「陳情令」含光君のものがたり二十句

第1話

天人は降臨白衣(びゃくえ)冴えざえと

「含光」の名ひいやりと香気まとひ　　　　

学舎にあたらしき風きみの香の

舞ふがごと月下の決闘うつくし

掌(てのひら)のあまき露きみが放りし実

少年期枇杷ひとつ受けとれぬ意地

義に生くる誓ひあゝ知己(とも)の横顔　　　　　

乳白の蓮の実そっとくちびるに

藍湛(ランジャン)ときみが呼ぶ世界が色づく

「抹額(まっこう)」は律するやこの愛も欲も

傘に瞳(め)に頬に綴りし水の詩句

信じぬく証(あかし)背に三十三の鞭

きみが邪か正邪とは何だ答えてよ

きみの眼の絶望と不信日の没す

この腕を振り切って墜落(お)ちゆく微笑　

喪失は信じぬ十六年の無色

「忘羨(ワンシェン)」は知りえぬ調べきみの外(ほか)は　　　　

きみと生ききみと死にたし今度こそ

丈たかき雲ははるかに峰を越え

いつの日か虹のむこうで手を繋ぐ