第4話

 ある日曜日、沙那さなは久屋大通公園で芝生のわきのベンチに座って建ち並ぶビルを眺めていた。週6日で働く沙那にとって日曜日は文字通りの安息日だった。ペットボトルの水をカバンにしまって目を上げたとき、見覚えのある顔が電話しながらこちらに歩いてくるのが見えた。高校3年のとき同じクラスにいたような…。近づいてくる。「三田くん?」彼は立ち止った。「ああ、分かった。じゃ切るよ。それじゃあな」電話を切り、沙那を見つめる。「おお、陵さんじゃん。久しぶり。何してんの?」「天気いいから外に行こうと思って。三田くんは?何してるの?」「いや、俺は京一と久しぶりに電話してたんよ。覚えてる?田辺京一」「京くんね。覚えてる。よくケガしてた」「そうだったな、あいつは常にどこかに包帯巻いてた」「ね、せっかくだからさ、連絡先交換しない?」「いいよ。俺たち、卒業してから連絡先交換するなんて不思議だな」創は高校生の時とは別人に思えるくらいやつれてしまった沙那を不思議に思った。なにか病的なものを感じた。

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