第8話 交換鉄砲玉
綾子が午後九時前におばあさんのところから帰されるようになったのは、今から一か月くらい前からだった。おばあさんのところにやってくる訪問者は、言わずと知れた和田だったのだが、おばあさんは和田がひき逃げで捕まり、そして二年という服役をしていたのは知っていた。
何度か面会に行ったこともあったが、その時、
「出てきたら、私のところに顔を出しなさい」
と言われていた。
和田は、他の誰も信用できないと思っていたが、このおばあさんだけは信用できた。もっとも、
「信用できる人間は一人いればいい」
と思っていた和田だったので、その一人が見つかったことは、万人の味方を得るのと同等なくらいに嬉しかった。
今までの損ばかりしてきた人生の中で、信用できると思ってきた人間の何人から裏切られたことか、
「人間なんか信用した自分が悪いんだ」
と思ったりしたこともあったが、頭の中で紆余曲折を繰り返す中で感じたのが、
「信用できる人は一人だけなんだ」
という思いだった。
下手に信用できると思う人をたくさん望んでしまうと、ロクなことはないと思うようになった。
警察に捕まる前、余罪がたくさんあったのだが、これも人を信頼して裏切られた結果だった。
ちょっとしたことでも、たくさんから裏切られて一人置き去りにされてしまうと、そのすべてがトラウマとなってしまう。
信用できる人が一人もいなくなり、一人孤独だけが残るのだ。
トラウマの中で孤独を伴うものは、被害妄想になりがちであり、カプグラ症候群を形成することもあった。
カプグラ症候群とは、自分の近しい人間が、実は偽物で、自分を殺すため、あるいは災いを与えるために偽物と入れ替わっているという妄想である。被害妄想の中でも結構大きなものではないだろうか。
孤独を伴うトラウマが発展すると、カプグラ症候群を引き起こすのではないかと、刑務所に入っていた時に一緒の収容室に入っていた人間から聞かされた。その男はどうやら宗教団体なのか、それとも政治結社なのかに所属していたようで、そういうことには詳しかったのだ。
元々、和田はそんなに悪い人間ではない。どちらかというと、まわりに騙されるタイプで、掛けられた梯子を外されて、置き去りにされてしまうタイプの人間だったのだ。
そんな生活ばかりを送って、最後は刑務所に服役することになった。心の中では、ちょうどいい節目になったと感じてもいたようだ。
もちろん、自分が逮捕されるきっかけになったのが、一人の少女の助言からだなどと知る由もない。しかも、自分が慕っているおばあさんを同じように慕っている女の子だということも、もし知ってしまったら、どうなるだろう? 誰にも想像ができることではないだろう。
綾子もさすがに自分が告発した相手が、おばあさんのところに来ているとは思わなかった。綾子は確かに予知能力や、相手の心を読む力を供えてはいるが、それも万能ではない。何かある一点で共通して自分に有利に働いてはくれないのだ。それがどこから来るものなのか、綾子は分からなかったが、それは自分がまだ子供だからだと思っているようだが、果たしてそうだろうか。大人になればなるほど、子供の無邪気な気持ちを忘れていき、それと同時にせっかく備えている力の使いどころに杞憂することになるのではないかと思うのだった。
したがって、この場合の和田の存在も、綾子にとっては知る由もない条件としては整っているようで、それが自分にどんな影響を及ぼすのか、分かるはずもないのである。
綾子が帰りに武彦と出会ったというのは、確かに偶然ではあったが、武彦は綾子がこの時間におばあちゃんの家から出てくることを分かっていた。それはおばあちゃんに聞いていたからだ。
「吉谷綾子ちゃんという女の子が私の家にいつも遊びに来てくれるんだけど、いつも帰りが遅くなってしまうのが気になっていたけど、ちょうど武彦君が見回りの時間に合わせて帰るように仕向けるので、よかったら、密かに彼女が帰りつくところを確認してあげてくれないかな?」
と言われた。
「見回りの影響や、緊急で事件でも起こらない限り、僕に任せてください」
と、武彦は胸を張った。
相手が綾子であることも、武彦を張り切らせるだけの力になった。綾子という女の子を武彦が知っているなどと、おばあちゃんはきっと知らないだろうと思っていた。
綾子と武彦とおばあちゃん、この三人を結び付けたのは、綾子の力によるものだと思っているが、綾子の知らないところでおばあちゃんと和田が関係しているというのは、ひょっとするとおばあちゃんの中にある、おばあちゃんも意識していない潜在的な力によるものではないだろうか。
おばあちゃんに促された結果として、今まで午後九時までおばあちゃんの家にいさせてはくれたが、それ以降は、早く帰るようにと言われたのは、この武彦の都合があったからだろう。
そんなこととはつゆ知らず、綾子はおばあちゃんにいわれるままに家を出て家路に急ぐのだった。
その日、武彦と偶然鉢合わせてしまったのは、武彦に、
――しまった――
と思わせたが、別におばあちゃんからも、
「気付かれないように」
ということを言われたわけでもないし、変に気を回せば却って、語るに落ちるという結果になってしまったかも知れない。
何も言わないことが正解であり、最善であったのだ。
おばあちゃんとしては、綾子を返した後で、和田を家に引き入れることにしていた。武彦を綾子の護衛に使ったのは二つの意味があった。
一つは、もちろん綾子を無事に家に届けるためのナイト役としてであり、もう一つは、警察関係者である武彦を、和田と対面させないためであった。ただ、おばあさんもさすがに武彦と和田が面識があり、自分と同じように刑務所に面会に行っていたほどの仲であることを知らなかった。
そういう意味では、このお話において、ある程度の接点は皆あるのだが、肝心なところで接していないというところが、特徴でもあったのだ。
和田について少し話をしておく必要があるだろう。
和田という男は、小さな事件にいつも首を突っ込んでいるという印象だが、一種の「チンピラ」の一人として意識されることが多いようだった。
暴力団の抗争などで、相手もボスの暗殺を狙い、その犯人として自首するのは、その組織内の鉄砲玉のような男ではないだろうか。
「出所後のお前の立場は保証する」
とかなんとか言われて、自首するのだ。
もし断れば、自分も消されてしまうという危うい立場にいるのだから、考えてみれば、組織に消されるよりも警察の中にいた方が命の危険は少なくともない。さすがに組織も警察内部で事を起こすなどできるはずもなかったからだ。
ただし、余計なことを口にしてはいけなかった。いくら警察からひどい取り調べを受けようとも、それに臆して何かを喋ろうものなら、出てきてからの命が危うい。そういう意味で鉄砲玉というのは、組織のことをあまり知らないような下っ端で、かといって、余計なことを喋ったりしない男でなければいけないだろう。そう考えると、和田という男の性格もそれなりに分かってくるというものだ。
和田は自分が組織に利用されていることは分かってきた。本当であれば早めに抜け出さなければいけないのだろうが、いつの間にか嵌りこんでしまっていて、抜け出すことができなくなっていた。
実は和田が小さな事件ばかりが表に出て、小心者と思われているのも、
「木を隠すには森の中」
ではないが、たくさんの小さなことに紛れ込ませると、隠そうとしなくても隠れるのではないかというのが、組織の考えであった。
ただ、彼は組織から抜けたがっていた。そのために、ひき逃げの罪を被ったのだ。
そう、あの時のひき逃げの本当の犯人は他にいて、彼は鉄砲玉として、担ぎ上げられただけだった。そういう意味では組織としては、
「実に都合のいい人間」
として重宝していたことだろう。
どうやら彼は、
「大きな犯罪を隠すための隠れ蓑」
としても利用されたのではないだろうか。
彼も知らない大きな犯罪が組織の中で行われていたとしてもそれは不思議ではない。組織が鉄砲玉を何人も抱えていたことは、和田も知っていたが、他の鉄砲玉と言われている連中も知っていただろうか。
ひょっとすると和田がやった犯罪を他の誰かが鉄砲玉として名乗り出たかも知れない。
そう、この組織の行っている大きな特徴は、
「交換殺人」
ならぬ、
「交換鉄砲玉」
とでもいうべきであろうか。
鉄砲玉がそれぞれで交換されると、元々の事件が何だったか曖昧になってしまう。それこそがやつらの狙いではないだろうか。
つまり、そこに殺人などの犯罪が絡み、さらに、その犯罪の中核をなす部分が表に出てきていなければ、さらに曖昧さが増すというものである。
鉄砲玉は何も知る必要はない。警察に出頭して、知っていることだけを話せばいいのだ。辻褄の合わないこともあるだろう。何しろ自分とは関係のない犯罪だからである。
だが、それも組織によって計算されたことであり、その間に、本当の目的が進行していたとすれば、交換鉄砲玉は、本来の目的を隠すという意味でも有効なのではないだろうか。
和田は、ひき逃げで検挙され、その他の細かい罪で二年という実刑を食らったが、本当はもっと大きなヤマを踏むはずだった。実刑が二年などで収まるはずのものではなく、下手をすれば十年という懲役期間を食らったかも知れない。
彼は自分が望む望まないに関係なく、殺人事件に一役買っていた。交換鉄砲玉がなくて普通に鉄砲玉として警察に出頭しなければならないとすれば、かなりの覚悟を要する。以前、おばあちゃんのところに押し入ったくらいのことは十分にありえることだった。
だが、実際にはそれほど多くな罪に問われることなく、普通に刑務所暮らしを送り、刑期を満了して、キチンと二年で出てきた。彼にとって二年が長かったのか短かったのか、ハッキリは本人でないと分からないが、出所後の解放された彼は、まっとうに生きることを考えていた。
元々鉄砲玉として出頭したのは。昔のやくざのように、
「階級特進させてやるから、ここは鉄砲玉を引き受けてくれ」
というものではなく、和田とすれば、足を洗うチャンスであったのだ。
昔の任侠のような指を詰めるなどということは、今ではもうない。鉄砲玉が一番手っ取り早かったのだ。一度出頭して刑期を終えることで、組とも縁が切れる。組としては、どうせ、
「使い捨て」
を目論んでいたのだから、それはそれでいいことであろう。
彼がおばあちゃんの家に逃げ込んだというのも、元々は殺人計画の鉄砲玉として利用されようとしたからだった。
いくら組を抜けられるとはいえ、さすがに殺人の前科が付くのは勘弁してほしかった。もしそんな風になってしまえば、普通に考えてシャバに出てきても、職もなければ、組に戻ることもできない。そうなると、こちらは踏んだり蹴ったりで泣き寝入りするしかなくなる。
しかも、殺人に教唆したという事実に変わりはなく、一生その思いと向き合っていかなければいけないことを肝に銘じなければならなかった。
だが、彼が実際に背負った罪は、殺人から比べれば何とも中途半端というものであった。
「これなら、組をおさらばできて、こっちにもメリットがある」
と思ったことで、鉄砲玉としての出頭を引き受けられた。
ではなぜ、交換鉄砲玉という方式が今回使われなかったのだろうか?
それは、殺人事件の方に理由があった。
その殺人が行われるには行われたが、秘密裏だったので、死体が発見されないという方向から犯行を行うように修正された。そのため、事件なることがないため、鉄砲玉を必要としないのだ。
だから、密かに殺人があったということは、組の中でも上層部のごくわずかの人しか知らない。死体は極秘裏に始末され、発見されることはないと思われた。
「鉄砲玉などという姑息な手段を使うよりも、事件として発覚しないという方がどれほど安全なものか」
と組織は考えたのだ。
鉄砲玉などという考えは、もはや古いのだろうか?
しあし、交換殺人というものは、結構昔からあったりする。探偵小説などのミステリー作品では、よく散見されるが、実際にはなかな聞くことはない。
その理由としては、長所と短所がハッキリしているからではないかと、探偵小説をよく読んでいた武彦はそう思うのだった。交換殺人とは、読んで字のごとく、
「誰かと殺人を交換して行うこと」
を意味している。
まず交換殺人を犯すメリットとしてであるが(ここでは敢えて長所とは書かない)、一番に思い浮かぶこととしては、
「お互いのアリバイを証明することができる」
ということだ。
一番殺害に動機を持っている人間に完璧なアリバイが存在すれば、その人に嫌疑が及ぶことはない。しかも、殺害した実行犯は、捜査線上に最初からいないのだ。そういう意味でメリットだけを考えると、なかなかな手段のように思える。
しかし、それに対してのでデメリットの方が結構大きかったりする。制約が厳しいというが、そもそも交換殺人をするには、もう一人、誰かを殺したいと思っているまったく自分とは無関係の人間を探してこなければならず、相手も納得していなければ、この計画は最初からないも同じだ。
そういう意味で、交換殺人の計画は最初から練られたものというよりも、偶然そういう相手を見つけたことで犯罪計画が始まると言って方がいいかも知れない。
つまり、
「交換殺人のトリックとしては、あくまでもアリバイトリックである」
ということになるであろうか。
逆にいうと、表面上には分かりやすい殺人がまったく別で行われたと思わせなければ意味がないことになる。そこに下手なトリックを介在などさせれば、せっかくの計画が破綻してしまう。あくまでも表に出ている犯罪は犯人が確定できるところまで行っていなければいけない。
それでいて、最重要容疑者にはアリバイがあったということで、捜査はまた堂々巡りを繰り返すことになるのだ。
さらに、交換殺人のデメリットとしては、まず少なくとも一人は犯人側に必要とする。逆に言えば一人でなければいけないわけだが、少なくともその人は自分が殺したい相手の実行犯であって、「共犯者」ではない。いわゆる狭義の意味での共犯ではないということだ。そういう意味で、お互いの利害は一致しても、人情的にはまったく信用できない相手だと言ってもいいだろう
そんな関係で結び付いた二人に共通のものは、殺害という利害の一致だけである。
「とにかく殺したい相手がいる。そのために自分が捕まりたくはない。何とか殺しておいてその県議から逃れたい」
それ一本である。
つまりは、交換殺人は前述のようにアリバイ作りが目的であることから、同時に別の場所で行うというのも難しい。なぜなら、お互いに利害のない相手とはいえ、同じ時間に殺害をしているのだから、アリバイがないも同じである。どちらかが最初に殺害を犯し、相手が自分の代わりに次は自分の利害のある人間を殺してもらうのを待つだけだ。
しかし、ここで大きな問題が孕んでくる。自分が最初に相手の望み通りに殺人を犯したとしよう。そうなると、相手も同じように犯罪を犯してくれるだろうか?
その時点で、まだ頭の中がパニックになっている人であれば、計画通りに動くだろうが、普通に冷静になってみれば、まず犯罪を犯すなどということはない。なぜなら、自分にとって邪魔な相手を、完璧なアリバイを持って、他人が殺してくれたのだ。これ以上のありがたいことはない。それを何を無理してまで、相手に義理立て。自分が知らない人を殺さなければならないというのか、どちらが言い出したとしても同じことである。第二の殺人が起こる可能性は、限りなくゼロに近いと言ってもいいだろう。
そうなると、第一の犯罪の実行犯とすれば、後は自分が捕まらないことを望むだけである。幸いなことに殺害した相手とは利害関係がまったくないということだ。疑われる心配はない。
だが、果たしてそうであろうか? 完全犯罪などなかなかないのと同じで、自分が行った殺人で、何か致命的なミスを犯していないとはどうして言えよう。最新の注意を払ったつもりでいても、どこかに指紋が残っていたり、自分の知らないところで誰かに見られていたり、特に最近は防犯カメラも独自に持っている人もいるくらいだ。どこに何が潜んでいるか分からない。
もちろん、防犯カメラの位置くらいはちゃんと調べてはいるが、調べた後、犯行に及ぶまでの短い間に、誰かが設置していないと誰が言えるであろうか。
そうなると、疑心暗鬼にどんどん入り込んでしまい、自分の孤独感がピークに陥る。しかも当初の目的通りに、自分に理解のある人間には何も起こっていないのだ。せめて相手の人が始末でもしてくれていれば、少しは気持ちが落ち着くというものだが、結果として自分で自分の首を絞めることになっただけのことである。
だからと言って、第一の犯罪を企んだ相手として、いわゆる共犯者を訴えるわけにもいかない。その人間には完全なアリバイを自分が作ってやったも同然なのだ。しかも、相手が自分の名前を出そうものなら、もうどうしようもない。
確かに自分と殺した相手には何ら利害関係もなければ、会ったことすらなかった。しかし、それを証明してくれる人はいない。唯一あったであろう相手を、自分で抹殺してしまったのだから、始末に悪い。供述などは、共犯が何とでも言えるであろう。殺害された人から、自分の名前を聞いたことがあるなどと言って、いかにも自分が被害者に付きまとっていたなどという供述である。
しかも、自分にアリバイがないのも当たり前だ。最初から利害関係のない相手だということでタカをくくっていたのも事実だし、アリバイがなくてもいいようにするための、交換殺人ではないか。これでは交換殺人ではなく、相手に騙されてトリックにでも引っかかったというべき、
「叙述殺人」
とでも言えるのではないか。
それが結果であり、真実であった。
ミステリーや探偵小説の中で、必ず存在するのが、いわゆるトリックと言われるもの、ハッキリと目に見える機会トリックのようなものから、相手を心理的に追い詰めたりすることで成立する心理トリック、さらに、密室や死体損壊のトリックもそうである。交換殺人などで扱われるアリバイトリックなどもそうである。
その中に、叙述トリックというのがある。
これは語り手や、筆者が読者に対して与える心理的なミスリードで、いわゆる、
「まさかの展開」
というやつである。
読者は、それを見て最後に、
「しまった」
と苦笑するであろう。
中には、
「騙された」
と憤慨する人もいるかも知れない。
しかし、その憤慨もそのうちに心地よい快感に変わることもある。そうなれば、叙述トリックも作者にとって、してやったりということであろう。
しかし、交換殺人というのは、本当に実際の事件でもあったのだろうか? 不思議な気がする。考えてみれば、一番裏切りが起こりやすく。裏切られたからと言って、相手に対して何もできないのが関の山である。
さらに、もう一つのデメリットとしては、
「事件は発覚してしまった場合」
である。
犯人が二人、しかし、実行犯だけが罰せられるわけではなく、相手をそそのかしたというころで、殺人教唆になるだろう。これは共謀共同正犯として、殺人罪となるのである。
つまりは、
「共犯ではない」
と言いながら、相手をそそのかして殺人をさせるわけだから、実行犯と合わせて、
「二人が二つの殺人を犯した」
ということになる。
普通に殺していれば一つの犯罪で済むものが、二つの殺人ということになり、その罪は計り知れないことになる。しかも、この場合は間違いなく計画的であることから、卑劣であり、情状酌量の余地もあまりないだろう。
いくら殺したい相手が自分い暴行を与えている相手であり、普通なら情状酌量されてもいい事件であっても、まず難しいだろう。
しかも、殺人の動機が怨恨ではなく、財産目当てなどだとすれば、これはもうどうしようもない。死刑も当然ありえることであり、下手をすれば、猟奇殺人として世間が騒げば、世間を騒がせたとして、さらに罪は重いものとなるだろう。
だから、実際の殺人事件では、
「交換殺人などありえない」
ということになるのだろう。
ただ、ミステリーの題材としてはこれほど豊富なものはない。いろいろな角度から見ることができるからである。
さて、本当は和田が被った鉄砲玉ともう一つ、誰にも知られていない大きな犯罪、それは本当は表に出ていないわけではない。そのプロセスは今回の車の中で見つかった女性の遺体、谷川美鈴の発見により、図らずも表に出ることになった。そう、三年前に行方不明になったという彼女の夫である谷川隆一のことであるのだった……。
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