パン

 好きなんです。パンが。「ゴオルド」っていう名前も、小麦色から取っています。収穫間近の夕方の小麦畑に優しい風が吹くと、この世の天国かっていうぐらい綺麗です。それはビールと同じ色をしている。ビールの海に立っている気分になれます。



 でもね、ずっと隠していたけれど、お米も好きです。隠す必要がないような気もしますが、でもパンに対する裏切りっぽいでしょう。だから、こそっと言う。お米も好き(こそっ)。



 みんなはどんなパンが好き?

 私はね、食パン! 食パンの上のほう! わかりますか、上です。上のほうは耳がちょっと歯ごたえがあって、香ばしいのです。ライ麦パンも好きです。穀物っぽい味がして、噛みごたえがありますからね。


 ジャムはつける派?

 私はあんまりつけないけど、たまにジャムを塗ると美味しいね。マーマレードがいいかなあ。ラズベリージャムも好きだけれど、お高いからパンに塗るのはもったいないのでそのまま舐めます。あれは舐める用のジャムだな。



 昔読んだ児童書で、リスがパンの美味しさに目覚めて、森の動物たちと協力して小麦を栽培し、パンを焼くことを計画する、というものがありました。

 すっごい長期計画ですよ。冬に小麦の種をまいて、夏に収穫して、粉にして、パンを焼くわけですから。


 案の定、動物たちは小麦栽培に飽きてしまいます。水やりをサボっちゃうようになってね。

 しょうがないのでリスはひとりで小麦栽培を頑張りました。水をあげて、肥料をあげて、農薬もまいてね、いや、農薬はまいてないか、でも小麦は無農薬だと赤カビ病になったりしますのでね、農薬を使ったほうが安心だね。


 そうやって育てた小麦を使い、それはそれは美味しそうなパンを焼いて、リスは森の動物にふるまうの。

 動物たちは恐縮するのよ。「え、いいの? 私たちは小麦栽培をやめちゃったのに」

「いいの、いいの。みんなで食べようよ」

 リスは気前よくパンを振る舞って、みんなで笑顔になりましたとさ。おしまい。



 ……森の動物たちさ……せめてさ、そこはジャムぐらい作ってもっていこうよ。シチューとかデザートとかでもいいけどさ。何かしら用意しようよ。そんなことを私は考えるわけです。

 いやでも逆にね、そういうことするほうがウザイみたいなこともありますしね。素直に喜んでくれるだけでいいんだよ、みたいなこともありますからね。

 お礼は別の機会に、というほうがスマートか?


 いや、どうでもいいか、それは。

 どうでもいいな。森の動物たちの人間関係、どうでもいいな。


 それに借りたタッパー返すときに何か詰めて渡すか否かみたいな話は、答えのない問いですし。わからんよね、もう何が正解なのかなんて。人付き合いに模範解答なんてない。相手による、状況による、これまでの付き合いによる、それが全て。


 そういえばさ、たまにペットのワンちゃん同士で、「この前まで仲良しだったのに、最近不仲になってきて」なんて話を聞くと、一体何があったんだろうかと考えてしまいます。「あいつ、タッパーを洗わずに返してきたよ」「ああ、あの子ってそういうところあるよね」みたいなことが犬にも起こっているの? 動物の人間関係、何がどうなっているの? 犬同士ってどういうキッカケで揉めるの? どうでもいいですか? どうでもいいですね。



 どうでもいいといえば、甘くないコーンフレークに塩を振って食べたら、とんがりコーンになるのでは? と最近ひらめいたんです。朝ご飯にとんがりコーン、最高かもしれない。


 それでやってみたんです。


 うーん。うん。うーん。近い。近いのだけれど、やっぱり油分が足りないから物足りないかも。さっぱりとしたとんがりコーンって感じ。近い。


 ということは、オリーブオイルなんかを塩と一緒にまぶしたら、とんがりコーンになるのでは? でも最近お高いでしょう、オリーブオイル。試せないよね。とんがりコーンを買ったほうが安くて早い、みたいなことになるよね。



 買えるなら 買えばいいのよ とんがりコーン

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