今は昔 竹取りの翁というものありけり

 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

 そして、それはそれはきれいな娘も住んでいました。

 娘は竹から生まれ、輝くように、とても美しかったので、「かぐや姫」と呼ばれていました。


 娘が年頃になると、沢山の人から求婚されました。

 しかし、娘はとても意地が悪く、性格がネジ曲がっていたので、男たちに無理難題を吹っ掛けました。


 幻の品や話にしか聞かない伝説の物、「仏の御石鉢」「蓬莱の珠の枝」「火鼠のかわごろも」「龍の首の珠」「燕の産んだ子安貝」を見つけたら、結婚してやってもいいと言いました。


 男達が「どうだ!」と持ってくると、「なにこれ?偽物でしょ?」と容赦なく壊していきました。

 そして、「やはりだめだったわねぇ」と上から目線で言い、高笑いをしたり、品物を探している途中で事故に合った者には、「なにやってるのかしら。どんくさいわねぇ」とバカにしました。


 そしてある日、おじいさんとおばあさんを部屋に呼び、言いました。


 「実はー私ぃ、地球人じゃないんですよぉ。次の満月には月にかえりますね!」


 と、世話になった感謝もなにもなくバッサリとじじばばを見捨てました。



 しかし、満月の日を迎えても一向にお迎えはきませんでした。



 なぜならば。



 天界では、戦争が勃発していたからです。


 戦っているのは、織姫と彦星。

 天の川を挟んで対立しているのです。きっかけは些細なことでした。

 晩御飯に彦星が飼っている牛を潰してすき焼きをつくろう、と織姫が言いだしました。

 そんなことはしてほしくないと彦星はやめてくれ!と懇願しましたが、「牛と私とどちらが大事なの!」と言われてしまいました。

 そして、彦星は、思わず「牛!」と言ってしまったのです。

 その日から険悪な空気が漂い、川を挟んで別居をしても織姫の気は収まらず、戦争が始まりました。

 天界の住人は、織姫の作った服を着て生活したり、彦星の牛に世話になったりと、義理があるので、なんだかんだで手伝っていました。


 織姫の父、天の神様は、この事態を何とか収拾しようと、天界の人に命令をして、喧嘩を納めようとしました。


 もちろん、かぐや姫を迎えにいく予定だった人たちも呼び出されました。

 彼らは少し考えて神様の言うことを聞くことにしました。だって、ワガママな姫の子守りと天界での暮らしを天秤にかけたら、生活が大事てすからね。


 そんなわけで、姫の迎えはこないのです。


 ついには、性格の悪い嘘つき女と言われるようになってしまったかぐや姫は、そのまま地球に残りました。年をとってからは、雀の舌を切ったり、隣のじいさん、ばあさんにいじわるをして暮らしたとさ。



 めでたし、めでたし


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