第5話:最強の魔物

ユルリカちゃんに不甲斐ない姿を晒してちょっと経って今、

ユルリカちゃんのお家に来ております!い"い"匂"い"だ"な"ぁ"〜!

俺が今の所見たのは寝室

(俺のために用意してもらった部屋でユルリカちゃんの寝室とは別室だよ)

のとこのリビングだけだが、とても質素である。

一等級の冒険者って本来はかなり地位高めなはずだから、

給料もそれなりに高かったはずだけど...

きっと貯金しているんだろう。じゃなかったら...まぁだいたい察しは付く。

何故なら"洞察力"のパラメータを上げたからな。

とか考えていたらユルリカちゃんが俺を呼んでくれた。


ユルリカ

「晩御飯作り終えましたよ〜」


机の上にはいい匂いの食材が並べられていた。

見たところ米はなさそう(今後見つけたい)だが、

ちゃんと栄養のありそうなものが食卓に並んでいる。地球にはない焼き魚、

何かの肉が入ったスープ、なにかのサラダ、主食はパン。お察しの通り、

この世界は生態系とかも生き物も何もかも違うのだよ。


ユルリカ

「お口に合わなかったら、いつでも言ってくださいね?」


可愛いぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!

そんでもって美味いぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!

可愛い上に料理と気遣いまで出来るなんて、この子欠点無いの?ねぇ、無いの?


それから軽く雑談をして、明日ギルドに売り払う山鮫の素材を整え、

歯を磨き、今日は寝ることにした。布団に入っていて気がついたのだが、

記憶力のパラメーターが0.9倍になっている。なぜだ?


ーキリヤマが犯したミス、それは...ー


記憶力のパラメータを下げっぱなしにしていたのである!つまり、

家族の記憶を忘れるために下げたパラメータは、必然的に下げっぱなしになり、

(あれ?なんで下げたんだっけ?)ってなり、

戻したときには忘れていたことを(忘れようとしたこと)思い出してしまうのである!


キリヤマはユルリカの家で一人静かに泣いた。

その夜ユルリカはドアの隙間からそれを見ていただけだった。


翌日。


ユルリカ

「キリヤマさん、起きてください!山鮫の素材、売りに行きますよ!」


という、ユルリカちゃんの声で目が覚めた。

これほどまでに素晴らしい目覚めはあるだろうk否、無い!俺たちは支度をし、

ギルドへ向かった。装備の強化に使えそうな山鮫の素材は、

残りの素材の代金で強化するという算段だ。


ユルリカの家はギルドに近いのであっさりギルドに着いた。


「これ、換金出来ますか?」


受付嬢

「これは?」


「山鮫とキングロコダイルの素材になります。」


受付嬢

「山鮫!?あの全長100mを超えると言われるあの?」


「うっす。ユルリカちゃんと二人で、頑張りました。」


受付嬢

「...そうですか。」


なんか冷たくね?気にせず受付嬢は続けた。


受付嬢

「でも確かに、普通のキングロコダイルとは皮の硬さが比じゃ無いですね。

 値段は、今相談してきますので、少々お待ち下さい。」


待っている間、ユルリカちゃんに気になっていることを話した。


「大体山鮫の値段相場ってどのくらいなのかな?」


ユルリカ

「かなりのレアモンスターですので、

 この量なら少なくとも2000Gは超えるんじゃないですか?」


「1Gにつき、大体500円って言ってたから...100万円!?いやでも、

 マグロも高いやつだともっとするか。レア物の一部だもんな。

 それくらいが妥当なのか。」


受付嬢

「えっと、結果が出ました。」


音もなく来たからびっくりした。忍者かて。


「ありがとうございます。で、お値段のほどは...?」


受付嬢

「1200Gになります」


「え?」


ユルリカちゃんは嘘はついていない。

ユルリカちゃんは鑑定士の資格も持ってるって、証明書まで見せてもらったもん。

なのに1200Gだと?ありえん。


「それは流石に嘘でしょう!?ケチか!?あまりにもケチなのか!?」


受付嬢

「本来の値段で買い取りたい所なのですがこちらも赤字気味なんです!

 最近、魔獣王族の犠牲になる上級冒険者が増えてきてるんです!」


「知るかよ!このクソg...ちょっと待てよ...

 その魔獣王族っていうのを倒せば、ギルドも助かり、

 運営周りも回復することで、しっかりと素材を2000Gで売って、

 更にその報酬金も上乗せしてくれたりする?」


受付嬢

「そんな事できたら、2000Gどころか2500Gで買ってやりますよ!」


「言ったな!?言質は取れたし、行こう!ユルリカちゃん!」


ドタン!!


勢いよくドアを締めてギルドを出た。


ユルリカ

「ほんとに行くんですか!?」


「いや、行こうとは思ってるけど...」


ユルリカ

「けど?」


「魔獣王族ってどんなんなの?」


ユルリカ

「ですよね...魔獣王族はですね、

 冒険者キラーとも言われるケンタウロス型の魔物で、

 一般魔物の最上位種に当たります。なんと言っても厄介なのは、弱点がほぼ無い、

 ということでしょうね。」


「弱点がない!?」


ユルリカ

「はい。まずはどういう経緯で生まれたか、ということですね。

 弱点がないと言うより適応力が異常、と言ったほうが良いでしょう。

 最初は大して強くはない魔物のケンタウロスでした。

 弓の扱いを特異とするのですが、不意打ちに弱く、

 遠くの敵を察知できないことに悩んでいました。すると世代を重ねるに連れ、

 雷を纏う角が発現したのです。

 角から微小な電気を飛ばして周囲の敵を察知するので、

 半径50m内に入った時点で、弓に打たれて終わりですね。

 しかも顔に攻撃されることが無くなる。しかし人間もまた、対策し始めました。

 盾の冒険者を前衛に置いて近づき、

 ある程度近づいたところで近距離冒険者で叩く。このやり方が主流になり、

 人間から奪っていた弓矢も失ったところで、

 近距離攻撃の重要性にケンタウロスは気づいたのです。

 そして強靭な爪と牙と咬合力を手に入れ、

 角と体重と速さを活かしたいと首の硬さと柔軟さ(衝撃を首から体へ流す力)

 を手に入れました。こうなると空の敵も撃ち落としたいと考え、

 羽を手に入れたんです。ちなみにこの羽根腕の代わりとしても使えます。」


「実質腕4本+羽ってことか。恐ろしいな。」


ユルリカ

「はい。倒した冒険者から武器を奪い、蹂躙していく。本当に恐ろしい魔物です。

 ですが、ここで人間は気づいたのです。魔獣王族は泳げないと。

 水中から水魔法を打つというやり方が主流になっていきます。

 すると足は鱗が生えたライオンのような前足になり、

 たてがみと水かきが付きます。水かきは手と肘と尻尾ですね。

 ここで下半身の馬の原型がなくなります。

 そしてモーニングスターみたいな尻尾も付きます。このときから低、

 中冒険者は、遭遇したら逃げるよう法律が定められます。

 上級冒険者は後ろから飛び乗り背中を攻撃する手段を取りますが、

 発達した刃のような背骨が背中から出現し、後ろから飛び乗れなくなります。

 しかもこの背びれ、体温調節機能もあり、より運動時間が長くなります。

 更に、遠距離攻撃を失っていた魔獣王族は、口から炎の球を放つようになります。

 ここまで来ると人間は力と魔法でゴリ押しする戦法になり、

 心臓を突かれて倒されるようになります。ここで魔獣王族は皮膚が更に固くなり、

 胸に魔結晶が付きます。魔結晶は魔力が高まるのと同時に、

 高密度のビームを放つようになります。

 ここで上級冒険者パーティも負けるようになり、武器を奪われ、

 より強くなっていきます。ここまでが成り行きですが、今、

 本当にまずい状況なんですよ。」


「そいつが存在してる事自体がマズいってこと?」


ユルリカ

「それもそうですが、多数の上級冒険者が犠牲になっているって事は、

 その分の武器は防具も魔獣王族が使ってるってことなんです。

 しかも言語能力を持たないこと以外知能はほぼ人間と一緒です。

 群れで襲ってくる可能性も0じゃないんですよ!」


それを聞いた俺はかなり絶望した。あんましイキるもんじゃ無かったと。

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