昔々あるところに

羽入 満月

サルとカニ

 むかしむかし、カキの種をひろったサルが、おいしそうなおにぎりを持ったカニにばったりと出会いました。



 よく、少女まんがとかにありそうなシチュエーションですよ!!さあさあ、これからどうなります?



 サルはカニのおにぎりが欲しくなり、カニにずるい事を言いました。


「このカキの種をまけば、毎年おいしいカキの実がなるよ。どうだい、おにぎりと交換してあげようか?」

「は?知らないの?もも栗3年、柿8年っていうんだよ。種植えたってすぐ食べれる訳じゃないでしょ?」


 カニは、意外と頭がいいようです。さて、サルはどうするでしょう。


「いやいや、それは普通のカキの種でしょう。これは違うんですよ。そう、特別な種。なんと今蒔けば、芽が出てくること間違いない!!さあ、交換するなら今です!!」



 何だか通販みたいですね。そんなので騙されるのなんて



「よし、交換しよう!!」



 あら、簡単に乗りますねぇ。大丈夫でしょうか。



 カニは大喜びで家に帰り、さっそくカキの種をまきました。

 そして、せっせと水をやりながら、


 ♪早く芽を出せ、カキの種

 ♪早く芽を出せ、カキの種

 ♪出さねばはさみで、ほじくるぞ


 と、歌います。


 すると、どうでしょう。

 さっきまいたカキの種から芽が出てきて、ぐんぐん大きくなりました。


「さすが、特別な種!!」



 いやいや、早いです。おかしいです。



 しかし、カニは気にしません。


 ♪早く実がなれ、カキの木よ

 ♪早く実がなれ、カキの木よ

 ♪ならねばはさみで、ちょん切るぞ


 こんどはカキの木に、たくさんのカキが実りました。


「よし、これでカキが食べられるぞ」



 いやいや、おかしいです。自分で柿8年って、言ったじゃないですか。



 カニはカキの実を取りに行こうとしましたが、カニは木登りが出来ません。


「どうしよう?」


 困っていると、さっきのサルがやって来て言いました。


「ありゃ、もうカキが実ったのか。よしよし、おいらが代わりにとってやろう」



 お、雲行きがあやしくなってきましたよ。盛り上がってきましたね。



 サルはスルスルと木に登ると、自分だけ赤いカキの実を食べ始めました。


「ずるいよサルさん、わたしにもカキを下さい」

「うるさい、これでもくらえ!」


 サルはカニに、まだ青くて固いカキの実をぶつけようとしました。


 しかし、うまくいきませんでした。

 なぜならば、カニが木の真下で、ハサミを木に当て、ガシガシと木を伐ろうとしているからです。


「や、やめろ。ほら、カキだろ。取ってやるって言っただろ」

「いいです、いいです。こうして斬り倒してしまえば、手に入るのですよ」

「いやいや、斬り倒してしまったら、今後カキが食べれなくなってしまうじゃないか!」

「最初は、すぐになくなってしまうおにぎりだったのです。だから、今季一代でいいではありませんか」


 ガシガシと話ながらも伐っていたお陰で、カキの木は、伐採されました。

 そして、サルは倒れた木の下に挟まってしまいました。


「ぐぅえ。助けて…ぐぅ。ぅえ…」

「あぁ、カキうめぇ」



 めでたし、めでたし

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