バックトラック

――戦闘中にも、自らの能力を低いと自称する二人、双葉と直人は会話を交わしていた


直人:「……なーにが弱者だ。あんなキワモノを十全に扱えている時点で、貴女は十二分に超人オーヴァードですよ、双葉さん」


双葉:「弾速が違う弾をぶつけて狙い通りの場所に飛ばすなんて羨ましい超人オーヴァードぷりだわ」


直人:「双葉さんも、来てくれてめっちゃありがたいっすよ。いかんせんうちの支部はタンクのりっさんと俺なんで火力不足が甚だしくて。最近天音さんが入ってくれたおかげで多少は改善されてたんですが」


双葉:「そうね。一葉は火力として優秀ですからね。憎らしいことに」

   自分の力だと思おうとしない


直人:「一葉さんと双葉さんの二人が、ですよ。なにせ俺の仕事は人数っていう足し算を掛け算にすることなんで。一葉さんだけじゃここまで上手くいかなかった。ありがとうございました、〝双葉さん〟」と、最後を強調する。


立花:「まあ俺もコイツ(エッジファイター)がいなきゃ柔らかおっさんだからなァ。あんまり自分を卑下しすぎんなや、直やんも」


直人:「これは芸風なんで、早々には改善できないっすね!」


立花:「なるほど、芸風なら仕方ねぇなァ。本部の嬢ちゃんのも芸風かい?バラエティ豊かで結構結構。ガハハ」


双葉:「芸風じゃないです!」


――無表情に、無感動に見えるものの。確かにここで出来た絆はあるようで


一葉(従者):「無表情に見えるでしょうけど、こいつ結構な勢いで喜んでますよ‼」


――一番の理解者が、茶化すように言い放った


【赤口双葉。等倍振りで日常に帰還】




立花:エッジファイターの操縦席から這い出て、その方に腰掛ける。ジャケットの内ポケットから取り出したのは、なかなかやめられないタバコだ。

   思えば、吸い始めたのは麻生に勧められたのがきっかけだったか。支部長仕事なんてのはコレに頼らんとやっとれんよと笑っていた奴の姿が脳裏に浮かぶ。

   火をつける。肺いっぱいに煙を吸い込み、吐き出す。まだ長いタバコを、手向けとばかりに放った。


   「……アバヨ、麻生支部長」


   立花は誰にも聞こえないくらいの声音で呟いた。

   ロイスはとらない。奴との関係はここでおしまいだ


【真砂立花。等倍振りで日常に帰還】




直人:「……桐坂も最後に役立ちましたね。あの人も天音さんと同じ、平和を望む人間だったと。半信半疑でしたが、あれは、嘘ではなかったようで」

   と肩をすくめて彼にロイスとります


   (ころころ)……好意と劣等感。


   さて。バックトラックいきましょうか。


【志木直人。等倍振りで日常に帰還】



――――そして最後の茶番――――

天音:まだ枠が空いてたし、最後に一葉さんにロイスの取るのだけやっときたいな

   (ころころ)……純愛、敵愾心。は?


GM:なんで最後の最後で事故ってんねん!!!


天音:待って! 百合は勘弁! 降り直しを! 降り直しを!


直人:TS百合は百合じゃないと怒る派閥も居るのでお気をつけて!(まだ桐坂になる可能性がある為)


一葉(従者):「男でも女でも歓迎するわよ」


GM:振り直しを許そう……


天音:(笑いながらダイスを振る)


   (ダイスが止まる)


   (結果は純愛と不安)


   ……………まるで、

   まるで、運命の人……?


――――二回目の振り直しで尽力と厭気が出ました――――




――最後のその瞬間、桐坂将は今までの事を思い返していた。これまでの時間、自分が歩んできた道、それを少女一人に譲り渡す判断をした自分に自嘲する


けれどよかったのだ。これでよかったのだ。自分があの身体を手に入れてしまえば全てのロイスは返り、ジャームへと落ちてしまう。そう、桐坂はただそれを厭った


赤口一葉への、その態度に辟易しつつもなんとかしたいという感情も

赤口双葉への、不信を感じつつ確かに接していきたいという思いも

志木直人への、どこか寂しく感じながらもその意思と共にありたいという気持ちも

真砂立花への、疑われている事を悲しく思いながらもその力を頼る事も

そしてシスターへの、恐れながらも心の底から信頼しているという気持ちも

その全てを、桐坂将は捨てたくなかっただけなのだから



「まぁ、なんだかんだ――」


心の中だけで呟き、桐坂の意識は解けて消えていく。これからはきっと、天音の一部となるのだろう


「楽しかったよ。僕に、こう言う気持ちを受け継ぐ人が出来るだなんてね」


【涼良木天音。等倍振りで日常に帰還】












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