親子

私は自分で言うのも何だが面食いだ。


結婚するならイケメンがいい。


イケメンなら子供もイケメンや美女になるだろうからと思ったからだ。


そして、偶然マッチングアプリで出会ったイケメンと出会い、奇跡的に意気投合し、交際に至り、とんとん拍子に事が進み、結婚した。


そして、待望の第一子を授かった。


生まれた子は男の子であった。


私は、当然のように綺麗な顔立ちに育っていくと信じて疑わなかった。


もちろん自分の方に似てしまってそうでもない場合もあるかもしれないが、それでも2人の子、可愛く思えるに決まっている!


…そう思っていた…


しかし、息子は知的障害があるようで、4歳になってもまともに言葉が喋れず、おまけに顔立ちもどちらにも似ていなかった。


可愛くない…我が子を可愛く思えないなんて…そう思い悩み、両親のもとに相談したりもした。


「色々重なって、気持ちに余裕がないからじゃないかしら…」


そう言って、母が息子の頭を撫でると、息子は奇声を発した。


母が驚いて後ずさった。


最近はこんなことをするようにもなったから尚更である。


保育園に迎えに行くと、お便り帳にももちろん、保育士からも直接、息子がその日やらかしたことを聞かされる。


「このままだと、小学校は特別支援学校に行かれた方がいいと思います。いきなり奇声を発したり、皆で座って作業をする時も、いきなり立ち上がって部屋の外を走り回ってしまうので、普通の小学校で勉強するのは難しいと思います…」


そう言われ、項垂れてしまった。


こんなはずじゃなかった…。


顔立ちが理想でなくとも、ここまで手がかかる子になるとは思ってもいなかったのだ。


そう言われている間も、奇声を発して息子を見て、同級生が怒っていたり、嫌そうな顔をしていたりして、明らかに浮いていた。


でも、今は障がいのある子が結構いるし、家族もそんなに隠したりしないし、障害者に対する支援も今はあるから大丈夫…そう言い聞かせていた。


その後、私たち家族は、旦那の実家に行く機会があった。


旦那の家族は、今は母のみで、父は5年前に他界しているらしい。


私がトイレに行くのに席を外していた。


その後、部屋に戻ろうとした時、部屋の中から義母と旦那の会話が聞こえてきた。


「本当、昔のあなたにそっくりね…」


「言うなよ…もう忘れたいんだから…兄貴と瓜二つの顔なんて…」


…え?兄?


整形してるのかもしれない…そんな気はしていた。


しかし、旦那に兄がいるのは聞いた事がない。


一人っ子であったはずだ。


「どう言う事ですか?」


私は思わず部屋に入り、聞いてしまった。


「…え?何のこと?」


旦那がとぼけたように言った。


「今話してたでしょ?整形してるんじゃないかって言うのは何となく感じてた。この子の顔がどっちにも似てないんだもん。それくらいは許そうと思った。でも、兄がいるのを隠してたってどう言うこと?もう家族なんだからきちんと話して!」


私は、だんだん口調が強くなってしまった。


「…あなたには、全部を聞いて、事実を受け入れる覚悟はある?」


「え、何ですか…そんなに重い話なんですか?」


「重いと言うか、まるで漫画やドラマの中でしかないような話なんだよ…俺も聞いた時、受け入れる事ができなくて、しばらく母親と距離を置いていたからな…」


「…それでも聞きます…」


その後、義母が話したことは、私の想像を大きく上回る、悍ましい内容であった。


義母には、重い知的障害を持つ兄がいた。


息子のように奇声を発し、成長と共に、家族に暴力を振るうようになっていった。


義母は、施設に入れることを提案したが、義母の母は、どうしても兄を手放したくないといい、鍵付きの部屋に閉じ込めると言う条件で、施設に入れるのはやめたと言う。


その後、義母は義父と結婚。


しかし、その後なかなか子供ができなかったと言う。


病院に行ってみると、不妊だったのは義父の方で、自然妊娠できる可能性は限りなく低いと言われた。


それでも、一縷の望みをかけて妊活をしていたが、一向に子供ができることはなかった。


妊活から2年、義父は諦め、2人で生きていこうと言ってきたらしい。


義父に子供を抱かせてあげたい、人工授精も考えていた矢先、ある出来事が起きた。


義母が実家に置いてあった荷物を取りに行く事があり、両親はその時不在。


義母は外のある場所に隠してある家の鍵を使って家に入り、自分の部屋で荷物を探していた。


その時、何者かにものすごい力で押さえつけられ、無理やり仰向けにされた。


それは、義母の兄であった。


いつも部屋に鍵をかけてあったが、両親がその日に限って鍵をかけ忘れてしまったらしい。


義母の兄はニヤニヤしながら、義母の体を撫で回してきた。


義母の兄は、自分の妹を犯したのだ。


最初は暴れていたが、ある考えに至り、抵抗をやめ、されるがままになったという。


その考えとは、このまま兄との間に子供ができれば、義父に子供を抱かせてあげることが出来る…。


そう考え、あろうことか実の兄との間に子供を作ったのだ。


それが旦那の兄であった。


そしてその後も、両親の不在時に兄を誘って行為におよび、旦那を作った。


旦那は顔立ちは義母の兄に瓜二つであったが、幸い健常者として育った。


しかし、兄の方は義母の兄同様、重い知的障害を持って生まれたらしく、兄と自身の見た目のせいで、学生時代は酷いいじめに遭っていたらしい。


旦那の兄は、旦那が高校生になった頃に施設に入所した。


旦那も、就職してから必死に金を貯め、顔全体の整形手術を行い、それからは兄はいないものとして扱うようにしたと言う。


つまり、旦那は義両親の間の子ではなく、義母と義母の兄との子、近親相姦で授かった子であったのだ。


近親者同士で子供を作ると、障がいのある子供が生まれやすい。


それを身をもって実感した。


旦那が兄弟で写っていた写真を見せてもらった。


旦那は、今の見た目とは全然違う、まさに息子と瓜二つといった感じの顔であった。


「…こんな大事なことを言わないで結婚するなんて…」


「悪いことをしたと思っている…でも、どうしても君と結婚したかったから…こんなやつの事で、君に拒絶されたくなかったんだ!」


自分のことしか考えていない…。


旦那が大声を上げたことによって、息子は大声で泣き始めた。


耳をつんざくような声に嫌気がさし、私は部屋を出てしまった。


その後私は両親に今日聞いたことを全て話した。


当然双方の家族間での話し合いになった。


しかしそこでさらに驚きの事実が発覚するのだ。


なんと、義母の兄は、義母の母親と、その母親の弟の間にできた子だというのだ。


義母の母親は、8歳歳の離れた自分の弟があまりにも可愛く、旦那と結婚した後に弟を襲い、義母の兄を作ったらしい。


弟は、姉に襲われたという事にショックを受け、自殺してしまったようで、重い障害のある兄を、その弟のように可愛がったらしい。


義母の親は両親のため、義母と兄は半分血のつながった兄弟という事になる。


2代前から、近親相姦による子作りは続いていたのだ。


つまり、そんな親から生まれた旦那はかなり血の濃い人間で、旦那との間にできる子供は旦那に似て、障害を持って生まれる可能性が高いという事だろう…。


私は離婚する事にした。


こんな悍ましい家族と一緒にいるのは耐えられなかった。


両親も、こんな大事な事を隠して人の娘を娶ったのかと激怒し、離婚に賛成。


申し訳ないが、息子に愛着は全く持てなくなってしまったので、親権は旦那に譲った。





















それから5年後…


私はご縁があって、今他の男性とお付き合いをしている。


あの件があってから、見た目を最重要視するのはまずいと思い、好みどストライクでなくとも、総合的に見ていい人なら、多少は妥協しないとと思うようになっていた。


自分も人のことを言えたものではなかったので…


そして、水族館にデートに来ていた時、聞き覚えのある、あの耳をつんざく声が聞こえた。


「周りの迷惑になっちゃうから、静かにしなさい…」


それは、息子と元旦那であった。


旦那は前に会った時とかなり変貌していた。


整形前に顔が戻りつつあった。


整形しても、維持できなきゃ昔に戻っちゃうんだ…。


「どうしたの?知り合い?」


元旦那たちを身すぎたのか、彼氏が話しかけてきた。


「え?ううん。大変だなぁって…」


「ああ、障害でもあるのかな?大変だよね」


言えない。


その子は私が産んだ子で、一緒にいるのは元旦那なんて…。


元旦那と一瞬目があったような気がしたが、成長してさらに手がつけられなくなった息子に手一杯だからか、すぐに視線を逸らして息子を宥めていた。


また結婚して子供ができたら…いや、きっと今度はだいじょうぶ…

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