第2話 良家子女のバカンスーIOSー
断崖絶壁からダイブすることは俺たちの時代は流行の最先端だった。
俺には同時代を同じように生きた友人が数人いる。
フランスのヴィクトーとイギリスのアーサーとアメリカのジョセフ。
アーサーにはヴァージニアというアメリカ人の彼女がいて、俺たちはいつも5人で断崖絶壁からのダイビングを楽しんでいた。
秘書とか家の人間に見つかると面倒だからと身分も名前も変えて夜の街を徘徊した。
免疫稼業のはじまりがそんな名門良家の子供たちの度胸試しだったとは世界中誰も信じてはくれなかった。
ヴィクトーはその後、名門良家を廃止して一般の資産家となった。
アーサーは俺の秘書をやると申し出てくれて、ジョセフは免疫家業以上に免疫系の仕事に専従することで俺を支えてくれている。
「スカーニーだけは家督を放棄することはできないもんね」
同情したヴァージニアに腹が立って一度だけ彼女の顔をぶん殴ったことがあった。間髪入れず、コンマ数秒で俺はアーサーから右フックと左ストレートをかまされマットに沈められた。
「いい気になるなよ」
殴られたのは後にも先にもあの時だけだった。
本気で俺を殴れるのはアーサーだけだと理解してあの事件以来Mjustice-Law家の秘書を任せている。
免疫家業はそのうち廃業になるべきだというのが俺たちの見解だった。少しずつでいい、そういうものがなくなることこそ秩序が整っていくということだからと。
「スカーニー、亜種白路は免疫系を認めたのか?」
「いや、、、それはない。2010年以降俺はそうならないように締め出した。アーサーには一番に言ったじゃないか」
アーサーとジョセフが顔を見合わせる。
「何があった?」
「ヴァージニアウルフなんか怖くないってさ」
ヴィクトーが真っ赤に塗られたヴァージニアのコラージュ写真を俺に見せた。
「なんだこれ、、、」
「大丈夫よ、スカーニー。アメリカ人のあたしだから。あいつら、あたしがイギリス人だと思ったんでしょう」
「ジョセフ、、、」
「いいんだ、わかってる。あいつらにはお前の親父さんの代から俺たちもムカついてたから。これではっきりしたから、いいんだ」
三閉免疫家業はこの島では右炉、左吾、央観でなりなっている。
しかし鉄原野はこの島だけではない。
イギリスのケルビム、フランスのセラフィム、アメリカにはファリサイ派を行うためにラファエルとミカエルがある。
ケルビムはアーサーが、セラフィムはヴィクトーが、ラファエルはジョセフが、ミカエルはヴァージニアが運営している。
烏鷺棋の後始末は鉄原野全体で取り組んでいる。
Immunity of steel、通称IOS
「裁きの天使ミカエルがヴァージニアなのは一番傑作だよな」
そう俺に耳打ちをしてきたのは他でもないアーサーだった。
亜種白路たちはそれでもヴァージニアウルフなんて怖くないと言えるだろうか?
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