第7話
恋愛の記事をたくさん読むと、恋を分かった気になることもあるし、私には難しいと思うこともある。だけど、読むたびに思う。
「自分が自分として生きていないと、良い恋はできない」
って。
今の自分は、どうだろう。会社のエレベーターで大声をだしてしまうやつである。仕方なかった、では済まない時もある。
もう「元」になったが、その元彼が、恋愛のいざこざに私を巻き込んでしまったと、上司に自ら報告して会社を辞めた。
そして、私も会社を辞めた。
会社の同僚も上司も今回の件を知って、あることないこと言い始めた。まあそれは良いんだけど、とても仕事がやりにくくなった。というのも、仕事を振られるたびに、あの話って本当なの?えー、私も聞きたいと、私の席に人が溜まってしまい、仕事が進まない。まだこの会社で働きたいと思ってたけど、迷惑をかけ続けるわけにはいかず、上司と相談して、数ヶ月後に辞めた。
人に振り回される生き方では、良い恋なんてできない、かもしれない。だから、まあ、辞めて良かった。前向きに考えることにした。
そして、今フリーター。久しぶりにアルバイトばかりの日々。カフェや本屋、コンビニ、ファミレス、カラオケ……。大学時代にできなかった職種でばかりアルバイトしている。
アルバイトばかりだろうが、正社員だろうが、出会いを出会いとしなければ、ずっと「あー、出会いがないよ」なのである。
なんだろう、理想が高いのかな。でも、自分の理想が高いかどうかなんて、自分じゃ判断できない。友達と久しぶりに会うと、楽しい恋愛話をしてくれる。そういう出会いがあるのか、そういう人がいるのかと、わくわくしながら聞くが、最近そっちはどうなの?と聞かれると弱い。何も出てこない。
友達とまた会おうねとバイバイしてから、毎回同じことを考えている。出会いないかな。
「出会いないかな」
「あー、出会っちゃったね」
「ん?」
自分の独り言に返事が来たので、驚いた。声がした方を見ると、私の顔は思いっきり緩んでしまった。
会うのは3回目だ。いつの日か、一緒に本を読んだ年上の彼は、ふふっと微笑んで、こちらに近づいた。
「どうだろう。今度はゆっくりカフェでおしゃべりするというのは」
「もちろんお話ししたいです!」
嬉しさが思いっきり声に出てしまい、赤面してしまう。近くによく行くカフェがあると言って、案内してくれる彼の斜め後ろを歩いている時も顔が緩みっぱなしで、困るほどだった。
出会いがない、だけではなくて、今まで出会った人に目を向けることも必要なんじゃないかな、と浮かれ気味に思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます