第11話 Bubble burst

金曜日の夜、怠惰な格好で映画を見ている。

同世代が4人も集まればだいたいこんな感じだ。

パジャマ、ジャージ、ピザ、チョコレート、ジュース、アイスクリームにポテトチップス。それからポップコーン。


「あたしクレープ食べたい。誰かパシって」

めぐみはイラついていた。学習に集中できない日々が数日続いているからだ。おへそを出しながら何か良い方法はないかと検索に余念がない。

「自分で行けよ、、」

と思いながらも誰も何も言わず映画に集中しているフリをしてその場をしのごうとした。

そのうち何か良いアイディアが見つかったのかめぐみは黙って検索に集中し始めた。

体の傾きとか呼吸のスピードとかそういうちょっとした癖をすぐに見つけられるのは帝都だった。彼のオッケーの合図でみんながようやく深呼吸できる。


「消化試合になるね」

ポップコーン機械を買った。スチュワートが家でポップコーンを食べたいと聞いたヴィクトーがすぐに機械を取り寄せてくれたのだ。なぜか知らないがスチュワートはその日からポップコーン作りにハマり出した。ポンポン弾けるとうもろこしをよく写真に撮っている。凝り性なのはめぐみに似ている。迷惑なのが我が家にまたひとり増えてしまった。基実は食べたくもないポップコーンを食べながらそう思った。今日は塩味、明日はキャラメル、明後日はコンソメ、ああ、昨日はストロベリーチョコレートだった。

「まあね。でもいいんじゃない?別に困らないでしょう?時期的にも反転機だし、最後の仕上げになれば男爵も嬉しいんじゃないの?」

セオが来週末に来日すると連絡が来た。

初めて会うセオにめぐみは少し浮かれている。浮かれている姿がイラついて、帝都と基実はポップコーンをひたすら食べている。スチュワートはそれがわかってたくさん作ってくれている。

「ねえ、セオは僕らの親戚じゃないよ。男爵の家系の子。だからアメリカの金メダリストは特別だったんだよ。意味が違うの。俺と君しか親戚に同世代はいないから」

キッチンから声が飛ぶ。脈絡のないところも血筋なのかと帝都は唖然とする。その話は今じゃないだろうと血の気がひくのは理知的な基実だ。


「そんなことお勉強してるから知ってるよ。だから楽しみにしてるのよ」

絶対キレると思ったのに、知ってたの?と帝都と基実の目が泳ぐ。


「それどういう意味?俺と会うのは楽しみじゃなかったってこと?」

逆にこっちがキレたー、え、なんで?

帝都と基実がもう見ていられないと映画に集中する。ポップコーンの消費量も増えていく。


「先回りして考えすぎ。あたしスチュワートについて今一言も触れてないんだけど」

お前だっていつも先回りして考えすぎてるじぇねえか、帝都と基実は一瞬目があった。でもすぐにそらした。こういうちょっとしたアイコンタクトほどめぐみはめざとく見ている。バレたら矛先がこっちにくる。触らぬ神に祟りなしだ。


夜が更けていく。ポップコーンの機械はいまだにフル稼働している。映画は3本目に突入した。誰もこの場から動けない。


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