第一部 絶望と堕落

※一部不快な描写が出てきます。


 城から出て、酒場に向かっていた俺様は、路地でガラの悪そうな二人組と肩がぶつかった。まだ、いら立ちが収まらない俺様は、素っ気なく謝っておく。


 「あ? すまない」

「おい! 待てよテメェ!」

「兄貴にぶつかっておいて、何だその態度は!」


 俺様が謝ってやっているのに、絡んでくるとは。見た目通りのガラの悪さだな。

「はい? だから、謝っただろ?」

「はぁ? 謝っただと? そんな態度で許すと思ってんのか?」

「地面に頭を擦り付けて、金目の物を差し出して謝りやがれ!」


 チッ、イラつく連中だな。

まぁ良い、腕試しだ。俺様は元の世界で、格闘技を一通り習い、どの競技でもトップだったからな。でも先ずは、


 「鑑定ハローワーク」

チンピラ兄貴【農家】

チンピラ【司書】


 これは、少量の魔力で相手の職業を見れる魔法だそうだ。案の定こいつらは、ガラは悪いが、戦闘職じゃないな。職業は神が決めた本質みたいな物と聞いてはいたが、【農家】と【司書】とは、とんだ笑い話だ。


 「フッ! フッ! フッ!」

俺様の鋭い連続ジャブが、チンピラの頬穿つ


 ・・・穿ったはずだ!


 「あ? 何だ今の? 赤ん坊でももう少し力があるぞ?」

「兄貴! コイツ職業がないですぜ!」

「何だそれ? この世界最弱じゃねぇかよ。 フン!」


 瞬間! 俺様の腹にめり込む拳!


 「がッハ! おぇ~!」

あまりの威力に俺様は、思わず膝を付き、胃の中の物を吐き出した。

「うわ! 汚えなコイツ」

「一撃でダウンかよ。本当に弱いな」


 信じられない! 腹の痛みと嗚咽で、揺らぐ思考の中で、俺様は驚きを隠せなかった。

戦闘職でもないコイツ等が、こんな力を持っているだと? ありえない?! 何なんだこの世界は?


 「コイツ、口程にも無かったな。取り敢えず金目の物を巻き上げるか?」

「兄貴、でもよコイツ、ここらじゃ見ない系統の顔だ。それに女見たいな顔つきで悪くねぇ。」

「そうだな。珍しい顔だし、力もねえから扱いやすいだろう」


 何だ? なんの話をしているんだ?


 「金目の物を剥いだら、いつもの娼館に売っちまうか!」

「オウ! でもよ、その前に味見ぐらい良いだろ? 兄貴」

「お前も好きだな? さっさと終わらせろよ?」

「へっへへ」


 娼館だと?ふざけるなよ! それよりもコイツは何をするつもりだ?


 まだ動けない俺様を、うつ伏せにし、組み伏せたチンピラが、俺様のズボンと下着を剥ぎ取りやがった!

「安心しろ? 可愛がってやるからな?」

俺様の尻に当たる硬い感触。

まさか! コイツ!

「やめろ! ふざけるな! やめてくれぇ〜!」

俺様は、必死に暴れて抜け出そうとするが、びくともしやがらない!

「へっへへ。それじゃあ、いただきま~す」


 俺の下半身に奔る激痛!

「ぐわぁ〜〜〜!!!」

半狂乱になって叫び続ける俺様だったが、あまりの激痛にいつかは、意識を手放したのだった。


 ・・・


 ん? ここは、何処だ?

気づくと俺様は鎖に繋がれ、知らぬ部屋にいた。くっそ、尻が痛む! 尻が血と便でグチャグチャだ。あの野郎必ずぶっ殺してやる!


 「目が覚めたか?」

俺様の目の前には、醜く太った男がいた。

にしても、この部屋。無駄に熱いな?


 「なんだこれは! ここは何処だ? 俺を解放しろ!」

「威勢が良いな? だが本当に職業はないらしい。まぁ器量は良いし、身体もしまっていて悪くない」


 俺様を無視するだと? なんて馬鹿な奴なんだ!?

「俺は、王家が勇者召喚して呼び出した、転移者だぞ? 早く解放しろ! 今ならまだ許してやる」


 これで、コイツはビビって解放するはずだ。

「転移者だと? 王家か、確かに厄介だな」

「そうだ! 早くこの鎖を外せ!」

「で?」

「は?」

「確かに王家にバレると厄介だが、そんなもの俺の娼館ならいくらでも、揉み消せる。お偉い貴族様も、贔屓しているからな?」


 何を言っているんだ、コイツは?

「さて、良い情報が聞けて良かったよ。

喜べ? バレない為にも、お前が相手をするのは金持ち共に限定する。まぁ何をされても文句は言えんがな?」


 そう言いながら、おそらく娼館の主であるコイツは、部屋のすみに置いてある、鉄の棒が刺さった壺に近づいて行った。

そしておもむろに壺から棒を引き抜くと、

そこには熱されて赤くなった、焼印が出てきた。この部屋の暑さの原因はあれか?!


 「何をするつもりだ! やめろ!」

まるでさっきのデジャブだ! 鎖で身動きの取れない俺様に、下卑た笑いを浮かべゆっくりと、近づいて来る男。


 「安心しろ、お前は顔が良いからな? この印は背中にしてやるよ」

そう言うと、コイツは残っていた俺の服を剥ぎ取ると、焼印を背中に押し付けてきた。


 一瞬の暑さを感じたが、次の瞬間には尻の痛みとは比べ物にならない。痛みが襲ってきた!


 「ぐっわぁ〜〜〜〜〜!!!!!」

痛い! イタイ! イタい!

肉の焼ける不快な臭いを感じながら、俺様は叫び続けた! 叫び続けることしか出来なかった。気づけば声は枯れ、床に惨めに転がり続ける俺様。

なんで俺様がこんな目に合わないといけないんだ! 元の世界でパーフェクトだったこの俺様が! 全ての頂点だった俺様が!


 痛みでまた、意識が遠のいていく・・・

「ようこそ、俺の娼館に。せいぜい死なない程度で稼いでくれよ?」


 俺は、落ちきった。

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