第21話 裏ボス撃退 隠者の本気

 モヒートの刀を、グリフォンが受け止めた。【ディフレクト】……完全防御だ。


 グリフォンは攻撃をすると、確定でディフレクトが入る。つまり、一撃目は必ず防がれるが、硬直するのだ。自身の攻撃回数を一階減らすことになる。


 対策としては連続攻撃を放つか、パーティの誰かに攻撃してもらわなければならない。


「うらあああああ」


 今のナタリーナは、モヒートとフレンドで繋がっている。


 モヒートの背後から飛び上がり、ナタリーナがグリフォンの脳天へ剣を振り下ろした。斬るというより叩きつけるという感じで、グリフォンに攻撃を叩き込む。


 頭に物理+火炎ダメージを食らって、グリフォンがうつ伏せに倒れた。


「ナイスですわ、ナタリーナさん」


「モヒートもありがと」


 女子二人が、ハイタッチをする。


「それにしても、グリフォンが大ボスって、ユルくないか?」


「ミーも、懸念しているのデース。おや?」


 グリフォンの背中に、人間サイズの虫が止まっていた。丸まって、グリフォンの背中にしがみついている。


「もう一体ボスがいるぞ!」


「予想外デース! どうやらあの虫ヤローが、グリフォンやハーピーを操っていたみたいデース」


 先行したナタリーナが、魔煌剣で昆虫型魔物の脇腹に一撃を食らわせた。

 普通の魔物なら、これで吹っ飛んでいく。

 しかし、昆虫型は浮き上がりもしなかった。

 明らかに、規格外のモンスターである。


「どういうこった?」


「人数補正ですわ!」


 こちらの数とレベルが高すぎるから、ボスも強くなってしまっているらしい。いわゆる裏ボスになっちまってるってわけだな。


「どうやら、ミーのジャスティスが火を吹く番のようデース!」


 今度は、オレたちがやるか。


「イイェア! ゴートゥーヘル!」


 ジャックが、二丁拳銃の雨を降らせる。

 しかし、虫型人間には傷ひとつつかない。


「オーウ。トクサツヒーローじみた姿は、ダテではないようですネーッ!」


 結構ヤバい状況だというのに、ジャックは笑っていやがる。


「援護する!」


 オレは後ろに下がろうとした。


 が、ジャックが背中をオレにくっつけて押し返す。


「どういうつもりだ、ジャスティス? j火力はアンタの方が上だろ。手柄はいらないか?」 


「ノー。結構デース。キョウマが倒してくだサーイ」


「オレが倒せ、だって?」


「ミーは、ユーの底力が見たいデース」


 知っていたのか。まあ、いざってときに、切り札は取っておいたのだけどな。


「やるしかねえか。【バトルオーラ】!」


 オレは、武器である杖をしまう。スキルを発動すると、白い湯気のような光が全身を包む。【オーラ】は、【モンク】職が素手で戦うときに使う闘気のことである。


「さて、ゲンコツで殴り合おうか」


 オレは、ボスの懐に飛び込んでいく。

 相手も危険を察知してか、腕をカマ状にした。オレを切り刻むつもりか。


「キョウマ!」


「心配ない。援護は無用」


 オレは、腕を延ばしてカマを受け止めた。バトルオーラの影響で、オレにカマは当たっていない。それどころか、カマにヒビが入っていた。これがレベルマックスのバトルオーラの力だ。


 相手のヒザ蹴りを受け止め、回し蹴りを受け流し、軸足を蹴って体制を崩す。


 耐性が低くなったところに、顔面へパンチを見舞った。


 ナタリーナの剛拳でさえ微動だにしなかった虫型の裏ボスが、初めてよろめく。


「そうそう。アゴへいいのをもらうと、そうなるんだよ」


 コイツはおそらく、強敵と戦ったことがない。グリフォンに取り憑いていたのも、戦闘データを回収するため。つまり、エアプのようなもんだ。コイツはそうやって、宿主の戦闘力だけを抜き取って生きてきたのだろう。


 そんなデータ主義な戦闘法では、オレには勝てない。


「指示厨をナメるなよ」


 トドメに、オレは跳躍からの直線足刀蹴りを浴びせた。


 ヤツには絶対に解読できない、非効率な技である。


 だが、これがオレの最強技なんだから仕方ない。


 予想外の一撃を浴びて、昆虫型の裏ボスは砕け散った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る