キリヤマ

「人様の女に手ぇ出してんじゃねえよ、コロすぞ」


間一髪でキリヤマはユルリカを助けた。お姫様抱っこでね。

...が、キリヤマの顔の左半分はほぼ溶けていた。


ユルリカ

「キリヤマさん!!!!!」


ユルリカを下ろすとキリヤマは、殴って溶けかけていた左半分の顔を飛ばした。


テドロ

「はははは!!!!!気が狂ったか!ん?もしやお前が例の新米転生者か?

 魔獣王族と山鮫の上位種を単騎討伐したと聞いたがガッカリだ。

 だって俺の技でお前は死が確定しているのだからな!フフフ、

 冥土の土産に俺の名を教えてやろう!我が名はテドロ!

 魔王軍の幹部が一人である!

 この俺が直々に手を下してやったことを誇りに思いながら死ね!

 ってあ"ぁ"あ"ん"!?」


「お前のくだらない演説してる間にこっちは治ったぞ。」

 (だがおかしい。左目だけ治らねぇ。どういうことだ?)


ユルリカ

「左目は?左目はどうしたんですか!?」

 (能力だと思うけどキリヤマ様は異常な再生能力を持っているのは確か!

 なのになぜ左目が無いの!?)


テドロ

「フン、いくら再生能力があろうともぉ?我が毒で貴様の左目は消滅したのだ。

 消滅した物は二度と戻ることはない!」


(一種の天敵か。こりゃガチで油断禁物だな。)

「俺のことはいいから逃げて。君に怪我をさせたくないんだ。」


ユルリカ

「嫌です!昨日約束したばかりじゃないですか!

 一人だけで戦うのも戦われるのも嫌なんです!」


俺「... わかった。でも、俺こいつから君を守りきれる自信は、

 正直言ってあんま無い。自分の身は自分で守ってね。」


ユルリカ

「はい!」


ユルリカちゃんは嬉しそうに笑って答えた。

俺はこの子がこういうところで弱音を吐く子じゃないことを知っている。

ま、だから好きになったし、信頼もしてんだけどね。


ユルリカ

(私が弱いから過保護にするとばかり思ってましたが...

この人はしっかり私のことを見てくれている...)


テドロ

「たらたら喋ってんじゃねーよ!!!!」


かめ○め波ばりの毒がこちらに飛んでくる。だが対策はすぐに思いつく。


「魔法障壁からの土流壁!!!」


ジュゥウウゥウウウウ...


俺「毒の質量を超えるもので対策すれば攻略は容易いもんだ。」


そこで出来た隙をユルリカが攻撃をする。


ユルリカ「光槍(スパーキングスピア)!!!!」


ユルリカちゃんが本格的に戦うのは初めて見たが魔法操作は見事である。

が、やつは体術にも優れていたようで躱された。あのまま当たって死ねばいいのに。しっかし、かなり手強い敵だな。さて、

毒の対策はできたもののどうやって攻撃を食らわせてやろうか。


その後、魔法を撃っては躱され、撃たれては躱しを小一時間ほど繰り返した。

デカい魔法でも打ちたいのだが俺の智力を持っても隙がない。

空間魔法で敵の重力を重くしようにも空間魔法の空間内からすぐ逃げられる。

広くしても範囲内にユルリカちゃんが入ってしまう。

まあ魔法の撃ち合いと言っても、具体的に言えばお互い、

ちょっとずつ掠ってはいた。でもこっちは敢えて掠っている。言い訳じゃないぞ!

耐久力と適応力と免疫力の増強によりテドロの様々な毒に抗体を造っていたのだよ。

今なら無理やりにでも近接で崩せるかもな。


と思った矢先ー。


ユルリカ

「コホッ!コホッ!あ...ぁ...」


目をやるとユルリカは吐血しながら倒れていた。


「大丈夫かいユルリカちゃん!!!!!!」


テドロ

「フフフッ、バカめ!!今気づいても遅いわ!この一時間、

 ただ魔法を打ち続けていただけだと思ったか!

 この平原並みの空間魔法内に微量の毒ガスを放出させ続けてたんだよ!

 お前には効かなくともその女くらいすぐに殺せる!

 テメェの弱点はお前が惚れているであろうその女だ!」


クソ!やっちまった!!俺には回復魔法は使えない!

早急にこいつを倒してユルリカちゃんを治さなくては!

俺は抵抗力と適応力を上げすぎたせいで気付けなかった!注意力を上げていれば...


ユルリカ

「ごめんなさい...私が...出しゃばった...ばっかりに...」


「いいんだ。俺が気付けなかったのが悪い。

 それより今は空間魔法内から出て深呼吸。出来る?」


ユルリカ「はい。...」


匍匐前進で空間魔法内から出ようとするユルリカ。


テドロ

「行かせるかぁ!!!!酸槍(アザスピア)!!!!!!!」


「お前は絶対に殺す。」


キリヤマは怒り狂いそうになる気持ちを抑え、

その身を持ってユルリカちゃんの身代わりになった。


テドロ

「なぜ効かん!?」


「怒り。」


抗体を造ったことがバレると不都合なので嘘を付く。


テドロ

「嘘つけぇ!!」


バレた。


テドロ

「さては転生者のことだ。能力の一環か何かだろうな。

 既にこの手の毒は撃ったから効かないとかか?」


そこまでバレれてたか。


テドロ

「となると先の打ち合いで大体の毒は使った。じゃあ俺の切り札の、

 あの毒を使うしか無いか。ンフフフフ、ハハハハハ、ドゥイーッヒッヒ!」


俺「きっしょいな...とっとと型つけんぞ。」


テドロ

「フフ、なあ、知ってるか?まだ撃ってない、

 液体かつ金属の力も持ち合わせる毒ぅ!」


「水銀か...?」

(確かに毒だがそれアリなのか...?)


テドロ

「なぁぜわかる!!?まあいい!

 鉄の質量の毒滝!!!落水銀(フォール・ロギラム)!!!!!」


これはマズい!でも待て。でもこれは酸ではないから障壁は溶かされない!


俺「まほうーしょーへき!!!!」


俺はバリアを上に張った。しかし、かなりの魔力を込めたはずの障壁が、

あまりの質量に障壁ごと押し潰された。

って言うより俺が地面に埋まっただけなんだけどね。

しかし幸いにも障壁が蓋の役割を果たし、水銀が直接俺に当たることはなかった。

そのせいで水銀の適応はできないけど今はそれが救いだ。


テドロ

「ハハハハ!!!やったか!」


「重っ!!!ようやく地面から抜け出せた。地面なんて埋まるもんじゃないな。」


テドロ

「チッ、生きてたか。」


「ってそんな事はいいんだ。なぁテドロ。一つ提案がある。」


テドロ

「何だ?」


「お互いに一番強い技出し合って決着つけようぜ。

 このままノコノコやってても時間の無駄だ。」


テドロ

「フフフ、乗った!」


よし来た。馬鹿め。俺には新しい必殺技があんだよ。


テドロ

「纏え!水銀之鎧(ヒドロアーマー)!!!!!!!!」


テドロは銀の鎧を身に纏う。正直鎧はかっこいい。光沢がまた...イイ!


テドロ

「死ね!神之銀拳(アガート・ラーム)!!!!!!!!!!!」


テドロの腕は水銀にを纏い巨大化する...

(最後に近接で来るか...俺の新しい必殺技というのはごく単純なものである。)

「超新星爆発(スーパー・ノヴァ)!!!!!」


ドォォォオオオオォォォオオォォン!!!!!!!!!!!!!!


平原どころでは収まらず街にまで轟音が響く。

...この必殺技は平原を一瞬で更地にする程度の威力はある。

炎魔法に水素に引力なり重力なり圧力なり火力をかけると恒星の元が生まれる。

ここらへんは作者の知識が雑なので見逃せ。それは置いといて、

保存魔法を可逆化して魔質1000倍で行うことで、この魔法は一気に時間が進む。

これにより小さな恒星の元は破滅へと向かい始め、超新星爆発を起こす。

ほんとにミニサイズだけどね。これで死んでたらありがたいのだが...


「どうやら耐えたようだな。」


テドロ

「ハァ...ハァ...」


テドロの野郎は血だらけで、立っているのがやっとだろう。

っと殺す前に聞くことがあるんだった。


「なぁ、一個聞くけど、俺がいずれ倒しに行く魔王の情報がほしい。

 知ってること全部吐け。」


テドロ

「少なくとも転生者たる貴様に勝てるわけがないと言っておこう。

 これ以上は死んでも言わん。」


「そうか。」

(俺がこの技を放てば、その後徐々にブラックホールが出来上がっていく。

だが効果範囲は俺の作った空間魔法内に留まる。急いで空間魔法内から逃げる俺。

まあアイツのことなんかよりもずっと気がかりなことがある。

ユルリカちゃんは大丈夫か?本当にそれだけが心配だ。)


心配なので空を飛びユルリカちゃんの安否を確認しに行くキリヤマ。

1分ほど空から探してたら、街の壁にもたれ掛かるユルリカちゃんが見えた。

キリヤマは急いでユルリカを抱えに行った。抱えた後、

飛行機よりも速い速度でギルドへ向かう。空気抵抗は魔法障壁で自分ごと覆えば良い


「誰か!回復魔法を使える人はいませんか!?」


勢いよく扉を開けて叫んだ。すると当然だがギルドにいた冒険者達がこっちを見た。

だが軽蔑した目でこっちを見ている。俺と言うよりユルリカちゃんへ、なのか。


「回復術師はいないですか?お願いします!」


何度もギルドの中の人々に問いかける。が、誰一人まともに取り合ってくれない。

解毒ポーションも試したが効果はない。見るに見かねた受付嬢が話しかけてきた。


受付嬢

「このギルドにその毒を治せる人は、今はいませんよ。

 都市には何人かいるのでしょうが、まともに取り合ってくれるかどうか...」


「ユルリカちゃんがテラルド族だから...ですか?」


受付嬢

「えぇ。その人がテラルド族である以上、

 応対以前に街にすら入れてもらえないかもしれません。

 まあその人は族長であるからもしくは入れるかもですが...

 ともかく都市に行くのは推奨できません。」


「クソッ!じゃあどうしたら...」


受付嬢

「一つだけアテがあります。遥か昔この地に降りた女神の末裔の一族の、

 中でも回復術師でTOP3に入るとも言われるとても心優しき冒険者の人が、

 1ヶ月ほど前に平原を西に行った先のサバサバ砂漠に、

 転生者の人とともに赴きました。」


「そこにユルリカちゃんを治せる人がいるんですか?」


受付嬢「でも、一ヶ月戻ってきていないのであるいは...」


受付嬢が言い終わる前に、キリヤマはユルリカを抱え飛んでいた。

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