シンデレラストーリー
「本当にお前は使えないわね!妹を見習いなさい!」
そう言われ、私は継母から虐げられていた。
後ろでくすくすと笑っているのは、義理の妹。
私の母は、当時不倫関係だった継母と父により毒殺された。
その後首吊り自殺をしたように偽装され、現代の警察ほどの捜査能力が無かったこの世界では、2人の思惑通り、母の死は自殺と断定され、事件性はないと判断された。
その後すぐ2人は結婚した。
もちろん継母が私の事を自分の子供としてみるはずもなく、使用人のように扱い、毎日のように罵声を浴びせられ、暴力を振るわれた。
その時点で妹を身籠もっていたらしく、妹が生まれれば私は奴隷のような扱い、妹だけが2人の娘と言うような扱いの差になった。
実の父も、私より妹の事を可愛がっていた。
でも、この地獄ももうすぐ終わる。
なぜなら私は悪名高い殿方のところに嫁ぐから。
大抵こういう場合、噂とは違い、婚約者は優しい男性で、虐げていた家族を一網打尽にしてくれる。
そうして笑っていられるのも今のうちだ。
なぜそんな事が分かるかって?
私が異世界転生してきた人間だから。
そうして嫁ぐ日が来た。
「ようやくお姉様の顔を見なくて済むようになるのね。せいぜい追い出されて野垂れ死なないようお気をつけて♪」
「例え追い出されても、お前の居場所などここには無いからな!2度と戻ってくるな!」
「戻ってきたら私が殺してやるわ…」
これが長女の門出に家族がいう言葉なのだろうか…。
言いたいことはたくさんあったが、こいつらの気を逆撫でるような事を言って殴られでもしたら、嫁入り前なのに大変だ。
「お世話になりました…」
そう礼を言って、私は実家を後にした。
婚約者は、確かに酷い殿方であった。
朝から晩まで私をこき使い、罵詈雑言を浴びせた。
しかし、純粋なところを見せていれば、きっと彼も優しくなる。
「おい、ちょっと来い。」
珍しく婚約者が微笑みながら手招きしてきた。
私はようやく婚約者の優しさが垣間見えてきたと思い、素直に近づいた。
『バシャッ!』
「!?」
「嬉しそうに近づいてきて、何を期待していたんだ?まさか、お前などに俺が優しくすると思ったのか?バカめが。味噌汁の味が気に食わなかったから捨てただけだ。」
婚約者は、私に向かって味噌汁を顔にかけてきた。
「本当にお前は何もできない役立たずだな。それにこんな仕打ちをしても何も反論してこない。つまらん、今日中に出ていけ!」
「え…」
「聞こえなかったのか?出ていけと言ってるんだ!おい、こいつとこいつの荷物を全部出せ!」
そういうと、使用人は容赦なく私を屋敷から追い出した。
そして荷物も一つ残らず投げ出された。
「そんな…悪名高い男にみそめられて人生逆転がこういう話によくある結末じゃない…なんで?」
私は呆然と立ち尽くすしかなかった。
私はその後、途方に暮れて、荷物を抱えて街を歩いていた。
「あら、お姉様じゃない?」
「何?もう屋敷を追い出されたの?」
「っ…」
私が見返すはずだった義妹と継母…。
これじゃあ2人の思うつぼじゃない…。
義妹が笑みを浮かべながら私に近づき、耳元でこう言った。
「奪われる気持ちはどう?姉さん。」
「!」
思い出した。
私は転生前に妹に殺された。
転生前の私は、今とは逆の立場で、妹の全てを奪う存在だった。
両親からの愛も、学力も、才能も、容姿も、全て私を選んだ。
私がやったイタズラを全て妹のせいにして両親に報告し、妹はどうしようもない子だと思わせ、2人の愛情を独り占めして、惨めな思いをする妹を見るのが面白かった。
更には妹の婚約者も奪い、妹が両親にその事を言っても、
「お前なんかよりお姉ちゃんの方がいいに決まっているだろう。」
そう言われて終わりであった。
私はその時妹の耳元でこう囁いた。
「あんたのものは全て私のもの♪」
その後、私は寝ているところを妹に滅多刺しにされた。
「まさか…あんたも転生したの…?」
「そう。あの後姉さんを刺している所を両親に見つかって、首を切られて死んだ…私はただ平和に生きたいだけだったのに、あんたが全部奪い去ったのよ…。今度は私が奪う番…。」
そういうと私から離れ、義母のところに戻った。
「お姉さまの戻るところはどこにも無い。いつまで生きる事ができるかしらね?フフフ♪」
「行きましょう。こんな薄汚い人間と一緒にいると、私達まで同類に見られるわ。」
そう言って2人は私にわざとぶつかり、去っていった。
私は苛立ちが頂点に達し、すぐそこに売っていた包丁をひったくり、2人を滅多刺しにした。
私はその世界の警察的存在にすぐ捕まり、死罪になった。
そうして私はまた目を覚ました。
ああ、また転生してしまった。
今度は何なんだろう…妹も転生している限り、私にハッピーエンドは訪れない…
「あ、やっと目が覚めたんだね。お姉ちゃん♪」
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