第2話:下心がないと言えば嘘になる

???

「だっ、大丈夫ですか?」


「この一瞬で理解した。俺の中の衝動は収まることを知らなかった。

 見た目がドストライクすぎる。綺麗な茶髪にアメジストよりも輝くな藤色の瞳。

 なんとも言えぬ柔らかそうな唇!以外に小さい耳がなんとも...

 そして敬語なのもいい!!!!!!!よく見ればスタイルまで何一つ欠点がない。

 一目惚れしてどうたらとかいうのはよく聞く話だがこういうことなのか。」


???

「はい?」


まずい思わず本音が出てしまった。抑えろ、俺。


「ごめん、勘違いなら申し訳ないんだけど、君が女神様の言っていた、

 僕の"付き人"なのかい?」


やはり興奮が抑えられるわけもなく目はガン開き、鼻息は荒く、

端から見れば完全にキマっているように見えた。

だがこのままでは確実にキモがられるので能力の発動!

演技力、抑止力起動!大体1000倍位で!

...こんな感じでいいのか?確かに収まってはいるが、

それでも若干興奮気味だ。などと考えていると彼女が喋りだした。


ユルリカ

「いかにもです。私がキリヤマ様の"付き人"に選ばれました、

 エルフィード・T・ユルリカです。キリヤマ様のお役に立てるよう、

 精一杯がんばります!」


可愛ぃぃぃいいぃぃぃいいいぃぃぃいぃいぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


決めた。俺、この子と生涯を共にしていくことにする。

この子は俺が命に変えても守りきらねば。

元々誰かを守るために選んだ能力だ。死ぬまで守りきってやるぜ。

ってちょっと待て。"選ばれた"って言った?


「選ばれたってどういう事?」


ユルリカ

「転生者が転生する時は、国で一番大きな教会にある"神の信託"という神具で、

 3日前くらいに知らせが来るんです。そこで、

 ソロで異性の一等級以上の冒険者の中から、一人だけ"付き人"に選ばれるんです。

 そこで選ばれたのが私という訳です。

 あ、ちなみに転生者は付き人と絶対パーティを組まないといけません。

 断ることは国に逆らうことと同義ですので断ることは、

 死を意味しても良いかも知れないですね。」


「だから皆、俺が来るのをわかってたみたいな反応してたのかぁ。

 質問尽くしで申し訳ないんだけど一等級冒険者ってどのくらいの位置づけなの?

 この世界の事ほとんど分かって無くてさ。」


ユルリカ

「いえいえ、転生者に尽くすのが私の役目ですから。

 冒険者格付けは下から順番に、


・初級冒険者4~1 大体3600人位


・中級冒険者4~1 大体2000人位


・上級冒険者4~1 大体1000人位


・第四〜一等級冒険者 300人位


・鬼級冒険者 110人程度


・王級冒険者 50人程度


・龍級冒険者 25人程度


・神級冒険者 一桁程度


と言った具合になってます!

初級は平原のゴブリンやスライム等の弱魔物の討伐許可。

中級は森の獣程度の討伐許可。上級はパーティでダンジョン攻略許可。

私のいる第四〜一等級冒険者は一人でダンジョン攻略の許可。

鬼級は第一等級以下の冒険者の指導権の許可。

王級は多少の融通を町長や州長が効かせてくれるレベル。

龍級は単騎での魔物拠点襲撃可能の許可。

神級は国王でも融通を効かせてくれるレベル。

行きたい場所はどこへでも自由に行けます。」


聞いていないところまでしっかり説明してくれる!天使かこの子。


「俺って今どの地位にいるの?」


ユルリカ

「転生者の方は第四等級からスタートです。

 ってああ!大事なことを忘れてました!冒険者登録と、

 わっ私とパっパーティ登録をしてください!

 っじゃなくて、しないといけないんです」


なにその告白みたいな感じの...かんわいいぃ...ってか待て。

この子恋愛経験とかあるのかな?なかったら俺としては嬉しいんだけど、

ここまでカワいかったら流石にあるか。でも男性経験はゼロみたいな反応してるし...

いずれかは聞きたいけど傷つけちゃうかもだからなぁ。俺童貞だし。

とか考えつつ、ギルドに着いた。でも道中気になったことがある。

やけにユルリカちゃんに対する視線が蔑んでるように見えた。

それにユルリカちゃんも我慢してた様子だったし...

俺もそこまで鈍感じゃないからなんとなくわかる。

この世界には何かしらの差別が存在する。


キルドの受付嬢(以降受付嬢)

「あなたが例の転生者ですね。ここは冒険者ギルド、"竜桜の宴"です。

 ここでは冒険者登録や冒険に必要な買い物、報酬の受け渡しや、以来の受理、

 素材の売買、ランクアップの手続きが可能です。

 異例なランクアップは対象外ですが。」


いきなり話しかけられたからびっくりした。

テンプレ通りならステータスの査定がまた行われることだろう。

フフフ、ここでこそ俺の能力が発揮されるってもんだ。


受付嬢

「転生者ですので、簡潔に冒険者になるための手続きを行います。

 早速ですが、こちらにお手をかざしてください。」


俺(体力、攻撃力、防御力、速力、魔力、魔法質力、

  魔法防御力、智力、魔法創造力てんこ盛りで起動!)


桐山 零Lv18


体力125.6万


攻撃力17.35万


防御力7.9万


速力10.4万


魔力28.1万


魔法質力25万


魔法防御力5.05万


智力4.05万


魔法創造力25万


魅力103


という結果が出た。大体500倍させてもらったよ。

にしてもえげつない数値だなこれ。今運動したら災害でも起きんじゃないの?

ユルリカちゃんも驚いてるね///とか思ってたらギルド内は大騒ぎになっていた。


モブ冒険者

「歴代最強の転生者だ!」


酒飲むモブ冒険者

「ひょっとしたら神級冒険者じゃないのか?」


主人公に肯定的な冒険者

「こいつが魔王を倒してくれるんじゃあないか?」


メガネかけてる冒険者

「レベル100の間違いでは???」


などと周りの冒険者が騒ぐ。抑止力を切らなくて正解だった。

今頃キモい顔で喜んでそうなくらい、浴びたことのない歓声だったからな。

陰キャにはこんな機会無かったし。まっ、つっても本来は、

これの500分の1なんですけどね。と自分に言い聞かせ、何とか平然を装った。


受付嬢

「こっ、こちらが、冒険者としての証明書となっております。

 お受け取りください。くれぐれも無くさないで下さいね?」


渡されたカードには

四等級冒険者(転) 桐山 零


以下、先程のステータスが書いてある。

中々高級感のあるカードで、金の板に刻印が施されている。

高級ホテルのカードキーみたいな証明書だ。


受付嬢

「依頼は、右にあるクエストボードにてご確認の上、

 紙をこちらに持ってきていただけると、クエストを受注したことになります。

 クエストを受けずとも、そこらの魔物を倒して、

 素材を持ってきていただくだけでも換金はいたしますので。

 それではいってらっしゃ~い!」


わかりやすい。早速クエストボードに向かった。

いろんな依頼内容が書かれた紙がずらりとある。


・即死蜂の蜂蜜採取クエスト

・迷路の探索依頼

・畑荒らしの害獣討伐求ム

・豪邸の警備依頼

・愛犬の怪我を治して!

・この素材がほしい!


など、現実でもありそうな依頼も多かった。

何を選んだら良いのかわからないけど、取り敢えず男として一回は戦いたい。

そこで、ユルリカちゃんに聞いてみることにした。


「ねえねえ、この中の討伐クエストで何が一番オススメ?

 出来れば初めてのクエストは戦ってみたいんだよね。男として。」


ユルリカ

「う〜ん。巨大ワニ(キングロコダイル)の討伐とかですかね?

 あまり遠いところでもないですし。

 キングロコダイルは物防が高く魔防が低いので、良いと思いますよ?

 あっほら、キリヤマ様は物理より魔法向きのステータスでしたから。

 あと皮は防具とかカバンとかお金になります!」


俺「この世界でもワニはカバンにするんだね...」


と言いつつ思うことがある。

悩んでた仕草可愛いいぃぃいいぃいいぃいぃぃいいぃいいい!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


そして俺のために真剣に考えてくれてるのもまた...おっといかんいかん。

ユルリカちゃんがクエスト選んでくれてるのに考え事にうつつを抜かすな。


ユルリカ

「本来は上級冒険者になってから討伐対象に入るのですが、

 キリヤマさんならダメージを食らうことは殆どないと思いますし、

 魔法の練習台にもなりますからね。」


「わかった、じゃあ一緒にそれに行ってみよっか。」


そう俺が言うと、ユルリカちゃんは嬉しそうにしていた。

こうして俺たちはクエストの場所であるクソスベル湿地へ行くことになった。

そうそう、説明を忘れていた。俺がいるこの星の中で一番の大国、

レヴンタス王国の首都コーミヤの隣の州(日本で言うところの県)、

リトナード州の中で一、二番目に栄えた高い壁に囲まれた町、カロルスにいます。

(日本で例えると横浜的ポジション)ユルリカちゃん曰く、

カロルスを出てクサッパラ平原を西に突き進んだモーリ森の中心に、

クソスベル湿地があるのだとか。大体往復は徒歩で一時間程かかるんだって。

その間ユルリカちゃんといろんなことを話した。

そんな時、ユルリカちゃんに突然謝られた。


ユルリカ

「ごめんなさい!キリヤマさんを騙すような真似をして!」


「えぇ!?急にどうしたの?イマイチ状況が飲み込めないから、

 落ち着いて一から説明して?ね?」


ユルリカちゃんは泣きながら自分の生い立ちについて説明した。


ユルリカ

「元々私は身分の低い半妖精の一族、"テラルド"族の族長の娘なんです。

 貴族はテラルド族を殺害しても罪に問われることはなく、

 一般人でさえ私達を迫害するんです。でも、私だけ族長の娘なので、

 身分は一般人と同じみなされ、冒険者になることを許されました。

 ですが反逆者の族を受け入れる人など一人もおらず、

 冒険者になってもパーティを組めず、白い目で見られて...

 テラルド族の友達も幼い頃からこの街にいたので一人もいません。

 そんな時私、ふと考えたんです、どうにか誰かと一緒になれないかって。

 一人はもう嫌だって、思ってしまったんです。

 そこで転生者の付き人になれば良いんじゃないかって。

 転生者はこの世界について詳しくないから身分差なんて知らないし、

 付き人は強制的にパーティに入らなくてはいけないから。

 そうしたら孤独(ひとり)じゃなくなるって。

 それで第一等級冒険者まで頑張ってなったんです。

 でも話していたらキリヤマさんはとても優しい人で。

 私なんかが軽い気持ちでパーティに入って良い身分じゃないって...

 騙してしまったって気分になってしまって...罪悪感で...」


(さっき住民がユルリカちゃんを白い目で見てた理由はそれか。

随分と大変でつらい思いをしてきたんだろうな。俺なんかには、

まだその痛みを計り知る事は出来ない。)


うずくまりながら必死にそう言う彼女の姿を見てキリヤマは言った。


「まだ冒険者になったばっかりだけど俺は君が付き人で良かったと思ってるよ。

 素直に反省して自分から謝れるって凄いことだと思う。

 俺なんかは変なプライドとかで隠し通そうとしちゃうしね。

 それに第一、騙されたなんて微塵も思ってないよ。

 しかも一人が嫌なのはどんな人も一緒さ。俺も君が居なかったら一人なわけだし。

 俺は君とならどんな災難も絶対乗り越えて見せる覚悟だから。安心して?ね?」


ユルリカ

「でっでも、私と一緒にいるとキリヤマさんまで蔑まれるかも知れないんですよ?」


「そうかもね。でも、俺達もう仲間じゃん?仲間なら痛み分けぐらいさせてよ。」

(決めた。テラルド族の身分も貴族の身分も皆無くしてやる。

この子にもう辛い思いをさせないためにも。)


キリヤマの魔王討伐とは別の目標が定まった瞬間だった。


ユルリカ

「本当に、、、いいん...ですか?」


泣きながら笑顔を作って俺に見せてくれた。


「もちろん、いつでも頼って良いんだよ?

 むしろ一人で抱え込まないで、どんどん俺に押し付けていいから。ね?」


俺がそう言うとユルリカちゃんが抱きついてきた。

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