第22話 都市発展の方向性

『オヤカタ。終わったー』


「おう。ご苦労さん」


 採取したレアキノコを、ワンオペに食わせた。これで、コイツはもっと強くなる。


『オヤカタ、ムチャしすぎ。せめて二次職でとどめておいたほうが、よかったのではー?』


 ワンオペが、オレに語りかけてきた。


『【バトルオーラ】は強いけど、救済措置。ずっと出せるわけじゃないじゃーん』


「このゲームのメインはバトルじゃないから、いいんだよ」


 ディアボリック・ブルーは、あくまでも都市発展ゲームだ。

 なので、あまりバトルに偏重したくない。バトルも楽しいことは楽しいが、強くなりすぎるのも考えものだ。

 モンスターの素材を、ナタリーナたちと割り振る。


「強化素材は、ナタリーナの防御面に割くか」


 オレは足の装甲をいただいて、脚力強化を図るとしよう。


「昆虫型ボスの素材はいただけまセーン。ミスターキョウマの獲物でショー?」


「そうですわ。こんな高価なもの、受け取るわけには」


「デスデース。ただでさえ、街の発展に貢献してくださるのに」


 それもそうか。では、報酬として受け取ることにする。

 ベチョ、とオレの上腕に冷たいものが触れた。

 腕の方を見る。

 ナタリーナが、オレの腕に軟膏を塗ってくれていた。


「ああ、オレ、ケガをしていたんだな?」


「気づかないとダメ。冒険者失格」


「アハハ。悪い悪い。ありがとうナタリーナ」


 オレが礼を言うと、ナタリーナはプイと横を向く。


「ほほえましい光景デース」


「ですわ。誰も見ていなくてよかったですわね」


 レッドアイ夫婦がおだてると。ナタリーナはさらに意固地になってホホをふくらませた。


「それはそうと、都市はどうするか?」


 どうやって、発展させればいいんだ?


「ハチ型の魔物が多いので、ミツバチ栽培をしようかと」


 たしかにここは、花がたくさん咲いている。薬草用だけではなく、普通に雑草として生えている花々が、多く見られた。


「鉄道の光景としても、壮観。花畑は大事にして、その周辺を開発していく」


「いいな。あとは果樹園を大きくしよう。果実の酒を売ってもいいな」


 駅に戻る。


 複数の馬車が、駅近くに止まっていた。しかし、鉄道に乗る気配はない。みな冒険者で、代金がないからだ。よって、みんな見ているだけである。鉄道を利用する冒険者なんて、貴族のボディガードくらいである。


「馬車が通ってる」


「ああ。『道の駅』のようなものがあったら、いいかもしれないな。果実酒やジャムを、瓶に入れて売るとか。アイテムボックスなら、入れておいても腐敗しないからな」


 オレが提案すると、ジャックが「グッド!」と指を鳴らす。


「道の駅という発想がありましたか」


「たしかにここは、馬車の往来のほうが多いのです。冒険者は列車の代金を出せないので」


 だとしたら。


 ちょっと、ナタリーナと相談をする。


「……いいかもしれない」


「だろ? こういうのも手だと思うんだ」


 レッドアイ夫婦をおいて、オレたちはある結論に達した。


「なんのお話をなさっているのデース?」


「線路を、もう一本増やそうかと」


「ほうほう?」


「そこに小型の列車も通す。格安の賃金で、冒険者でも乗れる列車を走らせるんだ」


 メンディーニ地方の列車が小さいのは、運賃を安くするためだという。


 北ナマゾのような大規模サイズの列車を走らせようとすると、どうしても交通費がかかってしまう。維持費も大変だ。そこで、列車のサイズ自体を縮めて、一般利用も可能にしている。


「北ナマゾに元々ある鉄道は、そのまま貴族用に。それ以外にもう一本、メンディーニと道を繋ぐ」


 馬車は北ナマゾで降りてもらい、そこからメンディーニまでは列車を使ってもらえばいい。


 ナマゾ地帯は北と南の間に、険しい山々がある。馬車で乗り越えるには辛すぎるのだ。


「いいデースね! 大規模工事になりますが、北ナマゾじゅうの冒険者にかけあってみマース!」

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