第13話 列車開通

 ナタリーナの方も、オーガの撃退が終わったようだ。


「派手に暴れたな」


 活動振りを見て、オレは呼吸を整える。


「時間がかかった。キョウマなら、もっとやれたはず。分身爆弾より威力のある、【雷光拳】を使えばよかった」


【雷光拳】とは、モンクの打撃スキルだ。雷属性魔法を込めたパンチを、対象に打ち込む。

 オレのジョブ【隠者ハーミット】は、モンクを経由している。当然、オレも雷光拳は使えた。威力は本家モンクの三分の一程度だが。


「雷光拳なんて使ったら、大爆発を起こすだろ? トンネルやダンジョンでは使えない。周りをよく見てみろ」


 自分の戦いぶりを、ナタリーナに見直してもらう。


 剣を収めて、ナタリーナは「むー」と辺りを観察し始めた。


「……!?」


 ナタリーナも、気づいたようである。


 派手に暴れすぎて、トンネルがボロボロになっていた。こいつは、再調整が必要だろう。


 ここはオレたちだけではなく、作業員も入っていく。


 なるべく被害を最小限に抑えたかったので、オレは強力な技を出さなかった。


「むう……」


 自分がやったことを気にしてか、ナタリーナはホホを膨らます。


 しかし、しょうがない。新しい武器を手に入れて、舞い上がっていたのだろう。オレも新武器を手に入れたら、ナタリーナと同じ様になっていたかも。


「しばらくは、わたしたちだけで修繕。キョウマも手伝って」


「はいはい」


 ナタリーナと共に、オレはダンジョンの整備を続けた。

 その後、ハンメルで売買を終えて宿に泊まる。


『ブキミししょー、今日は失敗した。トンネルを壊した。わたしはダメダメドワーフ』


 オレが風呂に入っていると、ナタリーナから通信が。落ち込んでいるようだな。


『あなたは、がんばったじゃないですか。壊れたものは、また作り直せばいい。その成果はきっと実ります。他の人たちも見てくれていますよ』


 ブキミししょーとして、オレはナタリーナにアドバイスを送った。ナタリーナは、オレが「ブキミししょー」だとは知らない。


『ありがと、ししょー。おやすみなさい』


 オレも、おやすみを返す。




 しばらくすると、開拓地に家ができ始めた。スラムからこちらへ移り住み、畑を耕す者も。

 運搬頼みだった場所が、自給自足が可能な村に近づきつつある。

 主な収益源は、まだ薬草と果実のみだ。畑が完成したら、また新しい作物が撮れるように鳴るだろう。

 ハンメルの街から数日かかっていたが、街に近い位置に家を建てたので距離も近くなっている。トロッコのおかげで、時間もかからない。


 ペペルも、この村に移動していた。薬草管理は、おもに【ハーバリスト】である彼女の仕事である。


 そんな感じで開発が進んだ頃、とうとうこの駅にも列車が通るようになった。


「列車だ!」


 列車が、止まる。SLのようなゴツゴツ感はない。観光地でよく見る、小さな列車だ。とはいえ、トロッコとは比較にならないくらいには大きい。


「やあ。ここが開通したってんで、試運転に来ました」


 運転手が、こちらにあいさつをしてきた。


「こんにちは」


 ナタリーナだけでなく、村全体で歓迎する。


「今のところ、ここが終点ですね?」


「うん。転車台もある」


「そりゃあすごいな。モンスターだらけだったこの場所に、人が住めるようになるなんて。しかも結構、短期間ですよね?」


 転車台で、列車が方向転換を行う。


「人の手を借りずに、自動かい? たいした時代になったねえ」


 魔法で動く転車台に、運転手は感激していた。彼いわく、本当はモンスターだらけのナマゾ地区沿線なんて、通りたくもなかったそうだ。しかし走ってみて、考えを改めるとか。


「どうも。お話できて、楽しかったです。ところで、駅長にあいさつをしたいのですが」


「……すうー」


 しまった。駅開発に精を出しすぎて、駅長の存在をすっかり。

 オレもナタリーナも、ダンジョン攻略で忙しい。他の人にやってもらう必要がある。


 とはいえ、適正なんて。でも、一人心当たりが。


「ペペル! お前が駅長やれ」

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