彼女たちの井戸端会議

 昔々在るところに赤ずきんちゃんと呼ばれる女の子がいました。

 いつもいつも赤い頭巾を被っているので、みんなから赤ずきんと呼ばれていますが、本名ではありません。


「今日もいい天気ね!」


 赤ずきんが空を見上げてつぶやくと、小鳥が一羽飛んできました。


「おはよう。今日も元気だね」

「あら小鳥さん。相変わらずぴちくり五月蝿いわね」


 どうやら赤ずきんちゃんは毒舌のようです。


「またまたぁ、そんなこと言って。ツンデレってやつですか?」

「うるさいわよ。唐揚げにして食べてしまうわよ」

「あらあら、仲良しねぇ。やっぱり子どもはこれくらい元気じゃなきゃだめよね?」

「おはよ。ニート」

「ニートじゃないわ。家事手伝いよ」


 現れたのは、お隣に住んでいる白雪姫です。

 彼女は、小人たちの家に勝手に住み着いていて、勝手に家事手伝いをしている(ニート)です。

 しかし外見がいいので、小人たちは気にしていません。


「どうしたの?こんな朝早く」

「実家からリンゴが大量に送られてきたから、おすそわけにきたわ」

「おばさん、リンゴが好きね」

「そうね。私がリンゴが好きだと勘違いをしているわ」

「その勘違いを正す気はないの?」

「ないわ。あっ、でも何回かに一回毒リンゴを混ぜるのは止めていただきたいわ」

「は?毒リンゴの話は初耳よ?」

「言ってないもの。大丈夫よ。死にはしないから」


「そういう問題ではないわ!!」


 またまた新しいお姉さんの登場です。


「あら、存在感灰色。朝から貴女に会うなんて一日が台無しよ」

「こっちだってあんたになんか会いたくないわよ。私は赤ずきんに用があるの。赤ずきん。これをあげるわ」

「なぁに?」

「ほら、畑に肥料として撒く灰がほしいって言ってたでしょ」


 彼女の名前は、シンデレラ。近所に住むお姉さんです。

 職業は、「あなたの町の掃除やさん」。

 いたるところをピカピカにすることに定評があります。

 靴を彼女が磨けば、硝子のように光輝くとの噂です。

 特に暖炉掃除が得意だそうです。


「ああ、あれね。ありがとう。ところで知ってたの?」

「毒のはなし?もちろんよ。だって、前回も前々回も毒リンゴを食べたのは私よ」

「そうなの?」

「そうなのよー。運が悪いわねぇ」

「おかしいでしょう!あんたがリンゴのおすそわけにくる度に気を失うのよ。その度に動物たちが大騒ぎなのよ。前回なんて小鳥に口の中、つつかれまくって大変だったんだから!」


 助け方、斬新ですね。


「完全にロシアンルーレットだから、私にだってどれが毒入りか知らないわ」

「そんなのをお裾分けすんじゃないわよ!!」


 ギャーギャーと言い合う二人ですが、たぶん仲良しです。たぶん。


「あ、そうだ。リンゴついでにもう1つ。ねぇ、誰かいい男いない?」

「は?あんたんち、よりどりみどりじゃない」

「小人はだめよ小さいもの」

「てか、恋人いなかった?」

「別れた」

「そうなの?なんで?」

「キモい。そういう貴女は?」

「いないわよ」

「え?あの人恋人じゃなかったの?」

「あれはストーカーよ。大体、落とし物1つから身元を割り出すなんて気持ち悪いじゃない。あんたにあげるわよ?私のじゃないけど」

「いらないわよ。誰かいないの?いい男」

「オーカミさんと狩人さんなら紹介できるわ」

「だめよ。どっちともむさ苦しいわ」

「もっと爽やかな人がいいわね」

「じゃあ自分で探しなさいな」


 好い人、見つかるといいですね。


 めでたしめでたし

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