三閉免疫家業

恩賜芍薬/ Grace Peony(♂=

第1話 鍵の在処

左吾家、右炉家、央観家の免疫系三代財閥の通称が三閉免疫として俗称化したのはMjustice-Law家がファミリーとして登録された時期と同じ頃だと言うことをどれほどの人が知っているだろうか。



左吾家は今スカーニーが、右炉家は4兄弟の長男である真司さんが、央観家は翠蘭さんが仕切っている。

この翠蘭さんはもともと中国人でご両親と共に移民としてこの島に渡ってきた人だ。お父さんの生まれはチェニス、でも育ったのは香港で、フランスの大学を出たかったけれどご両親の金銭的援助が得られず、この島に出稼ぎに来たことがこの島との最初のかかわりだったという。お母さんはこの島で生まれたけれど閉鎖的文化が性に合わずノイローゼになりかけて、一番近い韓国の大学に進学したらしい。でも韓国はこの島の人が多いから4年住んでも理解に納得ができず、そのあととうとう2年かけて世界中を渡り歩いたという。その中で最も素晴らしかった中国に定住してのちに翠蘭さんのお父さんとなる人と出会ったのだそうだ。


ちなみに最近知ったのだが、翠蘭さんは多胡さんとLeeのお姉さんらしい。これはあまり公には言っちゃいけなかったことかもしれないけれど、あたしが当代だからもう言ってもいいと思うので言うけれど、多胡さんとLeeは双子だ。



10年前、亜種白路や白百舌鳥連闘、KTCの策略で三閉免疫症候群が不全だと法的に認定されてしまうまでは左吾家も右炉家も央観家も互いにライバルとして大なり小なりはあるもののよく戦争をしていたという。

「でも戦争できただけよかったっていうかね。今じゃみんなまとめて不全。だからこの世界では生きられませんのレッテルが貼られて、完全監護、俺たちに言わせりゃ完全飼育ですよ。めぐちゃんと同じかな」

あたしは彼らに敬愛の意味を込めておじちゃんおばちゃんたちと呼ぶ。育ての親である正宗さんによく似ているから亜種白路よりも親近感があったし、おじちゃんやおばちゃんたちはあたしが泣くと心配して不随の足を引きずって駅までよく迎えに来てくれた。

「おじちゃんたち困ってるの?」

3年前だったか、4年前だったかよく思い出せないけれど、初めて出会ったおじちゃんやおばちゃんに聞いてみたことがあった。

「そんなに困ってるわけじゃないけどね」

おじちゃんもおばちゃんも可愛い爽やかな笑顔でそう答えた。本心だろう。

でもそれが真実じゃないことはすぐにわかった。嘘、、、あたしは嘘をつかれると悲しくなる。あたしにだってできることがあるのに子ども扱いされたような気がして悔しくなる。


おじちゃんおばちゃんとの出会いがあたしの4年後をこんなに大きく変えるとはそのときは想像もしなかった。おじちゃんやおばちゃんとの出会いが亜種白路や白百舌鳥連闘やKTCの神経を逆撫でするなんてもちろん予想もしていなかった。


今あたしが街を歩くと三閉免疫系の人たちが亜種白路たちとは違った目線であたしを見つめる。

「あれがスカーニーさんと翠蘭さんの娘か、、、」

Mjusitice-Law家はこの島では三閉免疫として活躍していた。だからMjusitce-Law家の創設と同時期に三閉免疫という俗称が広められたのだ。

莫大な財産を隠すためには何にしても何をするにもシンメトリーとする必要があった。


あたしの血が酸化したような黒い血の色をしているのは実際理にかなっている。

Mjustice-Law家はこの島では真っ黒な三閉免疫系だからだ。家族にしかわからない理屈をDNA鎖の蛇システムに書いたのはLeeと母だった。だから亜種白路はいつまでたっても鍵を見つけることができなかった。システムを作ったその時からシステムを見ていても謎が解けなかったのは彼らが一族ではなかったからだ。


亜種白路はそれだけにとどまらず表の看板のみに着目し、三閉免疫を症候群から不全にしてしまった。

「後の祭りにするつもりはなかったんだけどねえ」

おじちゃんたち可愛い爽やかな笑顔で笑う。

「おじちゃんたち困ってるの?」

「うん、多少ね」

本心だろう。でもこれも嘘。明日のことを考えているはずだ。

「ねえ、基実くん、帝都、おじちゃんたちって本当のこと言わないの?」

次代の左吾家は基実くんが、右炉家は帝都が頭取に目されている。

「しらね。めぐ、そんなことよりやることやろうよ」

三閉免疫系の男の人はあたしと違って体力がある。本当にうらやましい。生まれ変わるなら健康優良児で生まれたいと思っているほどにあたしは体が弱い。

これもシンメトリーの法則ならMjustice-Law家と三閉免疫系は間違いなく同一人物だ。










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