第4話 三閉免疫のDNA

法律を勉強し始めためぐは見違えるほどしっかりしてきた。俺は中学時代のめぐを思い出して少しだけセンチメンタルな気分になった。

「君は勉強することは好き?」

「うん!」

夏休みの子どもたちの日焼けしたあの顔に似ていた。満足そうで得意そうで成長したと実感しているあの頼もしい顔に。


三閉免疫家業の人々が、右炉、左吾、央観を超えて烏鷺棋の廃棄処分に参加している。夏休みを利用して出張に来ているのは何も国内だけの話ではない。

アマンダとジョンは率先して招待状を送っているし、カイルやシャルルは同業者と同郷の友人たちに声をかけている。さながらTea Partyのようだとエリザベスもロイドゼラも喜んでいた。

「時空旅人としてまだ生きられているけれど計画が遅れているからあたしたちも鉄原野が金海になる日を迎えられるか心配な時は多いのよ」

俺は鉄原野で死にそうなほどに苦労しているけれど先がある。時空旅人という次のステージがあるけれど、彼女たちはすでにそれは切ってしまった。片道切符で戻ってこれるかどうかの瀬戸際に立たされている時空旅人をひとりでも多く金海に招きたい。

銀河を超えた金海は永遠の命を意味する。


「めぐちゃんがどうしてそこまで怒ったか聞いてみてくれない?」

バロウは麻野道信との付き合いがかつてあったせいでめぐとの接触を控えている。

烏鷺棋の廃棄処分がここまで気合が入っているのはかつてないと旧秘書客体は怒り狂っている。たしかに俺も思った。なぜ彼女はここまで厳しい処分をスカーニーに申請したのだろうか、と。


「基実くんと帝都との関係をいろんな方法使って邪魔したから。あたしたち最初から両思いだったのに。あたし、糸成のこと好きなんて一度も思ったことないの知ってるでしょう?ジェラルド麻野もそう、藤村玲だって三条院忠兼だって、紀平智柚だって奈河康国だって、一度だっていいなって思ったことないのに。勝手に決められて、勝手に話進んで、、そのせいで基実くんと帝都と10年も会えなかったのよ!?本当なら10年前に会えていたのに。時間は有限、その大切な10年を奪われたのお金に換算したら払えるような額じゃないんだから」


めぐは俺や帝都のことになると海賊みたいな怒りを爆発させる。およそ女であれだけの度胸は発揮した人を見たことがない。普段は神経質で人見知り、臆病で優しくて何もできないって泣いているくせに。


めぐは随分変わった。強くなった。そうほめるとめぐはかならずムキになってこう言う。

「基実くんがそう言うから期待に応えて強くなったの。もう言わないでよね、あたし弱いんだから」

俺にしか甘えない彼女が愛しいと思う。

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