第20話 三次職のデメリット

 ひときわデカい巣に、ハーピーの親玉らしきボスが。ハーピーと言うより、もう頭が鳥な人間だ。女子プロかよという筋肉美である。回りを、虫型のモンスターが飛び回っていた。


「オーウ。ハーピーのボスはグリフォンですカー? 相手にとって不足なしデース!」


「片付けて差し上げますわ」


 ジャックとモヒートのレッドアイ夫妻が、武器を取り出す。


「うらああああ」


【トルネードスピン】で回転しながら、ナタリーナは虫を蹴散らしていった。そのままグリフォへ接敵する。


 ボスだけあって、グリフォンは強かった。ナタリーナの魔煌剣を、ムキムキの腕で受け流している。


「【ミラージュボム】でけん制するから、そのスキに懐に飛び込め!」


 オレは裏方に徹し、ナタリーナに攻撃を任せた。分身を発動して、グリフォンへと叩き込む。


 グリフォンもこちらの意図をわかっているのか、翼をはためかせる


 ミラージュボムが、風で吹き飛ばされてしまう。 


「この敵、めちゃくちゃつえーぞ」


 外野から、オレはアドバイスをした。


「うーせーなあ、キョウマ。守ってもらってる立場でしょー?」


 舌っ足らずな声で、ナタリーナが文句を言う。

 事実、オレよりナタリーナの方が、攻撃力は高い。

 だから、オレはオレの仕事をする。

 群がる昆虫たちを、【モンク】の格闘で殴り飛ばす。


「さて、めぼしいものは。【珍品採掘】っと」


【レンジャー】の探索技能で採掘・採取や罠突破をしていく。


「敵が邪魔だな。【精霊召喚】。任せたぜ、ワンオペ」


『おやすいごよー』 


 アイテム回収は、【シャーマン】の召喚する精霊に頼む。

 オレは全体攻撃魔法を放ち、ワンオペの通り道を確保した。

 ワンオペは、ハーピー共が盗んでいった作物を回収していく。


「ウワサには聞いていましたが、やはり三次職は火力不足が懸念デース」


「まったくだ。ここまでとは」


 三次職も色々あり、【賢者セージ】は三種類の魔法の専門家だ。攻撃・回復・召喚が使える。


 【勇者ブレイブ】は、物理攻撃も魔術による戦闘も可能だ。


 ただ、こういった戦いもデメリットがある。レベルに上限が設けられるのだ。


 一次職一択を重点的に上げると、レベルは一二〇までアップする。

 二次職は二つ分のレベルを経由するので、それぞれ六〇止まり。

 三次職に至っては、四〇が限界だ。


「なんでもできるかわりに、威力も三分の一に低下する」


「おーう。『なんでもできるは、なんにもできないに等しい』のですネー?」


「そういうこった。欲張るとこのザマさ。だが、この不自由さがちょうどいい」


 わかりやすいのが【シーフ】と【モンク】を経由する【ニンジャ】だ。以前、野良で組んだニンジャが、宝箱の罠解除に失敗して毒矢を受けた。シーフの罠解除能力が半減したせいのだ。そのニンジャは冒険を続けているが、宝箱のトラップには挑んでいないらしい。


 二次職ですらこれだ。三次職だと、もっと悲惨である。今のオレがそんな感じ。


「ですが、ユーもミーたちも、【パラゴン】を手に入れていマース。特に弱体化とまではいかないのでは?」


 パラゴンとは、レベルが上限に達したものにだけ授けられる、恩恵のようなものだ。追加でステータスのアップも可能である。さらに、アイテムでしか得られない効果を、キャラクター自身に付与できるのだ。


「【パラディン】のミーは、【エンチャント】で武器に火力を付与していマース。モヒートも同じデース」


 モヒートはナタリーナのバックについて、


「火力に振っていないんだよな。ナタリーナの見せ場を奪うから」


 オレはこのゲームに、バカみたいな火力なんて求めていなかった。一次職を極めたナタリーナにこそ、そういった技術はふさわしい。


「三次職に惹かれたんだよ。なんでもできるけど弱いって、ロマンがあるだろ?」


「縛りプレイとか、楽しいですもんネー?」


「特化型も、一通り極めたんだけどな。できることが多いってのはいいもんだ」


どうしてこうも雑談をしているかと言うと、グリフォンとの戦闘がもうすぐ終わるからだ。

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