ある親子

レストランでご飯を食べていると、赤ちゃんの泣き声がする。

一生懸命あやす母親に、うるさそうにその様子を見ている父親と娘。

うるさいから外行ってあやしてきてと言う娘。

自分の子供なんだから、自分たちもあやしたりすればいいのに…子育てに非協力的なんだな。


父親目線

ガキがギャーギャー泣いていてうるせぇ。

耳障りだな。

娘が言ってくれて助かった。

血の繋がらないガキなんて可愛くもなんともねえ…。

他の男を産んでおきながら、どれだけ罵っても薄笑いを浮かべてくる嫁に大層怒りを覚える。

何を考えているんだ?

まだ今の時点で離婚は出来ない、今の時点だとろくに育児や家事をやっていなかった俺が娘の親権を勝ち取れる可能性は0に近い。

だから娘が親権を選べる年齢になるまでは離婚しないと決めた。

その時が来たら離婚してとっとと捨ててやる。


母親目線

愛する我が子が泣いている。

愛する主人に罵られている私…。

ああなんて刺激的な日々なの…。

2年前、私は優しい主人と娘の3人で暮らしていた。

穏やかな、なんの刺激も無い退屈な日々…。

そんな日に飽きてきていた。

そんな時、ママ活と言うものを目にした。

私は一時の刺激を求めて1人の男の子と会ってしまった。

当然もしものことを考えて旦那とも既成事実を作ったが、暗くて分からなかったのね…産まれたこの目が青かったの…。

当然主人からは不倫を疑われ、私は正直に魔が刺してママ活をしてしまったと言ったわ。

それから、優しかった主人の態度が豹変してしまったの。

それからはもう刺激的で仕方ないの!

私を罵ってくる主人。

蔑むような目で見てくる娘。

たまらない!

そして、そんなふうに言ってきても離婚しようとしないのは、やっぱり私のことを愛してくれているからなのね…。

なんて愛おしい…私は主人と娘とこの子と、4人で幸せに暮らしていくの…。

人生はこのくらい刺激がなくっちゃ!

あーあ、私のご飯、戻ってきたら主人が全部食べちゃってた。

まあいいわ、私の食べかけのご飯も食べてくれるような愛しい主人です♡


娘目線

…こんな母親を持って私は恥ずかしい。

お父さんが可哀想。

私が親権を選べるようになるまでの辛抱って言ってたけど、こんな母親親と思ってない。

なんでこんなやつでも親権が行きやすいの?

今の法律おかしいよ…。

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短い物語たち 天翔留 千歳 @chikake

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