第6話:見守りと書いてストーキングと読む
モーリ森なう。そう、魔獣王族(ヤツ)がいると聞き一人で来た。
もちろん、夜に一人でね。夜に一人で来た理由としては、
ユルリカちゃんでも戦闘経験豊富な魔獣王族は倒せないってことと、
(本人から聞いた)一人で行こうとしたら、
ユルリカちゃんに止められたことが挙げられる。
俺の心配をしてくれるユルリカちゃん、本当にええ子なんです。
非があるとすれば全て自分です。だが、勝算は無きにしも非ず。
俺は即死しない限り死にはしないし、
なにせ俺は全属性の基本魔法&スキル全部覚えたからである!更に!
魔法の練習も兼ねて魔物を倒したことによりLv.up!完璧か!?完璧なのか!?
とて、油断は出来ぬ。こういう時は素直に、
強い冒険者たちに任せれば良いと思うんだけどね。でも、
ギルドの姉さんにあんな事を言った手前、もう引き下がることが出来ないのだよ。
プライドだよプライド。ってか夜の森は本当に暗いな。
暗視スキルがないとシンプルに生きていけるかどうか...
まあ視力と適応力上げとけばそんな困んないんですけどねっ!
そんなことを言いながら、モーリ森をズカズカ進む俺。
空から飛んでいったほうが速いんじゃないの?
ってことで、ちゃっかり◯空術を手に入れたので、
弓で打たれることを警戒しつつ空を飛ぶ。
(重力と浮力とその他諸々の風魔法の応用。まだ誰にも見せていない。)
森の中に人影のようなものを発見したので降りてみることに。
降りてみると大怪我した冒険者が倒れている。って鬼級冒険者じゃねぇーか!?
息はあるみたいだ。急がなくては...彼を避難させないと、
いつ襲われるやもわからん。
俺
「大丈夫か?今からお前を安全なとこに...」
冒険者
「助けてくれ。俺の仲間が...皆あの化け物に...殺された!」
吐血をしながら続ける。
冒険者
「あんた、強いんだろ。ギルドであんたを、見かけたんだよ。
なぁ頼むよ彼奴等の敵とっ...」
グサッ
彼の頭に矢が刺さった。俺の胸に冒険者が倒れてきた。
矢が飛んできた方向を見ると、奴がいる。聞いていた色と違う?上位種か?
しかもなぜか、やつの周りは開けていて木がない。空から見た時はあったのだが。
俺
「これがお前らの敵で、良いんだな?」
背中には冒険者が使っていたであろう両手剣が二本と、弓が装備されている。
腰には矢が50本ほどだな。そして軽めの鎧が施されている。対して俺は素手。
もしやつが俺を倒してもヤツは何も得ない。
睨み合っていたら突如奴が雄叫びを上げた。開戦の合図であろうか。
まずはやつの動きを...
ガルム
「グルルオォオオォォオオォオオォオオォオオ!!!!!」
吠えた直後に羽を広げ、ヤツは空を飛ぶ。
ん!?よく見ると、二本の両手剣を持って回転しながら落ちてくる。
リヴ○イ兵長かお前は。
ドゴオオォオォォオオン...!!!
何とかこの攻撃は躱せたが、衝撃波で飛びかけた。
無詠唱にて土の錬成中位魔法"土流壁"を発動。これは躱されたものの、
生えてきた壁を風中位魔法 "暴風息(ウィンドブレス)"にて倒した。
これにはヤツも両手剣で防御していた。
こうしてお互い特にダメージは無いまま、戦いは幕を開けた。
そもそも魔獣王族は一般魔物と呼称していいのかすら謎らしい。
数で言えばアメリカ大陸に10体いるくらいの密集度である。
ゴブリンやスライムなどはうんざりするほどいるというのに。
そして彼らは恐怖の対象であり数も少ないからして、
国内で一体一体名前が付けられる。俺の目の前にいるこいつの名は...
"我流無(ガルム)"
なんと魔獣王族の上位種(最上位ではない)だそうだ。作者が後付だって言ってた。
にしても名前のセンスが中2で止まってやがる!
...とか考えてる余裕はなさそうだな。チッ、魔法を放つ隙がない。
智力もかなり高くしているはずなのに、それでも隙がない。強い。
今まで出会ってきた魔物(言うても10~30体。
中でも山鮫(バクシャーク)が一番の敵だった。)の中でもダントツに強い。
近距離戦で型をつけるのは武器無しの俺には不可能だろうな。しかし何だこいつ。
大剣や矢にまで土付与魔法が施されている。
おまけに矢は奪ったら複製(コピー)出来るので、魔力が付きない限り、
矢がなくなることはない。おまけに再生能力も高い
(加えて上位種なので、元々高い再生能力がより高い)
ので、矢など無限に放てるだろう。しかし、策がないわけではない。
って無策で突っ込む方がヤバいか。
俺の能力は制限付きだから他の生物に影響を及ぼすことは一切ない。と、
思っていたのだが、実はそうでもなかった。物と魔法に能力を付与できるのである。
つまりこれは何を意味するか。空間魔法を使えば空間内の重力を重くしたり、
軽くしたり出来る。そして既に空間魔法は展開済みである。
これに重力と圧力を1000倍にすることにより動きを止める。もちろん、
自分にはリスク無しでね。それでも耐えきるってどんな化け物だよ、ガルムくん。
常人なら即死だぞ。でも動きは鈍化している。
風最上位錬成魔法を撃つチャンスですな。
俺
「"暴天嵐(カタストロフ)"」
戦場(空間魔法の範囲内)は更地と化した。
ガルム
「グアァァアアァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
俺
「相当悶ているようだな。そりゃそうだ風圧も"圧力"で強化されてんだから。
おまけに弱点属性。これで生きてるわけ...なんてフラグを立てたりしてな。」
やつの姿がない。後ろか!?気付いたときには遅かった。
魔法障壁を張っていたが、障壁ごとぶっ飛ばされた。
森から街の壁の近くまで吹き飛んだだろうか。骨が何本も逝ってやがる。
その上、無数の矢を時間差で放ちながららこっち来てやがる。容赦ねえなマジで。
まあでも森からこれだけ離れていれば大丈夫か。
森を燃やしたくなくて温存してた魔法、使うなら今だ。俺は空を飛び、構えた。
俺「土錬成魔法、岩盤の防壁」
俺はガルムを拘束した。お互い逃げ道は無い、行くぞ。
土魔法に炎魔法を纏わせ、一度空高く舞い上げてから重力をかけ合わせた技。
俺「烙炎」
その日、その場所にだけ隕石が降り注いだ。
それからちょっとした頃には既に夜は明けていて、
街の壁の門から人が行き交い始めている。地面に降りてみると、
ユルリカちゃんが走ってこっちに向かって来た。
朝焼けとユルリカがいい感じにマッチしていて可愛い通り越して美しい。
国宝通り越して世界遺産なのでは?
ユルリカ
「突然大きな音がしたので来てみたのですが、何かあったのですか?」
俺は黙ってガルムくんの死体があるであろう方向へ歩を進める。
ユルリカ
「キリヤマさん?」
俺
「それは、こいつを倒した時の音だね...」
ユルリカ
「え"っ」
視線の先には武器と装備と骨以外何も残っていない魔獣王族の姿があった。
俺
「うわっ」
あまりにも原型をとどめていないので俺も少し引いた。
ユルリカ
「どんな魔法を使ったらこんなことになるんですか!?」
俺「土魔法に炎を付与して重力を少し加えたらこうなるよ。」
ユルリカ
「ジューリョク?なんですか?それ」
俺
「説明すると長いから省略!」
ー省略ー
俺
「...っていうのが重力なのさ。」
ユルリカ
「重力ってスゴイですね!...でもそれって魔法に組み込めるものなんですか?」
俺
「それに関してはまた今度、ね。」
ユルリカ
「そうですか。残念です。ではまた今度教えて下さい。」
しょげてるのも可愛いしすぐ立ち直るメンタルにも感服&眼福ですね。
ここでユルリカはとあることに気付く。
ユルリカ
「ってかこれ魔獣王族の、しかもガルムじゃないですか!?
一人で倒したんですか!?」
俺
「今更だけどね...はい、そうです。僕が一人で夜討伐しに行きました。」
俺はてっきり叱責の言葉を受けるのかと身構えた。
ユルリカ
「もう一人で倒せるくらいにまでなったんですね。」
どこか悲しそうな彼女の目に、俺は素直に反省した。
俺「ごめんね。ユルリカちゃんの忠告も守れずに...」
ユルリカ
「いや、謝らなくても大丈夫ですよ!?
ただ私が教えられることが少なくなって、
少しだけ寂しいなって思っただけですから。あっ、
でも次からはどんな敵を倒しに行くときも、必ず私を連れて行ってくださいね。
もう咎めたりしませんし、絶対に役に立ちますから。
だって私はキリヤマ様の付き人であり、仲間なんですもの。」
と、最後は笑顔に、誇らしげに言った。
俺はこういう言葉の全てに、彼女の魅力が詰まっていると思う。
こうして、ユルリカちゃんにあれだけ説明させておいて一話ですんなり倒し、
やつの骨や武器と山鮫の素材を定価以上で売却し、魔獣王族騒動は幕を閉じた。
次の日
ーどうも、ユルリカです。最近ほんの少しだけ、困ったことがあるんです。
数日前、キリヤマ様が一人で魔獣王族を倒したこともあり、
山鮫+魔獣王族+ギルドからの報酬+素材を高値で売ってもらって、
3日間の休暇をいただけるとこになりました。(ちなみにこの世界の一日は、
皆さんの世界の一日の2倍です。 つまり一日48時間です。)
この3日間で一度実家に帰省するべくお土産を買おうと思います。
(ちなみに何年も帰っていないのです。)なので、
今日や昨日は商店街へ買い出しに来ているのですが...キリヤマさんがいるのです。
声をかけても無反応。声をかけてもこない。やっと買い出しも終わり、
そろそろ実家に向かおうと思います。今は...いない、のかな?いや、いる!?
目の前にいました!でも、アッチ向いてるし...
何も言わなければこっちに気付くこともないか...って、
首180°曲げてこっち見てきた!?
ユルリカ
「いやぁぁあぁあぁぁあぁああ!!!!!!!!」
急いで商店街の入口まで逃げてしまいました。
ここまで来たら流石にいないですよね。まあ大急ぎで走ってきたわけですし、
流石にいるわけが...ブリッジして屋根の上からこっちをただまじまじと見てる!?
ユルリカは全力逃げ出した。が...
タカタカタカタカ....
蜘蛛みたいな移動で追いかけてくるキリヤマ。
ユルリカ
(なんでブリッジであんなに速いんですか!?バグですか!?
そうだ、移動スキル "転送(テレポート)"!!!)
...街の入り口近くの門までワープしてしまいました。
転送テレポートは相手に行き先を伝えない限り場所はわかりませんので、
流石にいないと思いm...門の上からコウモリみたいにこっち見てる!?
ユルリカ「いやあぁああぁああぁあ!!!!!!!」
走って実家へ向かおうとするユルリカであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます