第5話 三閉免疫不全法

三閉免疫不全法が施行されて以来、亜種白路によるイレブンスが幅をきかせるようになった。SWLカンファレンスは事実上の三閉免疫不全法の抜け穴として設置された監視システムだった。

SWLカンファレンスの理事メンバーである多胡開望、Zyayla、長尾紀営、藤村高司、多胡芳実、須野糸成、それからスカーレットと麻野道信はSWL創設メンバーでもあった。

Food Hoods Delivaryという植民会社においては、開望がオセアニア地域を、Zyaylaが南アメリカ大陸を、長尾がヨーロッパを、芳実がアジアを、藤村高司がアフリカを、須野が北アメリカの支社長を務め、スカーレットが島内と本社の事務を取り仕切っていた。

Food Hoods Delivaryが扱う商品は、炭水化物が多く含まれている、米、小麦、砂糖だった。9UN-Bank Stockを購入することでFood Hoods DelivaryがMjustice-Law家の仲介を担うという仕組みだ。

この植民会社がめぐみや衣子を担保として証券を売っていたことはすでに周知の事実だと思うが、商売をするにしても広告塔がめぐみや衣子というわけにはいかない。そこで財政の麻野道信がセールスマンに抜擢されたというのが事の経緯である。

海外でも亜種白路の被害が多く報告されているのはこのFood Hoods Delivaryの影響が大きい。

「なぜ、当代の名前が担保として出てこない?今の当代は男性のはずだ」


鉄原野と銅河原でほぼ同時に問題が発生した。

Food Hoods Delivaryが植民会社を登記した国から子どもが消えるという不可解な事態が数多く報告されるようになったのだ。最初は子どもだけだったが、そのうち被害を届け出た家族も忽然と消えてしまう。

ファリサイ派で罰を担当していたアメリカとサドカイ派で受刑を担当していたロシアは互いに疑いあった。互いの権益は荒らさないというポリシーが互いの疑心を強めていったのかもしれない。


アメリカとロシアの疑念の応酬と同時期、銅河原ではケルビムで清掃を担当するイギリスとセラフィムで整地を任されているフランスに頻繁にスカーレットと麻野道信が訪れるようになっていた。

いつきてもどんな話をしても結局は衣子とめぐみの話になってしまう。

「なぜスカーニーの話をしないのですか?」

エリザベスが率直に聞いたことが記録として残っている。翌日、エリザベスは時空旅人となってしまったことを世界が共に悲しんだ。

「国葬にすべきだ!!!国葬にして事態を知らせる必要がある!!!」

亜種白路はイギリスの剣幕に驚きながらも、自分たちも麻野を埋葬することで帳尻を合わせる作戦を思いついた。帳尻合わせだから、後でも先でもかまわない。

麻野は埋葬後、自由に動けるようになった。死人に口なし、死ねばみんなが仏になるというアレである。


セブンティーンズは銅河原特殊部隊だ。百舌鳥柄とKTCの共同経営で、国籍不明の多くの労働者がSWLの監護施設よりも劣悪な収容施設で10時間以上の労働を強いられている。

「銅河原国籍はどのみちインフルエンサーとして従属し続けることだから」


三閉免疫不全法はスカーニーが副業の地として安住を望んでいた一帯を寄留地と定める法律だった。そこでは基本的人権は存在しない。差別感情を形成したのはもちろん銅河原国籍で強制労働を強いられているインフルエンサーたちだった。

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